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2008年2月14日 (木)

危険に接近する事故型死をどう防ぐ

2月12日付の,

時事通信「防災リスクマネジメントweb」
http://bousai.jiji.com/

に,下記の記事を寄稿させていただきました.本ブログでは何回か指摘している内容ではありますが,ご紹介させていただきます.

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【ニュース解説】
危険に接近する事故型死をどう防ぐ=豪雨災害の人的被害の現実

牛山素行 岩手県立大学総合政策学部准教授

  豪雨によって生じる人的被害(死者・行方不明者)と聞くと、どのような遭難形態を思い浮かべるだろうか。例えば、「動きのとれない高齢者が自宅に取り残さ れ、家ごと流されて死亡する」といったイメージを抱く人も少なくないのでは無かろうか。そこまで細かくイメージしないまでも、「高齢者に被害が集中してい る」という印象を持つ人は多いであろう。近年の豪雨災害による犠牲者について調査研究を進める中で、2004年以降の191人について整理を行った結果、 一般的にイメージされている「豪雨災害の被害者像」と、集計結果による実態にはいささか乖離(かいり)があることが分かってきた。

◇自宅で遭難型が多い土砂災害、外での犠牲が多い洪水

  まず、豪雨災害による死者で最も多いのは土砂災害によるものである。筆者が調べたデータでは全体の4割だ。このことは、防災白書などでも指摘されているの でご存じの方も多いだろう。土砂災害の次に多いのが洪水による死者で、運転中、歩行中、あるいは在宅中に洪水に流されて死亡した人が2割強だ。
  次に多いのが「事故型」で2割である。「事故型」は筆者独自の分類で、「田んぼの様子を見に行って用水路に転落した」、「川の様子を見に行って川に転落し た」など、「自らの意志で危険に近づいたことにより遭難した犠牲者」である。「事故型」の多くは溺死(できし)者であり、あたかも洪水による犠牲者である かのように思われるが、本来の洪水とは無関係に発生しているといえるものである。高波、強風などに起因する死者はこれらと比べると少なく、合わせて約1割 だ。

 「高齢者に被害が集中している」という見方は、大局的には間違いではない。筆者のデータでも、65歳以上の高齢者の比率は5割以上となり、人口比から考えると高い比率を示している。しかし、もう少し詳細に見ると様相が異なってくる。
  土砂災害の場合は、65歳以上の比率が6割以上だが、洪水の場合は逆に65歳未満が約6割となっている。土砂災害の場合は、高齢者が自宅で遭難するケース がほとんどである。しかし、洪水の場合は、自宅や屋内で遭難するケースは少数で、全体の1割に満たない。ほとんどは、自動車などの運転中や徒歩移動中に遭 難している。「動きのとれない高齢者が自宅に取り残され、家ごと流されて死亡」などという典型的と考えられそうなケースは、実は少なく見て3人、多く見て も5人しか確認できなかった。一方、「事故型」の場合は、65歳以上の比率が6割以上となっている。
 つまり、逃げ遅れて流されるなどして死亡する高齢者より、田んぼの様子を見に行って用水路に転落して死亡する高齢者の方がはるかに多いことになる。

◇危険な外出を避けさせる支援へ

  「高齢者(災害時要援護者)に被害が集中している」、だから「要援護者支援が重要だ」、といった論調はよく耳にする。「要援護者支援が重要だ」ということ に異論を唱えるつもりはない。しかし、実際の被災形態を検討すると、洪水の場合は「要援護者支援」によって軽減が期待される犠牲者は限定的であるようにも 思われる。少なくとも、犠牲者のうちのかなりの割合を占める「運転中・歩行中の遭難者」、「自らの意志で危険に近づいたことによる遭難者」は、「要援護者 支援」ではもちろんのこと、現在整備されている各種災害情報を活用しても、被害の軽減が難しそうである。
 つい最近まで、このような主張をすることはいささかはばかられるものがあった。「要援護者支援」は最近の防災対策の重要なキーワードであり、筆者の主張はその取り組みに水を差すもののように受け止められかねなかったからである。

 しかし、昨年12月に、内閣府防災担当から「自然災害の『犠牲者ゼロ』を目指すために早急に取り組むべき施策」という興味深い資料が公表された。
http://www.bousai.go.jp/oshirase/h19/071218kisya.pdf
  この資料では、「台風や大雨の際の外出時の事故」が多いことを指摘。事例のイメージとして「台風の際に自分の田んぼを見回っていたおじいさんが誤って水路 に転落死」をあげ、2004年の台風23号の犠牲者の45%が外出時に用水路に転落するなどして死亡し、1割以上が田畑や船の見回りでの犠牲者と指摘。対 策として「危険な外出を避けられるように」することを挙げている。このような指摘が、防災機関からなされるようになったことに、大変心強いものを感じてい る。

 「この災害で、この犠牲者はどのように亡くなったのか」を的確に知ることは、災害によって無念にも亡くなった犠牲者に対し、残された者が果たすべき責務の一つだと考えている。今後も、この観点からの調査研究を進めていきたい。なお、このテーマに関する筆者の調査研究成果は、筆者のホームページ内に整理してあるので、関心を持たれた方はご参照いただきたい。

豪雨災害時の人的被害に関する研究
http://www.disaster-i.net/research4.html


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