2017年11月28日 (火)

11月29日(水)に岩手県岩泉町で災害調査報告会を行います

静岡大学防災総合センター牛山研究室では,岩手県岩泉町役場のご協力の下,東京大学総合防災情報研究センターの関谷直也特任准教授と共同で,下記要領で災害調査報告会を実施します.

2016年台風10号により大きな被害を受けた岩手県岩泉町での災害について,我々は,災害情報の観点から調査研究を行ってきました.その成果について,住民の皆様に報告する機会をいただきました.どなたでもご参加いただけますので,関心をお持ちの方はご参集ください.
 
●日時
平成29年11月29日(水) 午後6時30分~午後8時30分
 
●場所
岩泉町民会館 大会議室 ※入場無料
(岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉松橋21)
 
●内容
  • 2016年台風10号災害による岩手県・北海道の人的被害の特徴(静岡大学防災総合センター 牛山素行)
  • 2016年台風10号災害における情報伝達と避難(東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター 関谷直也)
【参考】当研究室の台風10号災害関係の調査メモ

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2017年10月31日 (火)

2017/10/26三重県多気町付近現地踏査雑感

2017年台風21号災害で,人的被害には至らなかったが,個人的に少し注目されたのが,三重県多気町長谷地区の土砂災害.台風を警戒して避難した人が集まっていた公民館が土砂災害に見舞われたものの,犠牲者は生じなかったというケース.10月26日に現地踏査した.
 
被災した公民館を下流側と,建物のすぐ上流側から見る.木造平屋建てとみられるが,上流側の壁は大きく損壊し,瓦屋根が倒れ込んでいる.屋内にも土砂や流木が流入している.「半壊」とも報道されているが,最終的には全壊の判定となるかもしれないと思うような被害状況だった.

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これについて,10月25日付け朝日新聞(三重面)は次のように伝えている.
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公民館に避難した住民らによると、22日は夕方から土砂降りの雨で、小学生を含め13人が避難していた。異変があったのは午後10時すぎ。停電とほぼ同時に、ドアから赤い泥が流れ込んだ。地響きとともに「ドーン」「ガラガラ」という雷のような音や、「バキバキ」という音がした。住民は「早う逃げや」などと声をかけ合い、近くの民家に逃げた。3、4分の間隔で衝撃が2回襲ったという。1971年にも付近で土砂崩れがあったため、住民は異常な物音がしないか警戒していたという。逵昭夫・自主防災会長(73)は「過去の教訓があるから逃げられた」。
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被害状況や,この記事の内容から考えると,「土砂災害の前兆現象」を察知し,緊急的な避難に成功して難を逃れた事例,ととれなくもない.人的被害が生じなかったことは幸いだと思う.
 
しかし,「多気町防災マップ(平成26年)」を見ると,この長谷公民館の位置は急傾斜地崩壊危険箇所の範囲内にあり,土石流危険区域のほぼ「縁」に当たっていることがわかる.長谷公民館は「第一次避難所」とされている.このハザードマップによれば多気町における第一次避難所とは,「小規模災害時に開設する一時的に避難するための避難所」とのことで,「まずはじめに第一次避難所への避難を検討してください.災害の状況に応じて,危険がある場合は,町が優先して開設する第二次避難所等に避難してください」と解説されている.そして,長谷公民館は「急傾斜地崩壊危険箇所」であり,災害に対して危険がある可能性があることも表記されている.

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つまり,長谷公民館が土砂災害に見舞われたことは,「想定外」とか,「あるはずがない」ことではなく,十分ありうることだったと言える.実際に発生したのは,ハザードマップで直接想定されていた急傾斜地の崩壊ではなく,土石流危険渓流ともなっていなかった公民館北西のちいさな沢からの土砂流出だが,公民館周辺に複数の土砂災害危険箇所が示されていたことから考えると,発生した事象が「想定外」とは言えないと思われる.下の写真は,崩壊源東部を見上げたものと,上流側から公民館方面を望んだもの.

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したがって,あえて厳しく考えれば,風水害の危険性がある際に,この公民館に「避難」することは,必ずしも適切ではないことは予見可能であり,少なくとも「成功例」と考える事は適切でないように思う.
 
無論,こうした中山間地で「確実に安全な避難所,避難場所」を,徒歩でも移動が困難でない近隣の位置に確保することは非常に困難を伴う.この公民館に避難していたことが「誤ったことだった」とは言えないと思う.不測の事態がないか警戒していたなど,可能な範囲での対応は取っていたとも思う.しかし,今回土砂流出の速度がたまたまゆっくりであったことに救われている面もあると思う.土砂災害の「前兆現象」とよく言われるが,あれは「前兆現象」と言うよりは「発生情報」である.土石流等の速度(数十km/h)を考えると,覚知したとしても,残された時間は秒単位でしかない.「前兆があったら行動」では手遅れとなる危険性が高いと思う.

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反感を持たれるだろうとは思うが,それでやはりあえて言いたいが,これは「防災意識を高く持った共助の効果」というよりは,「偶然」の結果だと思う,ただし,ではどうすればよかったのかという「正解」もない.何を重視するか,最終的には各自が考えるしかないと思う.

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2017年10月29日 (日)

2017/10/26三重県度会町付近現地踏査雑感

2017年10月26日(木) 本日の現地踏査より.三重県度会町鮠川,車で県道を通行中,洪水に巻き込まれて人的被害が生じたと思われる場所.宮川の支流部に繋がる谷底平野.県道は台地から谷底平野に下り,再び台地上に上がる形.台地上からの比高は約15m.写真手前から奥に走行したと推定される.

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県道は,谷底平野の最も低いところで約3m盛土されていた.浸水痕跡が不明瞭だったが(泥が少ない),おそらく道路面から深いところで約1m浸水したと思われる.流木や土砂,大きな礫は確認できず,浸水のみ(流れはそれなりにあっただろう)が見られたものと思われる.

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この現場付近で県道は大きく曲がっており,西側から来た場合,浸水していることに直前まで気がつきにくい状況だったと思われる.無論このような場所は至る所に無数にあり,特別に危険だとか危険を放置していたとか管理が悪かったとか,そんなことは全く思わない.

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写真や図をまとめるとこんな感じ.こうした場所で人的被害例は時折見られる.前述のように特別な場所ということではなく,対策といってもきりがない.雨風激しいときになるべく動かない,という原則を挙げるのが先決かと思われる.

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なお,国土交通省「重ねるハザードマップ」を見ると,この場所は浸水想定区域であり,「想定外の場所」ではない.とはいえ,車で移動中にそうした危険性を知ることは容易ではないだろう.

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2017年10月25日 (水)

2017年台風21号による静岡市清水区沿岸部の高潮・高波被害の簡単な現地踏査

今回の台風21号では,太平洋側の広い範囲で高潮及び高波による被害が(大規模とは言えないが)各所で見られたようだ.静岡市内の沿岸部を本日10月24日に少し見てきた.

清水港周辺 goo.gl/F7Ucq4 確かに浸水痕跡が見て取れる.植え込みの所に浮遊したと思われる木などが.この付近は明瞭な防潮堤はなく,海から遮るものはない.ただし浸水痕跡が見られる範囲は限定的で,住家のある範囲に浸水等被害は確認できない.

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由比漁港 goo.gl/xE3aSa 道路の舗装面が流失している.洪水などの被災地でよく見る光景で,浸水により舗装面の下まで水が入り,舗装面が浮き上がって流されたものか.この付近も,集落は高所または防潮堤の陸側にあり,住家には被害がない.

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由比地区南側,静岡県内ではよく知られたビューポイント「さった峠」の麓.スマル亭というそば店 goo.gl/dmau2c が損壊.隣接する2棟の建物も海側に損壊が見られた.ちなみにスマル亭は静岡市周辺にいくつかある店で,格別うまくはないが私は好きである.

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スマル亭隣接建物の損壊状況,コンクリート造なのか,壁面は損壊しておらず,柵?の一部が損壊.また,なにかの収容ボックスが基礎コンクリートごと倒れていた.

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スマル亭の建っている位置の地盤高さは,海面からの比高約4.5m,地盤から約2.0mの防潮堤があり,さらに建物の海側にはもう1本高さ約2.0mの擁壁がある.地盤から約3.0m付近までの壁面が損壊し,建物反対側まで波が突き抜けた形跡が見られた.人的被害は確認されていない.

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2017年9月25日 (月)

2017年9月17日の東九州での豪雨に関するメモ

2017年9月17日の東九州での豪雨について簡単に整理した.
 
17日24時の72時間降水量分布.「山の方で大雨」ではなくて,大分県南部海岸付近から宮崎県では海岸と九州山地の中間付近が多雨域.72時間降水量は少なくはないが,この地域としては時折ある程度.極値更新は佐賀関(大分),赤江(宮崎).話題となった佐伯,臼杵付近も極値更新はしていない.

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15~17日の間の最大3時間降水量.大分県南部は海岸付近,宮崎県では北部山間部が強い印象.こちらは佐伯が更新.

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AMeDAS佐伯の9/15~17の降水量推移.降雨は17日朝から夕方までのほぼ12時間.1時間50mm以上の非常に激しい雨が3時間,80mm以上の猛烈な雨も1時間記録.豪雨のピークが午前と午後の2回あったようだ.

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AMeDAS佐伯の9/15~17の降水継続時間毎の最大値と,過去の記録との比較.5時間以下の降水量や,12時間降水量で1976年以降最大値を更新.記録的な大雨ではあったが,7月の朝倉のような,あらゆる角度から見て過去の記録を大幅に更新するタイプの大雨とまでは言えない.

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津久見市内の大分県設置の「福山」観測所の9/15~17の降水量推移.24,72時間降水量は佐伯より大きい.過去の記録がないので直接比較はできないが,3,24時間降水量は佐伯の1976年以降最大値よりは大きい.1時間50mm以上が4時間だが,80mm以上に達してはいない.

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総じて見て,降水量記録は,大分県南部としてはやや大きな記録となったと思われるが,極端に大きな記録とまでは言えなさそう.主に短時間の降水が激しかったケースとみられる.また,特に大きな記録が見られた範囲は限定的.宮崎県側も値は大きく見えるが,この地域としては特筆するほどではない.

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こちらは気象庁HPから,佐伯の9月及び9/17の潮位変化.17日は大潮に向かうところで潮位はやや高め,台風接近の午後は満潮.ただし潮位偏差はピークの16時頃で0.5m程度.高潮による激しい被害事例というよりは,主に豪雨による洪水というところではなかろうか.

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2017年9月 1日 (金)

風水害時の土嚢積みに関する懸念

少し必要があって,「風水害時に土嚢積み作業をしていて死亡した人」を数えてみました.基礎資料は当方が整備しているの風水害犠牲者資料 http://www.disaster-i.net/research4.html で,2004-2016年の761人が対象.
 
当方では「移動や避難の目的ではなく,自らの意志で危険な場所に接近したことにより遭難」を「能動的犠牲者」と定義しており,この形態の犠牲者が下図に見るように全体の24%.「土嚢積み」はこの一部に当たる.

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「能動的犠牲者」をさらに分類すると下図のようになる.40%は何らかの防災行動を取っていたもの.ただしそのほとんどは個人的な行動.「土嚢積み」はこの一部で,少なくとも9人確認された.水防活動による土嚢積みと思われるケースはなく,いずれも個人的な行動らしい.

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「土嚢積み」による犠牲者,761人中9人なので格別に多いわけではないが,要注意な行動の一つであるとは言えそう.少なくとも「水害に備えましょう!」と言って,土嚢積みをオススメすることは私はしたくはない.水には立ち向かうのではなく,逃れましょう.
 
なお,「土嚢積み」については,
  • 水防団による組織的な水防活動として,堤防上に積む
  • 個人宅で,雨が降り始める前の段階で予防的に積む
といった場面での有効性を否定するものではありません.雨が降る中,すでに周囲を洪水が流れているような状況下で積むようなことを強く否定しているものです.土嚢積みは「浸水したら対策としてやるべきこと」と受け止められている印象があり,そのイメージはまずいと考えます.

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2017年8月31日 (木)

2017/8/28朝倉市付近現地踏査雑感

8月28日の朝倉市内現地踏査から.朝倉市杷木松末・石詰集落と中村集落の中間付近 https://goo.gl/Tacmm6 から両集落を見る.両集落では,人口116人(2010年国勢調査)の集落で二十数カ所の住家が流失した.石詰,中村集落のある乙石川流域は,7月下旬の調査時には接近困難だった.この付近では啓開すべき道路すらなくなり,やや高いところに新設の仮道が作られていた.

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上記の写真から0.7kmほど上流,朝倉市杷木松末・中村集落付近.だいたいこのあたり.https://goo.gl/qGfhrY ここから上流約0.8kmほどのところに乙石集落があるが,ここから上はまだ仮道も開設されていなかった.

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朝倉市杷木林田付近,だいたいこのあたり https://goo.gl/toHuA9 の赤谷川「7月5日以前の河道(橋が埋まってる)」と「現在の実質的な河道」.なんというか,このまま現河道が下刻して,実質的な河道になっていくことになるのではなかろうか.

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2017年8月21日 (月)

時評=災害時の行方不明者-「匿名化」行き過ぎでは

8月10日付け静岡新聞「時評」欄に掲載された筆者の寄稿記事です.この問題はいろいろな考え方があり,難しいものです.
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時評=災害時の行方不明者-「匿名化」行き過ぎでは
 
 7月5日~6日にかけて発生した『平成29年7月九州北部豪雨』により,福岡県,大分県で36人の方が亡くなり5人が未だ行方不明である(8月3日消防庁資料).これは現在進行形の事実だが,最近こうした情報を扱うことが難しくなっている面がある.
 
 自然災害に伴う死者数(直接死)と行方不明者数の合計は,発災直後は情報が集まらない,重複計上されるなどして次第に増加するが,ある時点で最大となった後は,状況の判明に連れて減少するという形がこれまでは一般的だった(ただし関連死者数は増加する).「ある時点」は近年の風水害では概ね数日後だが,東日本大震災では約1ヶ月後だった.
 
 ところが近年,「行方不明者」という情報が不明瞭になりつつある.たとえば2016年台風10号による岩手県の災害では,消防庁公表資料に「行方不明者7人」が初めて示されたのは発災9日後の9月8日,うち6人は氏名が公表されなかった.平成29年7月九州北部豪雨ではさらに対応が慎重になり,消防庁公表資料に「行方不明者7人」と初めて示されたのは発災15日後の7月20日であり,氏名は全員公表されなかった.
 
 災害時の行方不明者に関する情報公表が法律で禁じられているわけではない.個人情報保護法では,本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないとされているが,「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」などは除外される.
 
 「行方不明者」として氏名などが公表されたことで,様々な事情で周囲に所在を知られたくない人の情報が明らかになってしまうといった懸念は確かにある.一方で,氏名が公表されないことにより安否確認がスムースに進まないといった問題もある.長期的に見ると,重大な被害情報である「人的被害」についての記録,教訓が後世に残らないといった側面もある.
 
 関係者が公表を強く拒んでいる場合などに無配慮な対応はあってはならないが,だからといって近年のあり方は少し行き過ぎではなかろうか.直接当事者となる市町村だけでは決められない問題でもある.難しい問題ではあるが,社会全体で議論していく必要があると筆者は考える.
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この話題については,岩手日報による興味深い企画記事もあります.
 
岩手日報企画・特集 「あなたの証し 匿名社会と防災」
 
平成29年7月九州北部豪雨を受けて,西日本新聞も関連記事を出しています.
 
不明者名公表に基準なく 災害時、自治体判断割れる 専門家「明文化が必要」

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2017年8月16日 (水)

「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会(8/24東京・日本気象協会)

静岡大学防災総合センター牛山研究室では,「平成29年7月九州北部豪雨」による災害に関し,一般財団法人日本気象協会と合同で現地調査を行いました.去る8月7日に調査速報会を実施する予定でしたが,台風5号の影響により中止していました.このたび,8月24日にあらためて実施することとなりましたので,ご案内します.
 
「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会
 
■概要
  • 日時:平成29年8月24日(木) 14:00~16:00 (開場13:30)
  • 場所:一般財団法人日本気象協会 第1・2会議室(東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60・55階)
  • 定員:先着50名程度
  • 参加費:無料
■内容
  • 気象メカニズムの解説、現地調査結果の報告(仮) (日本気象協会  30分程度)
  • 平成29年7月九州北部豪雨による人的被害発生状況・発生場所の特徴(静岡大学防災総合センター牛山素行教授  60分程度)
■申込
下記の申込用紙(Wordファイル)の内容をご確認ください.準備の都合上、8月22日(火)までにお申し込みくださいとのことです.

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2017年8月 4日 (金)

「平成29年7月九州北部豪雨による災害・現地調査速報会」資料を公開

静岡大学防災総合センターでは,8月4日に「平成29年7月九州北部豪雨による災害・現地調査速報会」を実施しました.速報会で,牛山が使用したスライドの抜粋・縮刷を公表しました.

平成29年7月九州北部豪雨による人的被害発生状況・発生場所の特徴(速報)

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なお,本災害に関しての各種資料は,下記に整理しています.
 
2017年7月5日の九州北部の豪雨による災害に関するメモ

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