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2011年5月11日 (水)

岩手県陸前高田市・地区別犠牲者数の特徴

今回の津波による犠牲者はあまりに膨大で,そのことに圧倒されてしまいますが,なにか今後につながる傾向が見いだせないかと考えています.市町村別犠牲者の傾向については先に,

岩手,宮城,福島の犠牲者について
http://goo.gl/50GXB

としてまとめましたが,もう少し細かい検討をしてみました.

警察庁から,身元が確認された犠牲者の住所が,おおむね大字くらいの単位で公表されています.5/6現在の警察庁資料「今回の災害でお亡くなりになり身元が確認された方々の一覧表」に示された住所をもとに,地区別の死者数を集計しました.ここで示されているのは犠牲者自身の住所であり,遭難場所とは限らない事に注意が必要です.また,行方不明者については同様な資料はありませんので,集計対象外です.

岩手県陸前高田市における集計結果を分布図として示します.
http://twitpic.com/4w6t6a

本図に示した陸前高田市の身元が確認された死者数は1018名です.警察庁からは市町村別死者・行方不明者数の表は公表されていないので,5月10日現在の消防庁資料を見ると,陸前高田市の死者は1465名,行方不明者738名となっています.従って,この図に示されたのは同市の死者行方不明者の半数弱ということになります.

図を見ると,死者数は同市の中心部である高田町地区と,同地区と気仙川を挟んで隣接する気仙町地区に集中していることがわかります.なお,横田や矢作は作図上の都合でかなり上流部にグラフがプロットされていますが,浸水域はこれらグラフの位置よりももっと下流側までです.

高田町や気仙町は人口が比較的多い地区なので,死者数もそれに応じて多くなっていることが推察されますので,人口を考慮した集計が必要になります.

2005年国勢調査のデータと,国土地理院による今回の津波浸水区域に関するデータを用いて,津波浸水区域内の人口を地区別に集計しました.国土地理院による,陸前高田市付近の津波浸水範囲概況図は下記です.
http://twitpic.com/4w6yez

先に集計した地区別死者数を,津波浸水区域内人口で割った値を地区別死者率として図にしたのが下記です.
http://twitpic.com/4w6tgr

ここで用いている数値はいろいろな意味で限定的な値です.人口は居住者の数ですから,津波のその瞬間にそれぞれの場所に一人数とは乖離があります.また,浸水域のデータと人口のデータの分解能の差もあります.身元確認された犠牲者のみが対象なので,たとえば町の中心部では身元確認が先行しているとか,特定の地区の遭難者は海上に流された人が多くて発見されにくいなどといった状況があれば,傾向が変わってくる可能性はあります.

あくまでも限定的な検討結果ではありますが,あえて特徴を読めば,高田町は浸水域人口(6504人)と死者数が多いだけでなく,死者率も高くなっていると読み取れます.対照的に,広田町は浸水域人口(3578人)は気仙町(3572人)とほぼ同程度ですが,死者率は1%程度と,相対的に低くなっています.

一つの可能性として,

・いわゆる「町中」で犠牲者が生じやすかったのではないか

という特徴が挙げられそうです.これは,現地調査でいくつか話を聞いた中でも感じていたところで,小さな漁村的な所では迅速かつ積極的な避難が行われていたようなのに対して,市街地的なところではそうではなかったような話も聞きました.

広田町と高田町の対比で言えば,過去の津波経験の違いも挙げられそうです.広田は,明治三陸津波では518名の死者を生じていますが,高田では22名でした.昭和三陸津波でも広田は26名の死者がありますが,高田は3名でした.高田町では,むしろ1960年チリ津波の影響の方が大きかったのですが,このときは浸水被害が中心で,死者は高田で3名,広田で0名でした.

データそのものがかなり限定的であることに加え,このような「被害の生じ方」については「これが原因だ」と明確に断定することはそもそもできません.あくまでも一つの可能性として挙げさせていただきます.

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