2018年8月10日 (金)

8月8日広島県内現地踏査雑感

8月8日,広島市周辺を現地踏査.写真は坂町小屋浦地区.死者・行方不明者16人と,7月豪雨の土砂中心の被災地で最も集中的な人的被害が発生.低地側(写真下)では(土砂混じりの)洪水による被害もみられた印象. 坂町小屋浦地区は,重ねるハザードマップを見ると,至る所土砂災害危険箇所という地区.

Dkihduouuaawnw6

Dkihejqucaaxxxk

同じく8月8日の現地踏査から.今回の豪雨では,洪水,土砂災害時に見られる様々な被害形態が各所で見られている.写真は広島市安芸区畑賀で,河川沿いの道路の路肩が崩壊した箇所.この付近で,車が転落して2人が行方不明となっている模様.この車は,家族で避難途中だったらしい.

P8082586

8月8日の現地踏査からもう1枚.広島市安芸区矢野町の,県道34号線矢野峠付近.この付近(広い意味で)で通行中の車がかなり洪水・土砂に巻き込まれた模様. 7日のRCCの番組で,この地点よりもっと麓側で洪水に巻き込まれ,なんとか脱出した車のドライブレコーダ動画を見た.前ツイートのような路肩崩落だけが要因ではなく,多量の洪水・土砂流出が通行中の車に被害をもたらしたのかもしれないと思った.通行中の多くの車が洪水,土砂に巻き込まれるというのは,夕方~夜にかけての豪雨災害の怖さの一つかと思われる.避難中というわけでなく,普段の通勤,用務途中であったこともさらに恐ろしさを感じる.まさに,1982長崎豪雨時の文献で見た光景だと思った.

P8082521

|

2018年8月 5日 (日)

平成30年7月豪雨による人的被害の特徴・発生時間帯を追記

 平成30年7月豪雨による人的被害の特徴,発生時間帯についてのグラフを追記する.
 
 本事例は夜間の比率が高いが,今回は激しい雨が夜間に発生したことを意味するもので,「夜間だから被害が大きくなった」とは一概に言えない.1999-2017では,犠牲者発生時間帯は昼・夜ほぼ半々であり,「夜には夜の,昼には昼の危険がある」事に注意が必要.「夜だから犠牲者が出た」のか「今回の豪雨は夜間に発生したので夜間の犠牲者が出た」のかという議論は,これまでも考えてきたけどなかなか単純には語れない.

01

 たとえば,2017年九州北部豪雨は,豪雨のピークが,「昼過ぎ」~「夜のはじめ頃」だったので,時間帯別犠牲者数のグラフはこんな感じになる.2016年台風12号の岩手県岩泉町の災害も午後~「夜のはじめ頃」だった.決して「夜の豪雨だけで被害が大きくなる」訳ではない.

02

 ‏今回の「教訓」から,「わかりやすい」フレーズとして「夜が怖い」ばかりが強調されることを懸念する.今回の豪雨はむしろ時間帯が長くて,広島や岡山では「昼過ぎ」~翌日「朝」までと言ってもいいくらい.夕方前後の,人が多く動いている時間帯の災害でもあったことが覆い隠されてしまってはならないと思う.

|

2018年8月 4日 (土)

平成30年7月豪雨時の災害情報に関するアンケート(8/4加筆修正版)」について

 8月3日に日本気象協会で行われた「「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会」で発表した際に配付した資料のうち,2点目の「平成30年7月豪雨時の災害情報に関するアンケート(8/4加筆修正版)」を公開します.
 
 なお,この調査は,大雨特別警報発表市町村の一部在住者が対象のものです.自宅外への避難の実施状況も質問していますが,対応行動の一つとして参考のため聞いているもので,各回答者の所在地が明確には分からないことなどから,ここから「避難率が低い」といった議論はできません.
 
 主な内容から.いくつかの報道でも紹介された,大雨特別警報の意味が適切に認識されていない可能性,という話のもとはこのグラフ.大雨特別警報という言葉はほとんどに人が知っていると思われるけど,深刻そうな意味を選択してくれる人は5割くらい,という結果.

11

 「大雨特別警報が発表されたことを最初に知ったのはいつ頃でしたか」の回答も興味深い.実際にはまだ発表されていない「7月5日」の回答が3割前後.なにか他の情報と混同されているのかもしれない.

12

 ネット回りの人が関心を持つかもな結果.「大雨特別警報が発表されたことを一番最初に知ったメディア」はテレビ4割弱,ネット系プッシュ型メディアが4~5割.2013年の類似調査に比べテレビが減り,ネット系プッシュ型が増えた模様.

13

14

|

「平成30(2018)年7月豪雨による人的被害等についての調査(速報)」について

 8月3日に日本気象協会で行われた「「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会」で発表した際に配付した資料に,一部加筆修正したものを公表します.当日は2件話題提供をしました.まず「平成30(2018)年7月豪雨による人的被害等についての調査(速報)(8/4加筆修正版)」
 
 資料にもしつこく書いているけど,あくまでも現時点で得られた情報による推定値.メディアでは「~とわかった」と書かれてしまうけど(それは「文法」なのでしょうがないと思っている),決して確定的で絶対に正しい数字・分類・見解ではないことは重ねて強調しておきたい.また,以下では死者及び行方不明者を総称として「犠牲者」と表記する.
 
 主な内容から.原因外力別では土砂災害によるものが約半数.これはこれまでの風水害と同傾向.一方で,洪水によるものが4割弱で,これはかなり高い比率となる.倉敷市の被害が主だが,他にも少なくない数.

01

 危険箇所と犠牲者発生場所の関係を見ると,「土砂」犠牲者は9割が土砂災害危険箇所及びその近傍で遭難したとみられる.これもこれまでの風水害と同傾向.

02

 「洪水」犠牲者は浸水想定区域外で遭難のケースが従来は多かったが,今回は6割以上が範囲内と推定.地形で見れば,「洪水」犠牲者の9割以上が(洪水の可能性がある地形分類である)低地で遭難,これは従来の風水害と同傾向.

03

04

 なお,当方調査結果のうち「洪水」犠牲者と浸水想定区域の関係「だけ」を切り取って,風水害全般についてハザードマップが役に立たないかのように主張することは,当方の意図に全く反するものである事は強く主張しておきます.

|

2018年7月31日 (火)

平成30年7月豪雨被災地での特別警報に対する理解などの調査結果速報

 7月31日朝のNHK「おはよう日本」5,6,7時台に「西日本豪雨 特別警報の発表認識も避難は3%余」というタイトルで,当方の調査結果の一部が報じられました.

201807v3_2

 報じられた内容に関連する集計結果の一部を下記pdfとして公開します.報道では触れられなかったものとして,「特別警報の意味を適切に認知していた回答者は5割前後」,「普段より詳しく気象情報を確認したという回答者は7割前後」という結果を追加しています.

※更新版を公開しましたので,このファイル公開は停止します.

 回答者のうち,いわゆる「水平避難」を行った人が3%程度だったのは結果としては事実ですが,この調査では,回答者の居住場所は郵便番号程度までしか分からず,居住する建物の構造も明確には分からないため,この値が低いとは,一概にはなんとも言えないと考えています.予定変更や,気象情報確認など,どこに居ても実施しても良さそうな対応行動の方を注目すべきかと思っています.

 
 このほかにも,
  • 避難勧告等の意味に対する認識
  • 大雨特別警報を覚知したメディア
  • 居住地の洪水に対する危険度認知状況
  • 回答者居住地の大まかな洪水危険度の推定
などについての調査をしており,これらについては8月3日の速報会(http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/307-e426.html)などで紹介したいと思います.
 
※上記速報会で配布した資料を公開しました.下記記事から参照してください.
 
平成30年7月豪雨時の災害情報に関するアンケート(8/4加筆修正版)」について
 

|

2018年7月27日 (金)

「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会(東京・日本気象協会)

静岡大学防災総合センター牛山研究室では,「平成30年7月豪雨」による災害に関し,一般財団法人日本気象協会と合同で現地調査を行いました.このたび,同協会において,調査速報会を開催することとなりましたので,ご案内します.
 
「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会
 
■日時 平成30年8月3日(金) 14:00~16:30 (開場13:30)
■場所 一般財団法人日本気象協会 第1・2会議室
 (東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60・55階)
■定員  先着50名程度
■参加費   無料
■内容
1.平成30年7月豪雨の特徴と被災地現地調査の報告(仮)
(日本気象協会  30分程度)
 
2.平成30年7月豪雨による人的被害の特徴(速報) (仮)
平成30年7月豪雨時の住民の防災情報利用・避難行動の調査(速報) (仮)
(静岡大学防災総合センター 牛山素行教授  60分程度)
 
■申込
下記の申込用紙(Wordファイル)の内容をご確認ください.準備の都合上、7月31日(火)までにお申し込みくださいとのことです.
なお,詳細未定ですが,8月9日(木)に,同様の速報会を静岡市内で予定しています.これについては,追ってご案内します.

|

7月25-26日愛媛県内現地踏査雑感

 7月25日,愛媛県内を現地踏査.写真は大洲市森山地区で洪水による被害箇所.肱川に架かる橋が流失.付近に流失した住家は確認できないが,集落内の低いところでは2階床上まで浸水し,そのうち1軒の屋内で1人が死亡. 大洲市内の肱川沿いでは他に2人が死亡,1人が行方不明で,いずれも洪水によるものとみられる.ただし屋内での遭難は先の森山地区の1人のみで,他はいずれも車や徒歩で屋外移動中の遭難とみられる.

Di8z1cju4aaxlw8

 
 同じく7月25日の現地踏査から.宇和島市吉田町白浦.やや大きい斜面崩壊による家屋倒壊.付近で人的被害が発生とみられる.この地区を含む法花津(ほけつ)湾付近は,至る所で斜面崩壊が生じている印象.ただし,集落のほとんどが土砂災害で倒壊しているような状況ではない.家屋倒壊が生じている箇所は限られ,人的被害はそうした家屋倒壊が発生した場所のさらに一部で生じているという印象.これはこれまでの災害と変わらない.

Di80hx5u8aamaf_

この地区の崩壊の分布は,地理院地図でよく分かる.
 
 7月26日,愛媛県西予市野村町野村地区を現地踏査.肱川の氾濫による洪水災害.この付近では家屋の流失が見られ,住家と思われる建物数棟が流失したと思われる.この付近で人的被害が生じているが,建物流失に伴うものではない模様. 空中写真を見ていて見当はついていたけど,やはり家屋流失などの激しい被害が見られるのは谷底平野の範囲に限られる印象.旧野村町役場など,野村の旧市街地は台地上に形成されており,そこでは浸水による被害は激しくない模様.

Djckxsbuuaeodu7

 野村町付近は,地理院地図では地形分類図が見られないが,陰影起伏図でもなんとなく雰囲気は分かるだろうか.「分かりやすい」話ではないけど.

|

2018年7月17日 (火)

「流れる水には近づくな」「土砂災害の前兆に頼るな」

 もう少し書こうかと思ったけど時間が無いので,先日のツイートにすこしだけ加筆.
 
 よく防災パンフレットなどで目にする記述,「徒歩での避難が難しくなるとされる50センチ」.これはとても危険な知識のように思う.このような伝え方をすると,「50cmまでなら歩ける」と思われてしまいそう.流速が速ければもっと浅くても流されるし,体格や年代性別によってもだいぶ話が変わる.

3

このあたり,詳しくは関西大学の石垣先生が以前に書かれたコラムが参考になる.
 
 防災上の知識として単純化するなら「人も車も簡単に流される.流れる水には近づくな」でよいと思う.普通の人にとって,水に勇気を持って立ち向かう必要は無い.水からは逃れないといけないと思う.

4

 でもそう言うと必ず怒り出す人がいて,「実際に水に取り囲まれたらどうするのか!,運動靴!,ロープ!,探り棒!」とかいう話に.そんな状況にならないように早めの行動をする事が何よりも重要.どうしてもだめなときは,少しでも高いところに逃れる.つまるところ,「最善を尽くす」しかない.
 
 これとよく似た「危ない防災知識」が,「土砂災害の前兆現象」だとおもう.これについては最近のコラム記事を参照ください.
 
時評=土砂災害-「前兆」頼りすぎるな

|

2018年7月15日 (日)

平成30(2018)年7月豪雨 倉敷市真備地区での流失家屋の判読

 住家に激しい被害が生じ,そこに人が居れば犠牲者が発生する可能性は高い.犠牲者を生じうる家屋被害の情報としては,「全壊」などの統計値がまず考えられる.しかし現在の基準(内閣府:災害に係る住家の被害認定基準運用指針)では,1階天井まで浸水だけでも「全壊」と判定されることになっている.つまり,犠牲者の発生に直接結びつかない家屋被害が「全壊」に計上されることがあり得る.このため,完全に流失・倒壊した建物数に関する情報が必要となる.一方近年の災害時には,国土地理院が発災直後に被災地の空中写真を撮影し,オルソ化してWeb版の「地理院地図」で公開することが一般的で,災害前後の空中写真を比較判読することにより,流失家屋を読み取れる可能性がある.
 
 ここではまず,平成30年7月豪雨により激しい浸水被害を受けた,岡山県倉敷市真備地区を対象に,地理院地図から被災前後の空中写真判読を行った.用いたのは,被災後の空中写真は国土地理院撮影の「高梁川地区(7月9日撮影),同(7月11日撮影)」を,被災前の空中写真は,地理院地図収録の「全国最新写真(シームレス)」である後者の撮影時期は,2007年以降とされている.読み取り範囲は第3次メッシュを単位として,下記の範囲とした.

01

 流失家屋の判読は筆者自身の読図によるものである.被災前後の空中写真を比較し,下記の2種類に該当すると読み取れる家屋を流失家屋と見なした.
  • 「流失(完全)」:被災前に存在した建物が完全に流失または倒壊し建物としての形状が認められない
  • 「流失(変形)」:被災前に存在した建物で形状が明らかに変形しているまたは一部が流失している
 判読結果には個人差がありうる.また,空中写真での判読であり,現地で見れば変形していると分かるものでも,判読できていない場合もありうる.空中写真でも分かる程度の大きな被害を受けた家屋と考えてもよい.また,空中写真撮影後に撤去された家屋もありうるので,Googlemap,ストリートビュー,ゼンリン住宅地図も合わせて参考とした.
 判読対象家屋は,被災当時のゼンリン住宅地図において番地記載がある建物とした.従って,同一敷地内にある建物であっても番地記載の無い建物(物置,車庫などと考えられる)は対象外としている.
 判読結果が下記である.作図は埼玉大学谷研究室のGeocoding and Mappingによる.背景図は地理院地図である.緑色の■が流失家屋と判読された家屋の位置である.今回の判読範囲では,7箇所が判読された.

02

 比較のため,同様な方法で判読した,平成29(2017)年7月豪雨による,山地河川洪水で被害を受けた福岡県朝倉市の,赤谷川中下流域での判読結果を示す.地図の縮尺,範囲は真備地区とほぼ同じである.朝倉市内では,土砂災害による流失家屋も多かったが,この図の範囲内の多くは洪水(山地河川洪水)によるものと考えてよい.

03

 真備地区と赤谷川中下流を比較すると,後者の方が多くの流失家屋が生じている.真備地区の洪水は,平野部の破堤氾濫であり,洪水の形態がやや異なり,被害の出方に違いが出ていると言っていい.被害形態として類似している平成27(2015)年9月関東東北豪雨による茨城県常総市もいずれ判読したい.概略的に判読したところでは,おそらく朝倉市のケースよりかなり流失家屋は少なく,真備地区と同程度と思われる.
 
 流失家屋が少ないことは,被害が軽微であることを意味しない.ことに今回の真備地区では,2階軒先(5m程度)まで浸水した家屋が多く見られ,常総市での被害よりははるかに浸水の程度が激しい.家屋自体は残っても,家財に大きな被害が出ていることが予想され,決して軽微な被害ではない.さらに,深い浸水によると思われる人的被害もかなりの規模に上っている.
 
 また,平成30年7月豪雨全体では,特に土砂災害による大きな被害を受けた地域において,多数の流失家屋が生じている事は間違いない.本稿はあくまでも,真備地区の流失家屋の規模を読み取ることだけを目的としたものであり,平成30年7月豪雨による被害全体を矮小化する意図は全くない.
 
※本稿の一部は,2018年9月の日本自然災害学会で口頭発表予定の内容を転載したものです.

|

7月14日倉敷市真備地区現地踏査雑感

 7月14日午後,倉敷市真備町を現地踏査.写真は小田川の箭田橋付近左岸側の破堤箇所.応急改修が概ね終わったように見える.たいしたものだ.場所はこのあたり

P7141402s

 
 箭田橋付近破堤箇所の近く.数棟の家屋が流失したと思われる.破堤箇所の正面ではなく,やや上流側の家屋が流失している.
P7141404s
 
 7月7日の朝日新聞にあった画像https://twitter.com/asahi_photo/status/1015394952547717120に見られた道路標識.場所はこのあたり.看板下部の道路面からの高さを測ってみたところやはり約5m(規格なんだから当たり前か).道路面からの浸水深は約5mと見てよさそう.なお,当日の画像がピーク水位の時点であるとは限らないことは注意が必要.ただし,周囲の建物の浸水痕跡から類推すると,この付近でほぼ5m弱がピーク水位とみてもよいように思えた.

P7141512s

 
 真備地区では他にも2箇所ほど見て,後は車で流しただけだが,浸水深は深いところが目立つものの,やはり流失家屋が至る所に見られるような状況ではなかった.被害がひどくないという話ではなく,この付近では,深い浸水が目立ったことが特徴ということ.
 

|

«平成30(2018)年7月豪雨 家屋被害についての雑感・7月14日朝時点