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2010年8月31日 (火)

東海豪雨から10年・毎日新聞にコメント掲載

東海豪雨に関するコメント記事の一環で,今度は8月25日付け毎日新聞(中部朝刊)です.

「ハード対策では浸水など物的被害の軽減に大きく影響し、ソフト対策では人命被害を軽減できる」は,私の元もと伝えた言葉とは少し異なります.「ハード対策では人的被害・物的被害双方の軽減に寄与するが、ソフト対策では主として人的被害の軽減にのみ効果が期待される」が私の考え方です.

ハード対策の課題は,・整備に時間や費用がかかること・整備が行われたとしても,計画規模を超える現象が発生すれば十分な効果を補発揮できない場合があることという点にあります.計画規模を超える現象の発生は,「あり得ないこと」でもありませんし「温暖化によって急に起こるようになってきた」訳でもありません.当然起こりうることです.

あらゆる水害に対応できる堤防,といったものを作ることはできませんから,ある程度の規模まで対応できる施設を作ることにせざるを得ないわけです.しかし,予算や時間的な問題があり,早急にハードだけで対策を講じることが不可能であることが理解されるようになってきたのが昨今の状況です.

ハード対策の効果は確実なものがあるわけですが,上記のような課題,限界があるため,それを補う手段としてソフト対策を組み合わせていく必要があるということになります.

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水害と向き合う:東海豪雨から10年/1(その1) ハード対策に限界

 ◇想定外の雨量、貯留できず
 ◇市「住民の自助共助必要」
 「下水管からあふれた雨水がここに流れ込み、浸水被害はかなり軽減されますよ」
 23日、名古屋市瑞穂区に建設中の雨水を一時的にためる貯留施設で、市上下水道局建設工事事務所の内田昌宏さん(54)は水害への備えを強調した。住宅街にぽっかりと開いた直径13メートルの穴から地下25メートルに下り、横に延びた直径3メートル、長さ1・6キロの鉄筋コンクリート製の管内。指さした先から、頭上を走る地下鉄の音が響いた。
 00年9月の東海豪雨では、河川の水に加え、市街地にたまった雨水が貯留施設近くなどにあるポンプ施設の排水能力を上回ったことが浸水被害の一因となった。市は01年度、国の助成で総額2000億円をかけた整備事業に着手し、貯留施設を64カ所から94カ所へ増設、ポンプの排水機能も強化している。事業が完了する18年度ごろには、貯留量は豪雨前の14万トンから83万トンに、ポンプ施設の排水能力は1時間雨量50ミリから60ミリに高まる。
 しかし、東海豪雨で降った雨は1時間で約100ミリにも及んだ。同局下水道計画課の職員は「100ミリに対応するには貯留・ポンプ施設の建設費や用地買収などで何倍もの費用や時間が必要になり、ハード対策だけで被災をゼロにするのは不可能だ。住民がハザードマップなどを活用し、自助共助してソフト面で被害を軽減してほしい」と訴える。
 ハード対策は限界にきつつあるのか――。これが名古屋市だけの問題ではないことを示す試算がある。
 豪雨後の00~04年度、国の河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)指定を受け、名古屋市や愛知県旧西枇杷島町(現清須市)などに水害をもたらした庄内川、天白川、新川の3河川の改修事業を行った国と愛知県が投じた予算は総額約1000億円。それでも県によると、東海豪雨級の雨が今降れば、3河川流域で床上3083戸、床下1万3223戸の計1万6306戸が浸水するという。東海豪雨による被害に比べ、床上で8割、全体なら4割減るに過ぎない。
 静岡大防災総合センターの牛山素行・副センター長は「ハード対策は浸水など物的被害を軽減し、ソフト対策で軽減できるのは人命(人的被害)。簡単に置き換えられるものではなく、あくまで両輪と考えて対策を進める必要がある」と指摘する。
 瑞穂区に建設中の施設は、11年に完成すれば1万1200トンの雨水を貯留できる。25メートルプールで45杯分だ。だが、ひんやりとした貯留管内から地上に戻った内田さんは、額から汗を滴らせながら言った。「想定を超す雨量が長時間降り続けば、貯留できなくなることも考えられます」

<後略>

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2010年8月30日 (月)

ハザードマップに関するコメント・岩手日報に掲載

8月21日付け岩手日報に,ハザードマップに関する当方のコメントが掲載されました.

多分スペースの都合でかなり省略されているのだと思いますが,ここで「作る際は地域の特徴を踏まえ、専門家の意見を参考にしてほしい」というのは,行政機関が作成したハザードマップ等をもとに,さらに細かな地域でのマップ作りやDIG等を行う際の留意点として言っているものです.

なお,岩手県では,「紙で印刷した土砂災害警戒区域を表示したハザードマップ」の作成は進んでいないようですが,土砂災害警戒区域に関する情報自体は県のwebで公開されています.

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土砂災害ハザードマップ 県内市町村作製進まず 「法対応」岩泉町のみ 警戒区域2000カ所 早急な対策必要

 全国で土砂災害が相次ぐ中、県内では土砂災害ハザードマップの作製が進んでいない。県によると、土砂災害防止法に基づき警戒区域を明記したマップを作製しているのは岩泉町だけ。県内には約1万4千カ所の土砂災害危険個所があり、警戒区域は約2千カ所に上る。7月には岩手町で山腹崩壊や土石流が発生し甚大な被害をもたらしており、早期の対策が求められている。

 県によると、県内の土砂災害危険個所(2008年3月時点)は、急傾斜地が6959カ所、土石流7198カ所、地滑り191カ所だった。

 県は土砂災害防止法に基づき警戒区域を指定。10年3月現在、急傾斜地1046カ所、土石流979カ所に上り、本年度に約2500カ所に達する見通しだ。同防止法は警戒区域指定を受けた市町村に、避難経路や避難場所を示したマップの作製を義務付けている。

 しかし、同防止法に対応したマップを作っているのは岩泉町小本地区だけ。盛岡市、岩手町など18市町は危険個所を盛り込んだマップは作製しているが、同防止法に対応していない。久慈市、葛巻町など15市町村はマップを作っていない。

 予算や人員不足で作製が進まないことや、警戒区域の指定が完了していないため対策が進まないことが要因とされる。

 7月には岩手町や葛巻町で集中豪雨により土石流が発生。02年には釜石市で土砂崩れによる死者が出ており、対策は急務だ。

 県では既存の防災マップに追加したり、県の基礎データを活用し、土砂災害警戒情報を盛り込んだマップ作りを呼び掛けている。

 県砂防災害課の八重樫弘明特命課長は「本年度内には優先度の高い場所の警戒区域の指定がほぼ完了する。これを機に各市町村へマップ作製を強く働きかけたい」と話す。

 静岡大防災総合センターの牛山素行准教授は「ハザードマップなどで危険な場所の情報を整理することが大切。作る際は地域の特徴を踏まえ、専門家の意見を参考にしてほしい」と助言する。

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2010年8月29日 (日)

東海豪雨から10年・静岡新聞にコメント掲載

まもなく,いわゆる「東海豪雨」(2010/9/11~12)から10年が経過します.私自身の豪雨災害研究の土台となった現象の一つでもあり,時代の流れを感じます.

2000年9月東海豪雨 研究関連情報
http://disaster-i.net/disaster/20000911/

10年の節目ということもあってか,中京圏のメディアからいくつか取材を受けました.まずは8月25日付け静岡新聞の記事を紹介します.

「大規模なが豪雨災害」とはそもそもなにか,ということはかなり不明瞭で,現在私自身の定義について論文化すべく整理中ですが,浸水家屋数を目安とするとすれば「東海豪雨」をはじめ大規模事例が愛知,岐阜,静岡に集中していることは示唆的です.これら地域で大規模な豪雨災害が起こることは全く奇異なことではなく,今後も十分ありうることだと考えています.

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東海豪雨10年 水防体制、本県にも警鐘-当時の担当者「同様の雨起こり得る」

 愛知県西部を中心に記録的な大雨を降らせ、2万7000棟以上が床上浸水した東海豪雨から9月で10年。当時、名古屋市で対応に当たっていた本県の防災関係者は「静岡でも十分に起こり得た災害。人ごとではない」と口をそろえ、台風・長雨シーズンを前に水防体制の再確認を求めている。

 2000年9月11日、沖縄付近を進んでいた台風14号から、本州上に停滞している秋雨前線に向かって暖かく湿った空気が流入し、志摩半島付近で積乱雲が次々と発生した。雲は発達しながら数珠つなぎになって愛知県西部を北上。名古屋市で翌12日までに、年間降水量の3分の1に相当する567ミリの雨を降らせた。

 当時、名古屋地方気象台予報課に勤務していた静岡地方気象台の熊田浩一防災気象官は「同様の雨が静岡で降っても不思議ではない」と指摘。(1)太平洋側で台風の影響を受けやすい(2)高気圧の外縁になりやすい(3)低地に市街地が密集している―などの地理的特徴を挙げ「台風からの風が同じ場所に入り続ければ雨が集中する。台風の位置を除けば、東海豪雨は七夕豪雨とよく似ていた」と警鐘を鳴らしている。

 東海豪雨からの10年間に、洪水予報をはじめとした情報整備が進んだ。コンピューター技術の発達で気象の実況を把握する解析力も向上したが「予報技術自体に劇的な進歩はなく、詳細な予報は今でも難しい」(熊田防災気象官)。浸水想定区域図などを活用した自衛策を求めている。

 静岡大防災総合センターの牛山素行准教授(災害情報学)によると、1970年以降、1県で2万棟以上の床上浸水があった水害は、七夕豪雨(74年、静岡)▽9・12水害(76年、岐阜)▽東海豪雨(2000年、愛知)―の3件。「県内が30年以上も大水害に遭っていないのは運が良かっただけだ。水害は危険個所が事前に分かりやすい災害。居住地の地域特性を知ることが備えの第一歩になる」と話している。
               ◇……………………◇
 【東海豪雨の被害】
 総務省消防庁のまとめによると、死者は愛知7人、静岡、岐阜、三重各1人の計10人。床上浸水は愛知2万6531棟など東海地方を中心に計2万7180棟に上った。JR東海道新幹線が駅間で立ち往生して全面不通になったほか、静岡市の梅ケ島温泉では土砂崩れによる道路寸断で行楽客が足止めされるなど各地に大きな影響が出た。

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2010年8月28日 (土)

可児豪雨に関する当方のコメントが毎日新聞に掲載

8月15日付け毎日新聞(中部朝刊)に,先月の岐阜県内での豪雨災害に関する当方のコメントが紹介されました.

私はこういった,行政機関に対する指図がましい言い方は好まないのですが,記事の都合上このような表現となっているのでしょう.可児の人的被害が発生した現場は,単にアンダーパスであると言うだけでなく,そのすぐ脇に川があるという位置関係上,ややリスクの高い箇所だったとは言えそうです.ただ,それはこのような結果になったから気になることであって,同様な現場は他にも多数あるでしょうから,特にこの地点で事前の対応に大きな問題があったとまでは言えないと思います.

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岐阜集中豪雨:発生1カ月 頓挫した堤防建設 可児市の高架下近く、15年前計画

 ◇県の用地取得進まず
 岐阜県東部を襲った集中豪雨から15日で1カ月。はんらんした可児川の水が流れ込み、1人が死亡し2人が行方不明になった可児市の高架下道路の近くでは、約15年前に同川の堤防建設が計画された。完成していれば被害を防げた可能性が高いが、県による用地取得が進まず、計画は頓挫した。その後、市の担当者の間で高架下道路の危険性が認識されることは無かった。【岡大介】
 県河川課によると、県は95~96年、可児市の要請で、今回はんらんした可児川沿いの土地約3600平方メートルを堤防建設用に取得した。建設に必要な土地の8割に相当するが、残りは地権者との交渉が進まなかった。
 県と市は、今回の現場付近は「100年に1度の大雨」(1日232ミリ)ではんらんすると予測していた。だが県は当時は可児川で、より雨量の少ない「50年に1度の大雨」に対応する堤防建設や川底を深くする工事を進めていた。はんらんの可能性が高く、住宅の多い上流の整備は5月に完了したが、高架下道路近くの土地取得交渉は中断したままだった。
 そして7月15日、可児市では午後5~11時に計270ミリと「100年に1度」の雨が降り、被害をもたらした。
 県河川課は「段階的に強い雨に備えて整備することは珍しくない。整備が追いつかない間は情報提供などソフト面で対応するしかない」と説明する。
 現場の高架下道路について、静岡大防災総合センターの牛山素行准教授は「川の近くにあると、あふれた水が一気に流れ込むため危険性が高まる。危険を伝える表示が必要だった」と指摘している。
 しかし可児市は、冠水への注意を促す標識を設置していなかった。市維持管理課は「川の水が流れ込む事態は全くの想定外。河川担当の土木課から危険を指摘されたこともない」と説明。一方、市土木課の担当者は「これまで水害がなかった地域。本当にはんらんするとは思っておらず、高架下道路の危険にも思い至らなかった」と話す。高架下道路を設置した市都市計画課は「河川が安全に整備されているという前提で道を造る。川があふれて水が道に流れ込むことは想定しようがない」と言う。
 市防災安全課は「認識が甘く、課をまたいだ連携も不足していた」と認めている。

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2010年8月27日 (金)

停電のためアリルタイム豪雨表示システムが停止

学内停電のため,リアルタイム豪雨表示システムは8月28日から29日の間,停止します.

http://disaster-i.net/rain/

本ブログや,当方のホームページdisaster-i.netは停止しません.メールの受信も通常通り行われます.

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2010年8月25日 (水)

陸前高田市で津波アンケート調査の報告会

本年2月28日に発生したチリ地震津波に関して,当研究室では静岡県危機管理部との共同調査として,岩手県・静岡県内の4地区で住民対象アンケート調査を実施しました.7月以降,調査対象地区において結果の報告会を順次実施しており,すでに静岡県湖西市,同松崎町出の報告会を終えました.

来る9月1日には,岩手県陸前高田市気仙町今泉地区において,下記の要領で報告会を実施することとなりました.関心をお持ちの方はご参集いただければ幸いです.

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平成22年2月28日チリ地震津波に関するアンケート調査報告会

●日時  平成22年9月1日(水) 午後7時から午後8時30分
●会場  気仙公民館(陸前高田市気仙町字町裏58)
●対象  どなたでも参加できます。

●内容
1.2010年2月28日のチリ地震津波に関するアンケート調査の結果報告(牛山准教授)
2.津波のとき、逃げねばならない理由(林准教授)
3.質疑応答

●話題提供者の紹介
・牛山素行:静岡大学防災総合センター副センター長,准教授.豪雨災害を中心として,全国各地の災害時の現地調査に取り組み,災害情報の伝達や避難行動などの研究調査を行っている.専門分野は自然災害科学・災害情報学.
・林能成:静岡大学防災総合センター准教授.伊豆半島東方沖などで発生する群発地震の研究や,即時地震警報システムの開発などに従事している.専門分野は地震学・地震防災.

●今回の津波調査に関する報告書等
2010年2月28日のチリ地震津波に関するアンケート 報告書
・4地区結果概要スライド
http://disaster-i.net/notes/20100710.pdf
・岩手県陸前高田市今泉地区報告書
http://disaster-i.net/notes/20100228imaizumi.pdf

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2010年8月12日 (木)

Twitterをはじめてみました

遅ればせながらですが,Twitterをはじめてみました.アカウントは@disaster_iです.-(ハイフン)が使えないので,_(アンダーバー)となっています.

Twitterの投稿内容はwebやブログに表示することが容易なので,さっそくやってみました.本ブログでは左側に,http://disaster-i.netのほうでは右側にTwitterの最新投稿内容が表示されます.ブログに投稿した場合,自動的にTwitterにも投げられます.

ブログについてもそうですが,私はネット上に「日常の出来事」を書き綴る気はありませんので,災害事象や研究に関するコメントをちゅうしんにツイートすることになると思います.資料的な情報はwebに,少しまとまった文章はブログに,さらに簡単なメモやお知らせ的な情報がTwitter,といった使い分けになるのかな,と感じています.もっとも,あまり使えなければ止めるでしょう.

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2010年8月11日 (水)

佐用町水害で「避難勧告の遅れ」に対する訴訟

2009年8月9日の兵庫県佐用町での豪雨災害から1年が経過しました.筆者がこの災害について調査した結果のとりまとめが,このたび自然災害学会誌の掲載されることが決定しました.印刷前の前刷り原稿(プレプリント)として,下記に公開します.

牛山素行・片田敏孝,2009年8月佐用豪雨災害の教訓と課題,自然災害科学,Vol.29,No.2,(掲載決定原稿)
http://disaster-i.net/notes/2010JSNDS29-2_pre.pdf

昨日8月10日,この災害による遭難者の遺族らが,町に対して訴訟を起こしたそうです.

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防災専門家も注目、遺族が異例の提訴 佐用豪雨「避難勧告遅すぎ」 (8月11日 産経新聞)

 兵庫県佐用町で昨年8月、18人が死亡、2人が行方不明となった豪雨災害で、死者・行方不明者5人の遺族9人が10日、「町の避難勧告の遅れが原因で犠牲になった」として、町に総額約3億円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に起こした。原告側弁護団によると、災害時の避難勧告の在り方をめぐる訴訟は異例という。
<後略>
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「避難勧告の遅れ」に対する批判は,近年の豪雨災害後に言われる批判の定番のような印象が持たれますが,そのことが訴訟にまで発展したことは確かに異例で,私は類例の記憶がありません.

地震災害における避難勧告は,事前に出して人的被害を軽減することは事実上できませんが,発令する場合は起こってからの発令が基本で,迷う局面がそもそもありません.津波災害における避難勧告は,トリガーとなる現象(地震)が極めて明瞭であることから,これも判断に迷うことがほとんど無く,かつ事前に出せる可能性も高く,人的被害軽減に直結します.一方,豪雨災害における避難勧告は,次善に出して人的被害の軽減をはかれる可能性はありますが,その判断が地震や津波とは比較にならないほど難しいものになっています.

これまでに筆者が行った調査からも,避難勧告はたとえ空振りとなっても良いので早めに出して欲しいという意見が明らかに多数派となっていますが,避難勧告を出す時間をなるべく遅く,なるべく狭く,というニーズも強固に存在し,その結果の一つとして,災害が起こるたびに「避難勧告の遅れ」がいわれる状況が続いています.

災害進行中に,人的被害軽減のために行政機関が住民に対して行えることは,事実上避難勧告を出すことくらいしかないのが現状で,その方法だけで対応することは難しい面も多々あります.しかし,避難勧告について考え直さなければ行けない時期であることは確かで,今後の動向が注目されます.

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2010年8月10日 (火)

毎日新聞で報道されていました

7月28日付け毎日新聞(東京朝刊)で,当方のコメントが紹介されていました.群馬大の片田先生のコメントとのミックスですが,片田先生の指摘には当方も同意です.

「地域での災害対応=避難」ではありませんし,「災害への備え=避難訓練」でもありません.地震災害を想定した避難訓練,というのがよくある「地域防災」のパターンですが,地震災害において避難行動で一体どのような人的被害が軽減できるというのでしょうか.冷静に考えてみたいところです.

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備える:近年の災害の教訓/1 避難所に向かうことの危険

 09年8月、兵庫県佐用町で死者・行方不明者20人を出す豪雨災害があった。同町では台風9号などの影響で、1時間雨量89ミリ、3時間雨量186・5ミリを記録。この災害の特徴は、避難途中に犠牲となった人たちがいたことだ。同町本郷の町営幕山住宅の住民が、避難場所に指定されていた小学校に徒歩で向かう途中、8人が死亡し、1人が行方不明となった。増水した用水路にのみ込まれたとみられている。
 佐用町によると、この地域は普段から防災意識が高かった。災害後、現地で聞き取り調査をした牛山素行・静岡大准教授(災害情報学)は「自発的に避難しようとするなど、住民の行動は従来の考え方であれば模範的といえる」と話す。
 では、なぜ被害に遭ったのか。災害時の避難に詳しい群馬大大学院の片田敏孝教授(災害社会工学)は「豪雨災害の場合、全員が一律に避難所に向かうことが最適な行動とはいえないということだ」と話す。住居の場所や構造、土地の起伏によって、取るべき行動は変わるためだ。「佐用町でも、途中で引き返して助かったケースがあると聞いている。現状を把握して、避難しないことを含め、最適な行動は何かを考える必要がある」という。
 浸水した地域でも、流速が遅ければ家屋倒壊の恐れは小さく、2階への避難で被害は避けられるケースがある。災害を受けて佐用町が設置した災害検証委員会がまとめた報告書でも、家の2階など高いところに避難する「垂直避難」に言及している。同町の久保正彦・復興企画室長は「行政が全員を避難誘導することは物理的に無理。住んでいる地域をよく知り、危険を判断できるような訓練をしなければいけない」と話す。
 片田教授は「過去は年間1000人規模だった災害による犠牲者が、行政主体の取り組みで100人以下になった。しかし、これをゼロにするのは行政主体では無理。個人の判断力向上が不可欠だ」と指摘している。【飯田和樹】

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2010年8月 9日 (月)

名古屋,豊橋で講演

事後登録ですが,8月6日に名古屋市で,8月7日に豊橋市で、一般向け講演を行ってきました.名古屋市の講演では,200~300人くらい入れそうなホールがほぼ満席で,会場の熱気に驚きました.豊橋市の方は,防災士講座の一部を担当させていただいたもので,少人数でしたが,熱心に受講をいただきました.

  • 「近年の豪雨災害と災害情報をめぐる課題」,防災講演会 東海豪雨から10年、水害に備えて,愛知県・名古屋市・名古屋地方気象台,名古屋市,2010/8/6
  • 「近年の豪雨災害と災害情報をめぐる課題」,とよはし防災リーダー養成講座,豊橋市消防本部,愛知県豊橋市,2010/8/7

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2010年8月 2日 (月)

毎日新聞で報道されていました

7/22付け毎日新聞(中部朝刊)に,当方のコメントが掲載されました.

避難勧告対象者が何人で,実際に避難した人がわずかに何人,といった議論はよく行われるところです.避難勧告対象者を最小限にすべき,という考え方も強く,「本当に危険な場所をピンポイントで予測せよ」という「ニーズ」も極めて強くあります.しかし,それは極めて困難なことです.その一方で,あまり現実的でない「全員避難勧告」という状況になることも珍しくありません.

結局,平時にどの程度議論しておけるかにかかっているように思います.災害に対する「備え」を声高に言う人たちがいますが,「備え」とは避難袋の用意や「避難訓練」のことではない(だけではない,と言いたいところですが,最近はもうもっと強く言うべきだと考え始めました)と思います.避難袋で人的被害は軽減できません.「地震を想定した避難訓練」で,一体どんな種類の外力の,どんな形態の犠牲者を救うことができるというのでしょうか.持てる情報を最大限生かして考えることを放棄しては,「防災」はできません.

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岐阜集中豪雨:発生1週間 被害の拡大、なぜ防げず

 <検証>
 岐阜県東部を15日に襲った集中豪雨から、22日で1週間となる。短時間に降った記録的な大雨により、同県可児市と八百津町で計4人が死亡し、2人が行方不明になるなど、地域に深い傷を残した。被害は本当に避けられなかったのか。被害の背景と次の被害を防ぐための課題を探った。【岡大介、石山絵歩、三上剛輝】

<中略>

 ◇避難住民わずか139人
 ■八百津
 土砂崩れで民家が倒壊し、家族3人が犠牲となった八百津町は約1万1000人に避難勧告、130人に避難指示を出した。各世帯に配布してある防災無線で告げたが、実際に避難所に避難したのはわずか139人で、実効性に課題を残した。
 「あの雷と大雨の中、誰も外に出ようとは思わない」。勧告を受けながら避難しなかった土砂崩れ現場近くの女性(72)はこう言う。町は15日午後8時15分ごろから勧告を出し始めたが、当時既に1時間54ミリの雨が降っていた。消防団が避難所まで誘導したのは勧告より強い指示を出した世帯に限られた。
 町には県が土砂崩れの危険性などを指摘した「急傾斜地崩壊危険個所」が86カ所もある。今回の土砂崩れ現場もその一つだ。避難の必要性は高かったが、多くの住民は動かなかった。以前から避難訓練のモデル事業に手を挙げる自治会も少ない。町の防災担当者は「防災意識を高めてもらうことが課題」と話す。
 牛山素行・静岡大防災総合センター准教授は「避難勧告に実効性を持たせるには、日ごろから行政と住民が協力し、地域にどのような危険があり、災害時にどう行動すべきか理解を深める必要がある。ただし避難しない方が安全な場合もあり得るので応用性のある計画を立ててほしい」と指摘する。

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