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2010年6月29日 (火)

チリ地震津波避難行動調査の概要報告(7/10)

当研究室では,静岡県危機管理部と共同で,2月28日のチリ地震津波に際しての避難行動に関する調査を,岩手県陸前高田市,静岡県湖西市,沼津市,松崎町において実施しました.

調査結果については,今後順次学会等で発表していく予定ですが,その最初の報告として,調査結果の概要報告会を下記日程で行います.この報告は,しずおか防災コンソーシアムの定例行事「土曜セミナー」の一環として実施されますので,どなたでも参加できます.

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●しずおか防災地域連携 第28回土曜セミナー

<日時>平成22年7月10日(土)10:30~12:00

<会場>静岡県地震防災センター(静岡市葵区駒形通5-9-1)
※会場の駐車場には限りがありますので、公共交通機関等を御利用ください。

<対象者>どなたでも受講できますが、事前に下記ページの案内に従って「静岡県地震防災センター」までお申し込みください.

http://www.e-quakes.pref.shizuoka.jp/center/seminar/index.html

★静岡県地震防災センターは静岡大学防災総合センターとは別組織です.静岡大学防災総合センターまたは牛山まで参加の申込をいただいても対応できませんので,ご了解ください.

<受講料> 無料

<定員> 180名(先着順)

<内容>
 「2010年2月28日チリ地震津波の際の避難行動調査の概要」
  静岡大学 防災総合センター副所長・准教授  牛山 素行

 2010年2月27日に南米チリで発生した地震による津波が2月28日に日本列島太平洋側に到達し、東北地方では大津波警報、静岡県など広い範囲で津波警報が発表された。静岡大学防災総合センター牛山研究室では、津波発生当日に岩手県三陸地方を現地踏査し、その後インターネット利用による広域的な避難行動の調査、岩手県陸前高田市、静岡県湖西市、沼津市、松崎町の一部地区を対象としたアンケート調査などを実施した。今回は,素集計結果を中心に調査の概要を紹介する。
 また、先日文部科学省の科学技術振興調整費のプロジェクトとしての採択を受け、静岡大学防災総合センターと静岡県の共同で進めつつある「災害科学的基礎を持った防災実務者の養成」に関しても紹介する。

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2010年6月19日 (土)

読売新聞で報道されていました(5/25)

5月25日読売新聞(大阪朝刊)では,「市町村警報」に関する当方のコメントが紹介されていました.

私のコメントの趣旨は,「自治体の情報処理能力向上」ではなくて(無論それも重要ですが),我々自身を含む,情報利用者側全体が何らかの工夫をしていくことが必要だろう,ということです.

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[ニュースが気になる!]気象情報・注意報 市町村ごとに 危険迫る地域明確化

 大雨、洪水、暴風、高潮などの気象警報・注意報が27日から市町村ごとの発表に変わる。災害の危険が迫る地域を明確にするため、細分化される。増える情報を正しく受け止め、防災に役立てたい。

 気象庁は現在、7種類の気象警報と16種類の注意報を全国375区域に分けて出している。たとえば兵庫県は8区域に分けられ、23~24日の大雨でも「阪神」「播磨南東部」といった単位で警報・注意報が出た。それが「神戸市」「芦屋市」といった形になるわけだ。

 2008年の神戸・都賀川、09年の兵庫県佐用町など、近年は局地的な豪雨で大きな被害が出ている。実際の降水域に比べて警報の出る範囲が広すぎることが防災上の課題になってきた。ほとんど雨の降っていない市町村が警報の区域に入るケースも目立った。

 気象庁は、予報官の判断を支援する新システムを整えるなど、1700余りの市町村ごとに出せるよう体制を強化した。「避難勧告などの権限を持つ市町村長が判断がしやすくなる。警報の解除も早めにできる」とする。自治体側も「大まかな区域では住民にピンと来なかったが、市町村名だと危険な所が分かりやすい」(堺市)と歓迎する。

 ただ、情報量が増えることへの戸惑いもある。5区域から43市町村へ増える大阪府は「警報が小刻みに発表されると各市町村への伝達に追われる。ファクス送信に手間取らなければいいが」と心配する。

 速報する放送局も、▽アナウンサーが読み上げるのに時間がかかる▽字幕で画面がいっぱいになる--といった事態が考えられる。NHKはなるべく市町村ごとに伝える方針だが、広域の放送では情報量が増えるため、防災上支障のない範囲でいくつかの市町村をまとめて伝えるという。

 政令指定市の区ごとの発表はなく、香川県より面積の広い岐阜県高山市から4平方キロ台の大阪府忠岡町まで同じ扱いというアンバランスも生じる。気象条件の違う区域にまたがる大津市、鳥取市など全国26自治体には今後も複数のエリアに分けて発表する予定で、気象庁は「今後、要望があれば対応を検討する」という。

 せっかくの情報を防災へ生かすには、市民が正しい知識を持つことも大切だ。

 牛山素行・静岡大准教授が3月、インターネット調査で「警報」の意味を尋ねると、回答した539人中、「重大な災害が起こる恐れへの警告」と正解を選んだのは46%。「災害の恐れがあると注意する情報」という注意報の説明を選んだ人が40%で、警報の意味が本来より軽視されていた。

 牛山さんは「発表区域の細分化をきっかけに警報の意味を再確認し、災害に備えてほしい。自治体や企業の関係者も、あふれる情報を処理する能力の向上が必要だ」と指摘している。 (科学部 山崎光祥)

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2010年6月18日 (金)

毎日新聞で報道されていました(5/22)

5月22日付け毎日新聞では,「市町村警報」に関する当方のコメントが紹介されていました.

繰り返し指摘しているように,情報の高密度化→情報量の増大→情報伝達システムの能力向上が必要→システム末端の利用者も能力向上が必要,という構造になっています.

私は「だから利用者は努力して能力向上せよ」というつもりはありません.我々人間の能力は,機械のように突然向上することは無理です.我々自身の情報処理能力に応じた「選択」,あるいは「分担」が必要だと思っています.

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気象庁:市区町村単位の気象警報、TV・ラジオ速報せず 「情報量膨大で住民混乱」

 ◇27日開始

 気象庁が27日に開始する大雨や洪水などの気象警報・注意報の市区町村単位での発表について、在京のテレビ、ラジオ局のほとんどはテロップなどによる速報をしないことが分かった。情報量が膨大になり「かえって視聴者の混乱を招く」ことが理由。気象庁は警報の細分化で自治体などによる防災対応の迅速化を期待するが、市民に直接伝える手段が課題となりそうだ。

 気象庁によると、警報・注意報は現在、各都道府県を「県南地域」「23区東部」など5~6カ所程度に分けた「2次細分区域」ごとに発表している。テレビ、ラジオ各局は管内の地域に警報が出た場合、速報している。

 市区町村単位の発表は27日午後1時開始。発表区分けは、従来は全国で375地域だったが、1777地域と約5倍に増える。発表回数も1・5倍程度に増える見込み。台風などで広範囲に警報が出た場合は、情報量が膨大になる可能性があり、気象庁は2次細分区域単位の情報も引き続き配信する。

 在京の民放キー局は全5局が市区町村単位の速報はしない方針。日本テレビは「警報の範囲が広いと、視聴者は情報の洪水のような状態の中で知りたい市区町村を探さなければならなくなる」と説明。在京のAM、FMラジオ計6局も大半が従来通り、2次細分区域単位の速報を続ける。

 一方、NHKは「対象の市区町村の数や時間帯によっては2次細分区域の速報にとどめる場合もある」としている。

 牛山素行・静岡大准教授(災害情報学)は「市区町村単位の警報は、自治体など防災関係機関にとっては避難勧告の発令・解除の判断が早まるなどの点で有効だが、市民生活にどう役立てるかが問題だ」と指摘する。

 気象庁気象防災推進室は「ホームページなどで警報・注意報を確認できることを周知するほか、住民に気象防災情報を配信する自治体のメールサービスの普及も促したい」としている。【福永方人】

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2010年6月17日 (木)

毎日新聞で報道されていました

5月5日付け毎日新聞に当方のコメントが紹介されていました.

ハザードマップは有力な資料ですが,「頑なに読み取るもの」ではありません.情報として活用するためには,独りよがりに見るのではなく,様々な専門家とともに利用することが重要です.

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備える:津波対策/3 ハザードマップ、未策定多く

 「ハザードマップをきめ細かく作るべきだ」「普段からハザードマップをきちんと用意いただきたい」。4月21日に開かれた中央防災会議後の記者会見で、中井洽防災担当相は「ハザードマップ」という言葉を繰り返し口にした。

 津波で想定される浸水区域などを示し、避難の判断などに大きな役割を果たす「津波ハザードマップ」。静岡大防災総合センターの牛山素行准教授(災害情報学)は「どこの堤防が切れるかで被害場所が大きく変わる洪水と比べ、津波は被害を想定しやすい。ハザードマップは危険な場所を検討するのにとてもいい資料だ」と話す。だが、市町村の津波ハザードマップの公表状況が分かる国土交通省のハザードマップポータルサイトを見ると、未策定を表す白い部分が目立つ。

 市町村がハザードマップの策定に踏み切れない理由として挙げられるのが財政難だ。過去に津波被害の経験がありながら、沿岸7自治体中4自治体が未策定という秋田県は「要請しているが、被害想定が難しく経費も掛かると二の足を踏んでいるようだ」と話す。

 その一方で、住民と一緒になって津波ハザードマップを作り上げた市町村もある。千葉県は06~08年度、県内の16市町村で「津波ハザードマップ作成ワークショップ」を開催。県作成の浸水予測図を基に、住民たちが避難路などを意見を出し合いながら書き込んでいった。参加した館山市の担当者は「地域の事情を職員よりよく知る地元の人が持つ情報を盛り込んだマップができた」と満足げだ。

 ただし、ハザードマップがあればいいというものではない。ワークショップで講師を務めた市民防災研究所(東京都江東区)の細川顕司事務局長は「ハザードマップ作りは、津波被害を考えるきっかけ。完成したマップを基に、自分の住む家や地域は津波が来たらどうなるのかを話し合う機会を設けることが必要」と指摘。牛山准教授も「ハザードマップはあくまで目安で、それ以上の被害になることもあり得る。専門家を交えたりして、マップの読み方を学ぶことが重要だ」と話している。【飯田和樹】=つづく

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2010年6月16日 (水)

中日新聞で報道されていました

しばらく,自己関係の報道をよくチェックしていなかったのですが,ここ1ヶ月あまりの間にいくつかの記事で紹介されていました.

まず5月1日付け中日新聞です.広瀬広忠先生のコメントの後に紹介されているとは光栄です.

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毎月1日は東海地震特集 備える その89「災害の心理学」 広瀬弘忠東京女子大教授 避難遅らす『正常性バイアス』 危険性直感できる訓練を

 津波の避難勧告が出ても避難しない人が問題になっている。「自分は大丈夫」。そんな根拠のない気持ちを抱いてはいないだろうか。そんな心には「正常性バイアス(偏見)」が強く働いていると災害心理学の専門家、広瀬弘忠東京女子大教授は言う。打ち破るにはどうしたらいいのかを聞いた。(中村禎一郎)

 避難が遅くなる仕組みは?

 現代人は今、危険の少ない社会で生活している。安全だから、危険を感じすぎると、日常生活に支障が出てしまう。だから、危険を感知する能力を下げようとする適応機能が働く。これまでの経験から「大丈夫だ」と思ってしまいがちだ。これが「正常性バイアス」と呼ばれるものだ。

 強い正常性バイアスのために、現代人は今、本当に危険な状態でも「危険だ」と思えない。チリ大地震の津波が押し寄せているのに、見ているだけで逃げない人の映像が日本でも流れた。強力な正常性バイアスの例と言える。

 災害でパニックはめったに起こらないと指摘している。

 私たちの調査で、災害でパニックが起こったと確認できる例はほとんどない。特に日本のように地域の人同士がつながっている社会では、パニックは起こりにくい。「自分を犠牲にしても」と互いに助け合おうとする心理が強くなるからだ。

 現状では、強い正常性バイアスの結果、パニックになる以前、つまり何が起こっているのか分からないうちに災害に巻き込まれる。日本では避難警報が出ても避難率はいつもゼロから数%程度と低いことからも明らかだ。行政側はパニックを恐れて災害情報を過小に公表してはいけない。

 逃げ遅れないために必要なことは?

 いざというときに正常性バイアスを打ち破り、「危険だ」と直感できるような訓練をしておくことが大切だ。そのためにはある程度、災害の恐怖感を体に覚えさせておかなければならない。

 人間の脳は自分が意識して何かを感じる前に行動を決定する。例えば戦場のベテラン兵士は訓練の結果、思考する前に、「危険だ」と行動できる。兵士ほどではなくとも、災害に対してそういった感覚を磨くことが、生き残るために大事だろう。

 具体的に必要な訓練とは?

 文字や映像だけで災害の恐ろしさを知るのではなく、実践に近い形の訓練が有効だと思う。日常生活に身体的、心理的なマイナスの影響があるかもしれないが、それを補って余りあるプラスがある。訓練で出るマイナスを認めるような姿勢が世論にも必要だ。

 バーチャルリアリティー(仮想現実)技術を活用して造った装置でも、かなり現実に近い体験ができるかもしれない。予告せず、抜き打ちで実施する防災訓練も一案。病院ならば入院患者がいる状態で避難訓練をするのもいい。現実味を帯びた状況を演出しなければいけない。

 結局、災害で生き残るのはどういう人か。

 正常バイアスを打ち破ったうえで落ち着いて判断し行動する人が最終的には生き残る。一九五四年、青函連絡船の洞爺丸が沈んだ。そこで生き残った乗客の一人は船が座礁したことから海岸に近いと判断し、救命胴衣をつける際、衣服を全部身につけるなどこういう場合に不可欠な準備をし生き抜いた。冷静に状況を分析し行動した結果だ。

 災害を生き抜いた人は周囲が犠牲になったことを不当だと感じず、私たちは社会全体で生還者を心から祝福する雰囲気をつくることが大切だ。それが復興の原動力となる。

 ひろせ・ひろただ 1942(昭和17)年東京都生まれ。東京大文学部卒。著書は「人はなぜ逃げおくれるのか」「災害防衛論」(以上集英社新書)「無防備な日本人」(ちくま新書)など。

    ◇

 『津波警報』発令したが

 警戒より安心感!?

 二月下旬のチリ地震による津波で住民の避難行動の在り方があらためて問題になった。静岡大防災総合センターの牛山素行准教授(災害情報学)は三月、調査会社を通じてインターネットで沿岸約二キロ以内に住む人を特定し、ウェブアンケートを実施。静岡県で二百六十人、岩手・宮城両県で計二百二十九人の計四百八十九人の回答があった。

 結果では「指定避難場所に避難」と答えたのは2・7%しかいなかったが、何らかの形で海岸から離れていた人は25・8%、「建物内避難のみ」が8・2%いて、避難行動を取らなかったのは63・4%だった。牛山准教授は「ほぼ四割の人たちが、正しい対応かどうかは別にして何かしら行動をとっていた」と冷静にみる。

 しかし「何メートルの高さの津波注意報・警報で避難するか」との質問では、「二メートル以下」という回答が六十人で全体の一割強にとどまった。一方で大津波警報に相当する「三~九メートル」と答えたのが二百十六人、津波警報予報で発表される最大値以上の「十メートル以上」も百九十五人と、それぞれ四割も占めた。

 牛山准教授は「津波やその現象を正しくとらえていない」と危ぶみ、「何メートルと表示される警報が、『これくらいなら大丈夫だろう』という安心情報として機能している可能性がある」と心配する。

 その原因に「情報の受け手に(心理的な)バイアスがかかっている」と説くのは富士常葉大の木村玲欧准教授(防災心理学)だ。

 木村准教授は「警報が出される頻度が多い割に実際に警報で命が助かった人は少ない」と指摘。警報への「慣れ」が万が一のときに必要な対応をしない「オオカミ少年効果」を生じさせ、この効果が「大したことにはならないだろう」と楽観的に明るい見方をしてしまう「楽観主義的バイアス」を強める、ととらえる。

 スマトラ地震大津波を例に、「大津波を経験した人に『また津波が来る』と言えば先を争って逃げるはず」と断言。実際、戦時中に空襲警報など警報によって危機を免れたことのある人は、現在も「警報」に対する意識が高い傾向がある、とも説明した。

 「警報は少ない方がいい」と木村准教授。警報、注意報の在り方が問われているとも。地元に精通している自主防災組織や自治会長たちに直接危険を呼びかけてもらうような情報伝達ルートの重要性に言及し、「情報が送り手主体ではなく、受け手が行動まで起こすような形での出し方が求められる」と話した。(梅田歳晴)

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2010年6月15日 (火)

災害科学的基礎を持った防災実務者の養成

ここしばらくブログの更新が滞りました.その主たる原因は,5月下旬に,当方が中心になって申請していた科学技術振興調整費「災害科学的基礎を持った防災実務者の養成」が採択内示され,各種事務的処理に忙殺されてしまったためです.

このプロジェクトに関しては今後追々ご紹介していきますが,本年度から開始して5年間,予算的にも大型のプロジェクトです.

このプロジェクトは,主に社会人を対象とした人材育成プロジェクトです.静岡県では,県により「静岡県防災士」の養成講座が開催されていますが,この講座の修了者を主な対象とし,1年半をかけて講義,演習を受講していただき,後半では卒業研究的なものをとりまとめ,学会などの場で,専門家に向けて発表してもらうことを考えています.

防災に関する人材育成にも様々なあり方があり,静岡県では県を中心に既にいろいろな種類の取り組みが行われています.従って本プロジェクトでは,全般的な人材育成ではなく,対象や目的を絞った構成を考えています.

まず,どのような「防災」を対象とするかですが,災害ライフサイクル(事前・事中・事後)のうち,「事前」の対策を主な対象と考えています.近年,「防災=危機管理=発災対応」といったイメージがよく抱かれているように感じられます.それは必ずしも間違いではないと思いますが,それがすべてではないと思います.「危機管理=発災対応」を研修する機会は既に多くあります.我々は,「事前の対策」に主体的に当たれる人材の育成を試みたいと考えています.

特に「事前の対策」を考える上では,「経験談」,「マニュアル」,「ノウハウ,ハウツー」,「訓練」といったものが十分機能せず,応用力といいますか,知的基礎体力が重要になってくると思います.とはいえ,限られた養成期間では,幅広い災害科学の体系を一から伝えることは現実的ではありません.また,一昔前のように,ハザード(地震・台風など)のメカニズムを教えることが「防災教育」であるという考え方も必ずしも適切なものではないと思います.このプロジェクトでは,「災害に関わる科学的情報を読み解ける」ということを目標にしたいと考えています.例えば,ハザードマップに表記された数値や等値線を鵜呑みにするのではなく,かといっていい加減ではなく,幅を持った情報として読み取れる,といったことです.

また,受講者層としては,行政機関や防災関係企業において「業務として防災に関わっている実務者」を想定しています.業務,仕事として防災に関わっている方々は,その業務内容が多くの人々に影響を与えるものであり,こういった人材こそが「中核的な防災人材」であると我々は考えています.防災に関わる人材育成というと,「防災に熱心な市民リーダー」,「災害ボランティア」などがイメージされがちですが,本プロジェクトではこれらの人材層は対象としてあまり考えていません.
無論,そういった人材が不要であると考えているわけではありませんが,静岡県においてはそういった人材育成は既に幅広く行われていますので,本プロジェクトでは対象を別の方向に絞りたいと考えています.

この講座の受講者は,災害科学という専門領域の入り口に立つ一学徒(学生)として扱われます.したがって,「防災に関わる地道な活動を熱心にやっている」こと自体はなんら評価の対象となりません.また,研究成果をとりまとめ,発表する過程では,自らの取り組みを全面的に否定されるといった経験をすることがごく普通にあるでしょう.調査研究するということは,「意見」「主張」をまとめることではありません.先行研究を踏まえ,客観的なデータを整理して,何らかの結論を導き出すことが基本です.

本講座の修了者には,静岡大学・静岡県からなんらかの称号が授与される予定です.たただしこの称号は,学士・修士等の学則上の称号ではなく,また何らかの権限を付与される資格でもありません.本講座の経験を,修了者の所属組織における防災実務に生かしていただくことが我々の願いです.「○○称号をせっかく取ったのに,××は私をなぜ使わないんだ!」というアプローチスタイルを我々は推奨しません.

このプロジェクトのポリシーには,反発を覚える方も多いことと思います.しかし,我々はあえて,この取り組みに挑戦してみたいと考えています.

受講者の募集時期や,選考方法(希望者全員を受け入れることは難しいので何らかの方法で選考します),具体的な講座の内容などはまだまだ未定であり,これから数ヶ月かけて議論していく予定です.本ブログでも,追々紹介していくつもりです.

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2010年6月 5日 (土)

東大生研にて講演

6月5日,東京大学生産技術研究所の一般公開イベントである「生研公開2010」の一部として行われたシンポジウム,「水の知」(サントリー)総括寄付講座「水の知の最前線 襲う水、うつる水、奪い合う水 ~水の脅威に立ち向かう~」において,「近年の豪雨災害と災害情報をめぐる課題」のタイトルで講演を行いました.

参加者は,特に対象が限定されていない一般市民です.

理工学系分野の最先端で研究を行っている研究者と,いわゆる一般市民の間に存在する,様々な意味でのギャップをあらためて感じさせられました.私自身の立ち位置がよくわかりませんが,少なくとも「最先端の研究者」とは少し違います.防災というテーマは,実に様々な人たちが関わります.研究者が持つ様々な知見,いわゆる「現場のニーズ」,そして,「防災のために必要な技術や知見」,これらがなかなかうまくかみ合っていかないことにもどかしさを感じています.

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2010年6月 3日 (木)

静岡県河川協会総会にて講演

6月3日,静岡市内で開催された平成22年度静岡県河川協会総会
にて,「近年の豪雨災害と災害情報をめぐる課題」のタイトルで講演を行いました.

市町村等の防災関係者が主な参加者でしたが,いわゆる総務系の防災担当職員よりも,土木等の技術系職員の方が多かったようです.

繰り返し主張しているように,地域防災,特に事前からの対応を考える上では,技術者の役割が大です.「防災=危機管理=発災対応」という,ここ十数年の日本で急速に広まった固定観念から,そろそろ脱却すべき時期に来ていると思います.

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