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2010年6月16日 (水)

中日新聞で報道されていました

しばらく,自己関係の報道をよくチェックしていなかったのですが,ここ1ヶ月あまりの間にいくつかの記事で紹介されていました.

まず5月1日付け中日新聞です.広瀬広忠先生のコメントの後に紹介されているとは光栄です.

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毎月1日は東海地震特集 備える その89「災害の心理学」 広瀬弘忠東京女子大教授 避難遅らす『正常性バイアス』 危険性直感できる訓練を

 津波の避難勧告が出ても避難しない人が問題になっている。「自分は大丈夫」。そんな根拠のない気持ちを抱いてはいないだろうか。そんな心には「正常性バイアス(偏見)」が強く働いていると災害心理学の専門家、広瀬弘忠東京女子大教授は言う。打ち破るにはどうしたらいいのかを聞いた。(中村禎一郎)

 避難が遅くなる仕組みは?

 現代人は今、危険の少ない社会で生活している。安全だから、危険を感じすぎると、日常生活に支障が出てしまう。だから、危険を感知する能力を下げようとする適応機能が働く。これまでの経験から「大丈夫だ」と思ってしまいがちだ。これが「正常性バイアス」と呼ばれるものだ。

 強い正常性バイアスのために、現代人は今、本当に危険な状態でも「危険だ」と思えない。チリ大地震の津波が押し寄せているのに、見ているだけで逃げない人の映像が日本でも流れた。強力な正常性バイアスの例と言える。

 災害でパニックはめったに起こらないと指摘している。

 私たちの調査で、災害でパニックが起こったと確認できる例はほとんどない。特に日本のように地域の人同士がつながっている社会では、パニックは起こりにくい。「自分を犠牲にしても」と互いに助け合おうとする心理が強くなるからだ。

 現状では、強い正常性バイアスの結果、パニックになる以前、つまり何が起こっているのか分からないうちに災害に巻き込まれる。日本では避難警報が出ても避難率はいつもゼロから数%程度と低いことからも明らかだ。行政側はパニックを恐れて災害情報を過小に公表してはいけない。

 逃げ遅れないために必要なことは?

 いざというときに正常性バイアスを打ち破り、「危険だ」と直感できるような訓練をしておくことが大切だ。そのためにはある程度、災害の恐怖感を体に覚えさせておかなければならない。

 人間の脳は自分が意識して何かを感じる前に行動を決定する。例えば戦場のベテラン兵士は訓練の結果、思考する前に、「危険だ」と行動できる。兵士ほどではなくとも、災害に対してそういった感覚を磨くことが、生き残るために大事だろう。

 具体的に必要な訓練とは?

 文字や映像だけで災害の恐ろしさを知るのではなく、実践に近い形の訓練が有効だと思う。日常生活に身体的、心理的なマイナスの影響があるかもしれないが、それを補って余りあるプラスがある。訓練で出るマイナスを認めるような姿勢が世論にも必要だ。

 バーチャルリアリティー(仮想現実)技術を活用して造った装置でも、かなり現実に近い体験ができるかもしれない。予告せず、抜き打ちで実施する防災訓練も一案。病院ならば入院患者がいる状態で避難訓練をするのもいい。現実味を帯びた状況を演出しなければいけない。

 結局、災害で生き残るのはどういう人か。

 正常バイアスを打ち破ったうえで落ち着いて判断し行動する人が最終的には生き残る。一九五四年、青函連絡船の洞爺丸が沈んだ。そこで生き残った乗客の一人は船が座礁したことから海岸に近いと判断し、救命胴衣をつける際、衣服を全部身につけるなどこういう場合に不可欠な準備をし生き抜いた。冷静に状況を分析し行動した結果だ。

 災害を生き抜いた人は周囲が犠牲になったことを不当だと感じず、私たちは社会全体で生還者を心から祝福する雰囲気をつくることが大切だ。それが復興の原動力となる。

 ひろせ・ひろただ 1942(昭和17)年東京都生まれ。東京大文学部卒。著書は「人はなぜ逃げおくれるのか」「災害防衛論」(以上集英社新書)「無防備な日本人」(ちくま新書)など。

    ◇

 『津波警報』発令したが

 警戒より安心感!?

 二月下旬のチリ地震による津波で住民の避難行動の在り方があらためて問題になった。静岡大防災総合センターの牛山素行准教授(災害情報学)は三月、調査会社を通じてインターネットで沿岸約二キロ以内に住む人を特定し、ウェブアンケートを実施。静岡県で二百六十人、岩手・宮城両県で計二百二十九人の計四百八十九人の回答があった。

 結果では「指定避難場所に避難」と答えたのは2・7%しかいなかったが、何らかの形で海岸から離れていた人は25・8%、「建物内避難のみ」が8・2%いて、避難行動を取らなかったのは63・4%だった。牛山准教授は「ほぼ四割の人たちが、正しい対応かどうかは別にして何かしら行動をとっていた」と冷静にみる。

 しかし「何メートルの高さの津波注意報・警報で避難するか」との質問では、「二メートル以下」という回答が六十人で全体の一割強にとどまった。一方で大津波警報に相当する「三~九メートル」と答えたのが二百十六人、津波警報予報で発表される最大値以上の「十メートル以上」も百九十五人と、それぞれ四割も占めた。

 牛山准教授は「津波やその現象を正しくとらえていない」と危ぶみ、「何メートルと表示される警報が、『これくらいなら大丈夫だろう』という安心情報として機能している可能性がある」と心配する。

 その原因に「情報の受け手に(心理的な)バイアスがかかっている」と説くのは富士常葉大の木村玲欧准教授(防災心理学)だ。

 木村准教授は「警報が出される頻度が多い割に実際に警報で命が助かった人は少ない」と指摘。警報への「慣れ」が万が一のときに必要な対応をしない「オオカミ少年効果」を生じさせ、この効果が「大したことにはならないだろう」と楽観的に明るい見方をしてしまう「楽観主義的バイアス」を強める、ととらえる。

 スマトラ地震大津波を例に、「大津波を経験した人に『また津波が来る』と言えば先を争って逃げるはず」と断言。実際、戦時中に空襲警報など警報によって危機を免れたことのある人は、現在も「警報」に対する意識が高い傾向がある、とも説明した。

 「警報は少ない方がいい」と木村准教授。警報、注意報の在り方が問われているとも。地元に精通している自主防災組織や自治会長たちに直接危険を呼びかけてもらうような情報伝達ルートの重要性に言及し、「情報が送り手主体ではなく、受け手が行動まで起こすような形での出し方が求められる」と話した。(梅田歳晴)

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