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2007年1月30日 (火)

社会福祉分野と防災

昨日1月29日は,岩手県社会福祉協議会主催の「地域のつながりで進める防災に強いまちづくり検討会」に,同検討会の委員として出席させていただきました.社会福祉協議会の立場から,おもに「災害時要援護者」の支援のあり方について,現在考えられる課題を整理することを目的とするもので,今回が第1回で,年度内に3回の会合が予定されています.

社会福祉の分野と,防災の分野が連携していく必要があることは,阪神淡路大震災の頃から意識されるようになり,近年ますますその必要性が増しているように思います.平時から,地域にもっとも深く入って活動している組織の一つは,福祉関係の組織であり,まさに,地域の最前線で活動している組織と言えます.従来からある災害時の活動組織の最前線は消防団などですが,すでに消防団すらも高齢化が懸念されており,福祉関係組織が果たす役割に期待が持たれます.

本欄でもしばしば指摘しているように,「災害時要援護者イコール高齢者」とは限らず,災害による死者についてみれば,「災害時要援護者」が亡くなっている例は実はほとんどありません.だから,要援護者支援など不要だ,というわけではありません.「高齢者が多くなくなっている,だから要援護者対策が必要だ」といった,あまり実態のないイメージにもとづく「対策」では,実効性のある「対策」につながらないのではないか,と考えています.

社会福祉分野の方と,同席して仕事をさせていただくのは今回が初めての経験です.いろいろと勉強をさせていただきたいと考えています.

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2007年1月23日 (火)

平成18年7月豪雨による災害の特徴・刊行

Web上では既に公開しておりましたが,下記速報が刊行されました.

牛山素行・國分和香那,2006:平成18年7月豪雨による災害の特徴,自然災害科学,Vol.25,No.3,pp.393-402.
http://disaster-i.la.coocan.jp/notes/2006JSNDS.pdf

pdfファイルを,学会誌をスキャンしたものに差し替えております.

ちなみに,こういった原稿はほとんど「業績」としては認められません.そのことは重々承知の上で,災害の度にこのような原稿を書いております.「速報」の場合,印刷媒体に比較的早く掲載されること,「研究」として見なされない分,問題提起など,内容が比較的自由に書ける事などに価値を感ずるためです.災害調査速報を,少しでも「研究」に近づけるためには,更に別の原稿にしなければならないわけですが,これがなかなか進まず,悩むところです.

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2007年1月19日 (金)

171は携帯しか持っていない人は使えません

NTT東西両社が用意している「災害用伝言ダイヤル171」というサービスがあることは,ご存じの方も多いと思います.

災害用伝言ダイヤル(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171/index.html
災害用伝言ダイヤル(NTT西日本)
http://www.ntt-west.co.jp/dengon/

大規模災害時に,電話回線が輻輳し,通常の方法では有線談話,携帯電話相互の通話が困難となった場合に,音声を録音しておくことによって間接的に連絡を取り合うことができるシステムです.1998年の栃木・福島豪雨の時に初めて実践運用され,その後,大規模災害のたびに開設されています.

毎月1日には,体験利用ができるほか,防災とボランティア週間(1/15~21)などにも体験利用ができます.1月は,正月三が日も体験利用ができますので,1年でもっとも体験利用のチャンスがある月となっており,いろいろなところで紹介もされています.

災害用伝言板・伝言ダイヤルの体験利用実施中
http://rescuenow2.cocolog-nifty.com/bousai/2007/01/121_29cc.html

ここ数日のブログを見ても,いくつか取り上げている記事が見受けられます.

追憶
http://okage.blog37.fc2.com/blog-entry-220.html
171を知っていますか
http://angel.ap.teacup.com/pinkcandies/338.html
1.17メモリアルデイ
http://dbfactory.exblog.jp/6350399
阪神大震災から12年
http://flyingace.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/post_2f6e.html

171は認知度も上がってきており,当方の2005年8月の宮城県での調査では,9割の回答者がその存在を認知していました.

8月16日宮城県沖の地震時の情報利用に関する調査結果(速報)について[PDF]
http://www.disaster-i.net/disaster/20050816/050905rs.pdf

災害情報においては,「よく認知されている」ということは極めて重要なことで,どんなに優れた情報(あるいは情報システム)であっても,認知されていなければ何の役にも立ちません.その意味で,171はたいへん期待の持てる災害情報システムに成長したと考えています.

ただ,注意しなければならないのは,「171は,携帯電話しか持っていない人には利用できない」ということです.

「ウソつけ,NTTのページに『災害用伝言ダイヤルがご利用可能な電話は、加入電話・公衆電話・ひかり電話及び、災害時にNTTが避難所などに設置する特設公衆電話になります。携帯電話・PHSからも利用できますが、詳しくはお客様がご契約されている通信事業者へご確認をお願いします。』と書いてあるじゃないか」,と思われるかも知れません.

「携帯電話・PHSからも利用できます」は間違いではありません.携帯電話から171へかければつながりますし,伝言を録音することも確かにできます.しかし,171では,伝言の録音の際のID兼パスワードとして,「被災地の有線電話の電話番号」が使われ,この「電話番号」として携帯電話の番号は使用することができません.従って,被災地内に有線電話回線を持っており,携帯電話も持っている,という人は,携帯電話から171に伝言を録音することができます.しかし,被災地内に居住し,携帯電話しか持っていないという人は,171に伝言を登録することはできません.

ややこしいと思うでしょうが,ともかく,体験利用の日に,携帯から171に電話をかけ,携帯の番号で伝言が登録できるかを試してみてください.おそらく,できないはずです.

携帯電話各社は,「災害用伝言板」というサービスを用意しています.これは,災害時でもつながりやすくなっていると言われていますので,選択肢の一つになるでしょう.ただ,あらかじめ「災害用伝言板」をブックマークに入れておいた方がよいでしょう.通信混雑時には,携帯各社のトップページ(iメニュー,EZトップメニューなど)にたどり着けない可能性がありますので.

「災害時にはメールが使える」とも言われます.これもウソではありませんが,誤解があると思います.何度もリトライしないと送信できなかったり,配信にかなりの時間がかかるなど「音声通話よりはましだが,普段通りには使えない」ことが,上記の調査でも確認されています.

災害時の連絡手段で,「普段通りに使える」ようなものはないと思うしかありません.各自の必要性,利用可能性を考慮して,複数の手段を考えておく,くらいが,我々にできる「備え」かもしれません.

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2007年1月17日 (水)

浸水想定区域内に防災施設があることは珍しくありません

 阪神・淡路大震災の日の前後のためか,防災関係の記事が多くなってきています.本日の報道で目についた記事は下記.

都内の食糧備蓄庫に浸水の恐れ、政府が移転などを検討(Yahooニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070117-00000105-yom-soci&kz=soci

 「国や東京都が食糧などを備蓄している都内の倉庫19か所のうち、過半数の10か所が大規模水害時の浸水想定区域内にある」などと紹介されています.似たような調査を当方でも行っています.2005年に全国の市町村を対象として行った調査では,洪水ハザードマップを作成している市町村の内,ハザードマップ作成前の時点で「浸水想定区域内に指定避難場所があった」という市町村が,有効回答398件の53%ありました.

牛山素行・新村光男・召田幸大・山口兼由,2006:市町村による豪雨防災情報活用の実態分析,河川技術論文集,Vol.12,pp.163-168.
http://www.disaster-i.net/notes/2006kasen.pdf

 このことを批判する気はありません.地形的に,市街地のほとんどが浸水想定区域内にあるような都市はまったく珍しくないでしょうから,「浸水想定区域内に避難場所を置かざるを得ない」ことも十分あり得ます.また,浸水の可能性が低い遠方に指定避難場所を置いても,実際には利用されないといったケースもあり得るでしょう.

 「浸水想定区域内に防災施設を置かない」というのは,実現困難な理想論だと思います.それぞれの地域の実情に応じた具体策(どこそこ避難所は浸水するから避難者の受け入れはするが,資材は低層階に置かないことにする,など)を考えていくしかないと思います.肘用に面倒で時間はかかりますが・・・

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2007年1月15日 (月)

東北地域災害科学研究集会を終えて

既報のように,1/13~14の間,岩手大学において東北地域災害科学研究集会が行われました.この「集会」についての説明はいささか面倒なのですが,実質的には,日本自然災害学会の東北支部の活動という説明が,もっとも分かりやすく,かつあながち間違いでもないというところになるでしょう.「東北地域災害科学研究集会」という枠組みでの開催は43回目となりますから,既にかなりの歴史が刻まれています.東北地区の,主として理工系(ハザード系)の研究者による集まりで,人数的には発表件数53件と,こじんまりとしたものですが,その分密度の濃いやり取りがありました.

当日,発表の際に配布した資料を以下に挙げておきます.

牛山素行・國分和香那,2006年10月6~9日の発達した低気圧による北日本の豪雨災害,平成18年度東北地域災害科学研究集会
http://disaster-i.la.coocan.jp/notes/070113_m_ushiyama.pdf

2006年10月上旬の低気圧による豪雨災害について,降水量の特徴と,特に岩手県葛巻町での人的被害についての調査結果を報告したものです.避難所に避難したあとでの遭難であること,行方不明の覚知に3日近くかかったことが,近年の人的被害の中でも特筆される事例であることを指摘しました.この件については,もう少しとりまとめを進めたいと考えています.

13日付記事でも紹介しましたように,この研究集会開会直後の13日13時半頃に千島沖を震源とする地震津波があり,会場でも弱い揺れを感じました.私は津波警報の発表を,発表直後にいくつかのメールで覚知しました.さすがにハザード研究者の集会だけあり,似たような環境下にいる人は少なくなかったもようで,津波警報発表後10分くらい経つと,会場を出入りして情報収集に当たる人がおり,討議の途中で震源地や津波警報発表などについての発言があったりしました.

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2007年1月13日 (土)

津波警報・注意報解除のタイミング

1月13日13時24分ころ,千島沖を震源とする地震が発生し,13時36分,北海道太平洋沿岸東部とオホーツク海沿岸に津波警報が発表され(他に津波注意報発表地区あり),13時37分に,北海道太平洋沿岸東部とオホーツク海沿岸の予想される津波の高さが1mと発表されました.

11月15日の地震津波とほぼ同様の地域に津波警報,津波注意報が発表されました.一部の地域には避難勧告も出されました.

津波警報,津波注意報がすべて解除されたのは,13日22時10分,最初の津波警報発表から約9時間後となりました.

実際に観測されている津波が0.1mとか0.2mで,実害がないのだから早く解除すべきだ,という意見も出てくるかもしれません.これも無理もないことです.災害に関する警告情報は,「解除」のタイミングが非常に難しいものです.津波注意報が「解除」された後に,0.1m,0.2mでも津波が観測されれば,これはこれでまた「なぜ注意報解除を急いだのか」との批判が出ます.

「観測された津波の高さ」として発表される値は,あくまでも各地にある験潮所の観測値です.験潮所は,せいぜい各県の沿岸部に数箇所程度の密度しかありません.局所的にもう少し大きな津波が到達している可能性は否定できません.残念ながら自然現象である津波を,われわれはそれほど高い空間分解能で把握しているわけではありません.最後は情報利用者側の判断となりますが,情報発信者側としては,念のため,安全側の判断をするというのが,現在も,これからも,基本的な姿勢にならざるを得ないでしょう.

しかし,津波に対応した「避難場所」は,単なる山の斜面などであることも少なくありません.このような場所に,昼間から夜までとどまっていることも現実的ではないでしょう.津波注意報の発表が長期化した場合(あるいは避難勧告が長引いた場合),どのようにするか,ということも考えておかなければいけないのかもしれません.

なお,いまさらですが,「津波警報・津波注意報が発表される」ということと,「避難勧告が出される」ということは,まったく別のことです.「津波警報・津波注意報」は気象庁が発表する「津波が来るかもしれません」という情報であり,「避難勧告」は市町村によって出される,「避難してください」という情報です.津波警報が出ても,避難勧告が出るとは限りません.そして,最終的に避難するかどうかを決めるのはこれらの情報利用者自身です.

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2007年1月 4日 (木)

平成18年度東北地域災害科学研究集会

平成18年度東北地域災害科学研究集会が,1月13日(土)~14日(日)に,岩手大学(岩手県立大学ではありません)で開催されます.

自然災害研究協議会東北地区部会および日本自然災害学会東北支部
http://www.disaster.archi.tohoku.ac.jp/tohoku_nds/index.htm

牛山は,「2006年10月6~9日の発達した低気圧による北日本の豪雨災害」というタイトルで発表の予定です.岩手県や北海道などで被害をもたらした災害に関しての報告です.

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2007年1月 1日 (月)

新年のご挨拶

謹んで,新年のご挨拶を申し上げます.

岩手での2回目の新年となりました.約70年ぶりの豪雪に見舞われた2005-2006冬季とはことなり,今年の盛岡は市街地ではほとんど冠雪が見られない新年となりました.寒候期には豪雨災害は少ないものですが,「少ない」だけでけっして「ない」わけではないことを,つい先日の豪雨が思い起こさせてくれました.

災害を巡る問題は,まだまだ考えなければならないことが数多くあります.今年も,私なりの視点で,正面から災害に取り組んでいきたいと考えております.何かと力不足でお恥ずかしい限りですが,今年も,ご指導,ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます.

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