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2010年5月17日 (月)

「津波の高さ」とは

ちょっと時間が経ってしまいましたが,5月4日付け静岡新聞「時評」欄に,当方の下記寄稿が掲載されました.記事では図が掲載できませんでしたので,図も添付しておきます.
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100504 「津波の高さ」とは

 去る2月28日に日本に到達したチリ地震津波の前後,津波に関する様々な知識が伝えられた.津波はあまり身近な現象ではないため,その姿についてわかりにくいところがあるかと思われるので,この機会に基本的な言葉を再確認しておく必要がありそうだ.

 筆者が非常にわかりにくいと思うのは「津波の高さ」である.津波警報の場合,気象庁から発表される解説文は「高いところで2m程度の津波が予想されますので,警戒してください」となる.これを聞いて「2mの波なら,標高2mより高いところにいれば大丈夫だな」と考えるのは誤解である.「高いところで2m程度の津波」とは,海岸付近で海面の高さが普段の高さより2m程度高くなる,という意味である.

 これは満ち潮の際に静かに海面が高くなるような現象ではなく,海面が高くなるとともに激しい流れで海水が陸上に上がって来るのだ.これを「遡上」という.遡上した津波が最終的に到達した地点の標高を「遡上高」と言い,これが「津波の高さ」より高くなることは珍しくない.たとえば,1983年5月26日に発生した日本海中部地震津波の際に秋田県能代港の験潮所(海水面を測る観測所)で観測された「津波の高さ」は最大1.94mだったが,能代港の北方数百mの海岸付近に残された痕跡からは「遡上高」7.85mが測定されている.

 

各地で過去に「×mの津波が来た」と伝えられている数字は,ほぼ「遡上高」であり,その際の「津波の高さ」はもっと小さな値であった可能性が高い.また,津波ハザードマップには,「津波の高さ」,「遡上高」,「浸水深」など,地域によって異なる値が示されていることもある.

 「津波の高さより遡上高の方が大きいのなら,遡上高を発表して欲しい」と思われるかもしれない.しかし,遡上高は「津波の高さ」に比べごく細かな地形など,ちょっとした条件の違いで大きな差が出やすく,津波発生後の詳細な調査研究段階でも再現できないことも多い.ましてや,地震直後の短時間で的確な予測を行うことは極めて困難である.また,地域による差が極めて大きいので,仮に的確な予測情報が出せたとしても,その情報をどう伝達できるのかという問題も大きい.

 想定東海地震などによる津波が到達する範囲がどのくらいかについては,静岡県が公表している「静岡県第三次地震被害想定」に津波浸水想定区域として示されている.これはあくまでも一つの想定結果で,条件の違いによっては異なる範囲に到達することもあるが,相対的に危険な地域の見当をつけることはできる.津波予報の「×m」という数字だけを見るのではなく,様々な情報を参考に津波に対する行動を考えておきたい.

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