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2011年6月17日 (金)

東日本大震災による死者・行方不明者 -過去の災害との比較-

 理科年表をもとに明治以降のわが国で発生した死者・行方不明者数の大きな自然災害を上位5位まで挙げると表 1となる.東日本大震災の死者・行方不明者数はまだ変動しつつあるが,明治三陸地震津波を超え,関東大震災に次ぐ規模となる可能性が高い.関東大震災,明治三陸津波ともに今から100年程度前の事象であり,現在とは各種社会インフラの整備状況が比較にならない時代である.このような災害に匹敵する規模の被害が生じたことになる.

表 1 明治以降の主な日本の自然災害
T1
 明治三陸地震津波は,東日本大震災と同様に三陸地方を襲った津波災害である.そこで,このときの人的被害と今回の被害の比較を試みた.明治三陸地震津波の際の人的被害については,山下(2008)に収録の表を用いた.同表では,明治三陸津波の際の町村ごとの被害が表記されているので,これを現行の行政区単位に集計し直した.明治三陸津波による被害は,宮城県北部から岩手県の沿岸で主として生じており,宮城県南部や福島県では人的被害はほぼ生じていない.明治三陸津波と東日本大震災による犠牲者を現市町村毎に集計,比較したのが図 11である.なお,明治三陸津波による被害は単に「死者」と表記されており,行方不明者が確認,収録されているのかどうか不明である.図 11に見るように,明治三陸津波による大きな被害を受けた範囲では,石巻市,女川町,陸前高田市,大槌町では東日本大震災による犠牲者の方が多いが,他の市町村では明治三陸津波による被害の方が大きい.
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図 11 明治三陸津波と東日本大震災による市町村別犠牲者

F12
図 12 明治三陸津波と東日本大震災による市町村別犠牲者の人口に対する比

 明治三陸津波の当時と現在では,人口そのものも大きく異なるので,犠牲者の実数だけで単純な比較はできない.そこで,被害を受けた地域の人口に対する犠牲者率について検討した.山下(2008)には「被害前人口」が収録されているので,これを分母として犠牲者率を求めた.山下(2008)に収録されているデータは,明治三陸津波当時の沿岸町村のみである.したがって,これらを現行の行政区の範囲毎に合算しても,現市町村の範囲よりはかなり狭くなる.そこで,比較対象は,3.4で求めた浸水域人口に対する犠牲者率を用いた.
 結果を図 12に示す.犠牲者率で見ても,石巻市,女川町,大槌町では東日本大震災に伴う値の方が高くなっているが,他の市町村では明治三陸津波の際の犠牲者率の方が高い.注目されるのは,犠牲者率が非常に高い市町村が目立つことで,11市町村では東日本大震災時の最も高い犠牲者率である大槌町の14.5%を超えている.東日本大震災については,浸水域内の人口のみを分母としていることから,単純に考えれば町村全体の人口を分母とした明治三陸津波より犠牲者率は高く出やすいはずであるが,それでも多くの市町村では明治三陸津波の方が犠牲者率が高くなった.東日本大震災のほうが,明治三陸津波に比べれば犠牲者が発生しにくい傾向があったと読み取れる.その背景については明確に示せないが,様々な意味での防災対策の効果があった可能性もある.

[参考文献]
山下文男:津波と防災 -三陸津波始末-,古今書院,2008.

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