« 防災フェロー応募状況 静岡新聞で報道 | トップページ | 2月19日に静岡で霧島山(新燃岳)火山活動現地調査報告会 »

2011年2月12日 (土)

防災フェロー講座は唯一最善の防災人材育成ではありません

2月9日付け静岡新聞「時評」欄に,防災フェローに関する記事を寄稿しました.本ブログ等では何度か記している防災フェロー事業の概要と,予想外の応募者多数を受けての筆者の考えを示しています.現時点での,防災フェロー事業に関する紹介文になりそうです.

記事中にも挙げた,「防災業務の従事者などに対象を限定していること,災害時の対応ノウハウなどは講座内容として扱わないこと,自然科学・社会科学的な基礎知識に関する講義が主内容であること」については,違和感を覚える方がいること,ご異論があることを聞いています.記事でも書いたように,私はこの「カリキュラム」が地域防災力を高めるための唯一最善のものであるとは考えていません.違和感を感じられる方にこの講座の存在や,講座のポリシーを押しつける意図もありません.

防災というのは,学問としても,あるいは方法論としても確立されているものではありませんから,そもそも「これが正解,イヤあれが正解」という議論をしてもあまり意味がありません.むしろ,一つの方向にだけ向かっていったり,特定の種類の「研修」だけに収斂していくことの方が,多様な姿を見せる自然災害という現象に対しては不利になると思います.試行錯誤を重ね,いろいろな「防災人材育成」が用意されるべきです.我々が今始めようとしているのは,その様々な「試行」の一つにすぎません.

--------------------------
ふじのくに防災フェロー養成講座-人材育て波及効果期待

 静岡大学防災総合センターでは,文部科学省の科学技術振興調整費による地域再生人材創出拠点の形成事業「災害科学的基礎を持った防災実務者の養成」(ふじのくに防災フェロー養成講座)を,静岡県と連携して昨年秋から開始した.数ヶ月の準備期間を経て,1月に受講者を募集,現在選考作業を行っている.

 この講座では,災害科学に関する講義・実習を22科目用意し(最低10科目以上の受講が必要),このほか個別指導形式による修了研修が課せられ,なんらかの研究テーマについてまとめ,その成果を学会などの場で発表することが求められる.この講座の目標は,災害発生後の「危機管理ノウハウ」にとどまらず,災害の事前予防を目指し,地域の災害特性を理解し,災害に関わる科学的情報を読み解ける実践的応用力を身につけた人材を育成することにある.このため,講義・実習は,講演会のように講師の話を聞いていれば良いというものではなく,計算や作図など,数値や物理的・質的データを用いた作業を必ず伴うものになっている.また,災害発生時の対応についてのテクニック,ノウハウといった講義はほぼ皆無で,防災に関わる自然科学,社会科学的な基礎知識が主な内容となる.

 この講座には,「ふじのくに静岡県防災士」をはじめとした防災関連の何らかの資格などを有している人で,かつ,行政機関・企業・学校等で防災に関わる業務に従事している人が応募資格を有し,応募者の資格や希望するテーマを講師陣が指導可能かどうかなどの観点から受講者を選考する.10名程度を定員として募集したところ,静岡県内を中心に県外も含め53名もの応募をいただいた.魅力的な人材が多く,なるべく受講生を受け入れたいところだが,我々が対応できる人数には限りがあり,苦しい選考作業が続いている.

 防災業務の従事者などに対象を限定していること,災害時の対応ノウハウなどは講座内容として扱わないこと,自然科学・社会科学的な基礎知識に関する講義が主内容であることなどは,「防災人材育成プログラム」として違和感を持つ方もいるかもしれない.無論,この講座が防災人材育成の標準ということではなく,多様な人材育成メニューの一つと考えている.我々はこういった内容の教育を通じて,科学的基礎を持った応用力を持った人材を育成することが,様々な姿を見せる自然災害への備えとして必要なことだと考えている.また,防災業務の従事者を育成ターゲットとすることで,直接育成する人数は少なくても,それらの人の業務に関わる多数の人に影響を与えることで,広い波及効果があることを期待している.この事業は始まったばかりである.試行錯誤を繰り返し,より効果的なものにしていきたいと考えている.
--------------------------

|

« 防災フェロー応募状況 静岡新聞で報道 | トップページ | 2月19日に静岡で霧島山(新燃岳)火山活動現地調査報告会 »