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2011年5月 2日 (月)

「津波の前必ず引き潮」 誤信が悲劇招く

「津波の前必ず引き潮」 誤信が悲劇招く 岩手・大槌 (河北新報)
http://bit.ly/lkPMAh

この話,私は直接聞いていませんが,非常にまずい話だと思います.ただ,私の過去の調査では,津波の前に潮が引く現象が必ずあると考えている人は多数派とまでは言えません.聞き方によってだいぶ回答傾向が変わります.聞き方の難しい設問になります.

2003年5月26日「三陸南地震」時の住民と防災情報
PDF→ http://goo.gl/KYw6k の4ページ.
「大きな津波が来るときは必ず海の水位が下がる」が正しいと思う人は6~8割.

岩手県陸前高田市気仙町地区における防災意識に関する調査
PDF→ http://goo.gl/QQqEC 15ページ.
「海の水が引かなければ津波は来ない」が正しいと思う人は3割

2010年2月28日のチリ地震津波に関するアンケート
概要PDF→ http://goo.gl/pRTAh 5ページ.
「津波が来るときは前兆として海面の低下が必ず起こる」が正しいと思う人が7割前後.

「津波が来るときは海面低下が起こる」ならば正しくないとまでは言えません.しかし,「津波が来るときは海面低下が必ず起こる」ならば正しいと言えません.「必ず」を回答者が読み取れるかどうかでこの質問の結果の読み方は代わってしまいます.聞き方を悩んだ設問です.

「海の水が引かなければ津波は来ない」ならば正しい,正しくないがはっきりします.この設問でいくつか聞いておくべきだったと後悔しています.

結局,「海面低下が起きたら津波が来る」と思っている人は,三陸でも静岡でも多数派と考えられますが,「海面低下が起きなければ津波は来ない」と考えている人が多数派か少数派かについては私の手持ち資料ではよくわかりません.

つまり,河北新報の記事にある 「『津波が来る前には必ず潮が引く』。過去に津波を経験した三陸沿岸の住民の多くは、そう信じていた。」という指摘について,「【必ず】潮が引く」と思っていた人が「多く」とまでは言えないのではないかと思います.

津波防災教育の教材として有名な「稲むらの火」があります.印象的で優れた作品なのですが,「津波が来るときは潮が引く」という「正しいが,正しくないこともある」知識を刷り込んでしまう危険性を私は以前から危惧しています.

RT @HayakawaYukio: @disaster_i あれ、ひき波からはじまったんじゃなかったの?@kuri_kitchen さんの聞き取りでは、いままでにないほど引いた、だから逃げた、って聞いた。

@HayakawaYukio @kuri_kitchen 引き波があった,という話は陸前高田で私も聞いています.記事中の今村さんのコメントにあるように,引き波が見えにくい場所というのもあったのでは.

気象庁「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第6報) http://goo.gl/Wijxv あたりに載ってる潮位記録で見ると,宮古,釜石,大船渡ではまず明確な引き波があって,その後に大きく押しに転じています.

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「津波の前必ず引き潮」 誤信が悲劇招く 岩手・大槌
河北新報 5月1日(日)6時13分配信

 「津波が来る前には必ず潮が引く」。過去に津波を経験した三陸沿岸の住民の多くは、そう信じていた。岩手県大槌町では東日本大震災で、引き潮がなかったように見えたため、潮が引いてから逃げようとした住民を急襲した津波がのみ込んだという。津波の前兆を信じていたことが、1600人を超える死者・行方不明者を出した惨劇の一因にもなった。

 3月11日午後3時すぎ、大槌町中心部の高台に逃げた住民は、不可解な海の様子に首をかしげた。大津波警報は出されていたが、海面は港の岸壁と同じ高さのまま。潮が動く気配がなかった。
 「潮が引かない。本当に津波が来るのか」。そんな声が出始めた。
 大槌町中心部は、大槌川と小鎚川に挟まれた平地に広がる。津波の通り道となる二つの川の間に開けた町の海抜は10メートル以下。津波には弱い一方で、山が近くに迫り、すぐ避難できる高台は多い。
 高台にいた住民らの話では、海面に変化が見えない状態は20分前後、続いたという。JR山田線の高架橋に避難した勝山敏広さん(50)は「避難先の高台から声が届く範囲に住む住民が『潮が引いたら叫んでくれ。すぐに逃げてくるから』と言い、自宅に戻った。貴重品を取るためだった」と証言する。
 複数の住民によると、高台を下る住民が目立ち始めたころ、港のすぐ沖の海面が大きく盛り上がった。勝山さんは信じられない現象に一瞬、言葉を失った。「津波だ」と叫んだ時には、既に濁流が町中心部に入り、自らの足元に迫った。
 「なぜ潮が引かないのに津波が来たのかと、海を恨んだ。自宅に戻った人を呼び戻す機会がなかった。引き潮があれば、多くの人が助かった」と勝山さんは嘆く。
 住民によると、津波は大槌川と小鎚川を上って川からあふれ、濁流が町中心部を覆った。少し遅れて、港中央部の海側から入った津波が防潮堤を破壊し、なだれ込んだ。
 町中心部の銀行の屋上から目撃した鈴木正人さん(73)は「2本の川と海の3方向から入った津波が鉄砲水のようになって住民と家屋をのみ込んだ。やがて合流し、巨大な渦を巻いた」と振り返る。
 東北大大学院災害制御研究センターの今村文彦教授は「引き潮がない津波もある。津波の前に必ず潮が引くという認識は正確ではない。親から聞いたり、自らが体験したりして誤信が定着していた」と指摘。
 近隣の山田湾などで潮が大きく引いたことから、大槌湾でも実際は潮が引いていた可能性が高いと分析し、「湾の水深や形状から潮の引きが小さくなったことに加え、港の地盤が地震で沈下し、潮が引いたようには見えにくかったのではないか」と推測している。
(中村洋介、遠藤正秀)

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