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2009年10月 3日 (土)

朝日新聞「オピニオン」に掲載

紹介が遅れましたが,9月24日付朝日新聞朝刊の全国面「オピニオン」欄に当方の記事が載りました.以下に引用します.

寄稿のような文体ですが,実際には取材を受けて構成していただいたものです.繰り返し主張しているところではありますが,要は,「使える情報は大いに充実した.しかし災害情報はあるだけでは機能しない.どう使うか,使う体制作りが重要だ」という話です.

では,どうする?,です,問題は.ここが模索中です.「防災に熱心な個人」を育成してもあまり効果的ではないだろうし,ましてや国民全般の意識を底上げしようというのも,理念としてはともかく,現実的ではない,というところまでは考えがまとまっています.その先が,今まさに私の課題です.

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(私の視点)自治体と水害 専任の防災担当を育てよう 牛山素行

 降雨や川の水位などの情報を得ていても、自治体の避難勧告が遅れることがある。山口県防府市では老人ホームのお年寄りが土石流で生き埋めになり、兵庫県佐用町では川があふれて避難途中の人が多数犠牲になった。どこに問題があるのか。
 水害や土砂災害の対策として、ダムや堤防強化などのハード対策に加え、最近国や自治体が力を入れているのが、気象情報や川の水位情報を集めて住民を避難させたりするソフト対策だ。気象庁は全国1300地点で観測、国土交通省は河川の1900地点で水位を観測、インターネットで流す体制が整っている。防災情報は住民に利用されない限り災害を減らせないが、情報を提供する側も利用する側も、膨大な情報を手にしただけで「減災」できたような錯覚に陥っているのではないか。
 災害対策基本法では、避難勧告をはじめ、住民に情報を伝える責務が市町村に集中している。国や都道府県から膨大な情報を得て、住民にいつ、何を、どう伝えるかを判断するには専門的な知識と熟練がいるのに人材が決定的に不足している。
 昨年、全国の市町村の防災担当者にアンケートをした。水位などの情報を日頃から見ていると答えたのは3割、見たことはあるも含めると8割に達した。ところが、専任の防災担当者がいない自治体が約3割、1人というのが2割あった。専任の職員が複数いる大きな自治体でも担当者は普通2~3年で代わり、知識を蓄えるのは難しい。国や都道府県が自らも含め、エキスパートを育てることが緊急の課題だ。
 アンケートでは、避難勧告について、約7割が「空振りになっても良いので出すべきだ」と答えたが、現実にはためらいがちだ。専門家がいないこともあるが、空振りに対する批判への懸念、避難所開設などに伴う費用を市町村が負担しなければならないことなども要因となっているようだ。避難勧告を躊躇(ちゅうちょ)すべきではないが、国や都道府県がこうした費用を補助できないものだろうか。災害対策基本法は、避難勧告の権限を市町村長だけに与え、都道府県は情報提供にとどまっているが、緊急時には市町村に勧告するよう指導したり、自ら勧告できたりするよう改正してもいい。
 さらに大事なことは、住民が情報を受け取り、どう行動するかだ。02年に水害にあった岩手県の旧2町村で行った調査では、避難勧告を受けて避難した人は2割しかなかった。一方で、勧告が出るまでは避難しなくていいと思いこんでいる人も多い。佐用町役場自身が被災し、救助どころでなかったように、行政任せにすることはかえって危険だ。
 どこが危険かを地図で示したハザードマップ、雨量や水位などの情報の整備とともに、情報提供者・利用者双方が災害情報を生かすため、それぞれの地域で専門的な知識を持つ技術者に加わってもらいながら防災ワークショップを開いて話し合い、理解を進めてほしい。

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