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2010年8月11日 (水)

佐用町水害で「避難勧告の遅れ」に対する訴訟

2009年8月9日の兵庫県佐用町での豪雨災害から1年が経過しました.筆者がこの災害について調査した結果のとりまとめが,このたび自然災害学会誌の掲載されることが決定しました.印刷前の前刷り原稿(プレプリント)として,下記に公開します.

牛山素行・片田敏孝,2009年8月佐用豪雨災害の教訓と課題,自然災害科学,Vol.29,No.2,(掲載決定原稿)
http://disaster-i.net/notes/2010JSNDS29-2_pre.pdf

昨日8月10日,この災害による遭難者の遺族らが,町に対して訴訟を起こしたそうです.

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防災専門家も注目、遺族が異例の提訴 佐用豪雨「避難勧告遅すぎ」 (8月11日 産経新聞)

 兵庫県佐用町で昨年8月、18人が死亡、2人が行方不明となった豪雨災害で、死者・行方不明者5人の遺族9人が10日、「町の避難勧告の遅れが原因で犠牲になった」として、町に総額約3億円の損害賠償を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に起こした。原告側弁護団によると、災害時の避難勧告の在り方をめぐる訴訟は異例という。
<後略>
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「避難勧告の遅れ」に対する批判は,近年の豪雨災害後に言われる批判の定番のような印象が持たれますが,そのことが訴訟にまで発展したことは確かに異例で,私は類例の記憶がありません.

地震災害における避難勧告は,事前に出して人的被害を軽減することは事実上できませんが,発令する場合は起こってからの発令が基本で,迷う局面がそもそもありません.津波災害における避難勧告は,トリガーとなる現象(地震)が極めて明瞭であることから,これも判断に迷うことがほとんど無く,かつ事前に出せる可能性も高く,人的被害軽減に直結します.一方,豪雨災害における避難勧告は,次善に出して人的被害の軽減をはかれる可能性はありますが,その判断が地震や津波とは比較にならないほど難しいものになっています.

これまでに筆者が行った調査からも,避難勧告はたとえ空振りとなっても良いので早めに出して欲しいという意見が明らかに多数派となっていますが,避難勧告を出す時間をなるべく遅く,なるべく狭く,というニーズも強固に存在し,その結果の一つとして,災害が起こるたびに「避難勧告の遅れ」がいわれる状況が続いています.

災害進行中に,人的被害軽減のために行政機関が住民に対して行えることは,事実上避難勧告を出すことくらいしかないのが現状で,その方法だけで対応することは難しい面も多々あります.しかし,避難勧告について考え直さなければ行けない時期であることは確かで,今後の動向が注目されます.

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