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2011年7月30日 (土)

まとまった豪雨が異様に少ない年は2008-2010の3年間で終わった模様

近年短時間の豪雨が増えているとよく言われます.全国AMeDAS観測所で80mm/h以上が記録された回数の経年変化.最近30年間で前半より後半の方がやや多いように見えます.このこと自体は私も否定しません. http://twitpic.com/5y7gbj

長時間の降水量の例として,1日200mm以上が記録された回数をグラフにしたのがこれ.最近30年では,後半の方がやや多そうですが,1時間80mmのグラフよりは不明瞭.注目すべきは,最近3年間は「記録的に少ない」ことです. http://twitpic.com/5y7h6l

2008年以降の3年間は,まとまった雨が広範囲で降る事例が少ない状況が続いていました.意外かもしれませんが,「豪雨が少ない状態」が3年も続きました.しかし,それ以前の記録から見てそんな状態が長く続くとは思えません.このことを私は昨年くらいから至るところで主張していました.

2011年は,台風6号通過後の7/23の時点で日降水量200mm以上の回数は153.すでに2008-2010年の水準を超えています.この3日でさらに増えたことは間違いありません.まとまった豪雨が異様に少ない年は2008-2010の3年間で終わった模様です.
 

今回の豪雨は,降水量の記録(当該地域にとっての)からみて,2007年,あるいは2006年以来4,5年ぶりの激しい豪雨事例だったと思います.

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2004年新潟・福島豪雨との簡単な比較・降水量記録の面から

7/28-30の新潟,福島での豪雨は,その豪雨域が平成16年新潟・福島豪雨とよく似ていることから,気象台などから出される情報の中でも,またメディアでも両者が比較されて伝えられています.

私自身でもごく簡単にこの2事例を比較してみました.以下,平成16年新潟・福島豪雨を「2004年豪雨」,今回の事例を「2011年豪雨」と言います.

2004年豪雨で,気象庁AMeDAS観測所の中で最大の降水量の記録状況は私の集計だと下記です.

1時間降水量 58mm(新潟県栃尾)
24時間降水量 422mm(新潟県栃尾)
48時間降水量 431mm(新潟県栃尾)

2011年豪雨では今のところ下記.

1時間降水量 112mm(新潟県十日町)
24時間降水量 527mm(福島県只見)
48時間降水量 644mm(福島県只見)

短時間降水量,長時間降水量のいずれの面から見ても,2011年豪雨の方が規模が大きかったと言えます.

豪雨の範囲をざっくりと見るために,AMeDAS観測所で,観測開始以降の最大値(統計期間20年以上)を更新した観測所数を集計してみます.

2004年豪雨
1時間降水量 3箇所
24時間降水量 10箇所
48時間降水量 8箇所
2011年豪雨
1時間降水量 9箇所
24時間降水量 7箇所
48時間降水量 19箇所

2004年にそれなりの豪雨が発生しているので,「最大値更新」をこの地域ではしにくくなっている面もあり,やや比較しにくいのですが,それでも,2011年豪雨の方が広い範囲で豪雨があったと言っても良さそうです.

48時間降水量の更新箇所が24時間より多かったことも注目されます.2004年豪雨では,降水継続時間がほぼ24時間以内で,24時間降水量と48時間降水量がほとんど変わりませんでした.しかし今回は,24時間,48時間,ここでは示しませんが72時間がそれぞれかなり値が異なっており,豪雨の継続時間が長かったことが伺えます.

雨は,総量が多くてもゆっくりと降れば影響が小さくなる面もありますが,2011年豪雨についてはまだ被害の概要が出てきていませんので,このあたりは今のところ論評を避けます.

ただ,降水量の記録面から見ると,2011年豪雨は2004年豪雨よりも激しいものであったと言って良いだろうと私は考えます.2004年豪雨はこの地域としては最近30年間で最大規模,過去100年間でもそれに近い豪雨事例だったと考えますので,2011年豪雨も同様な評価ができると思います.

なお,これはあくまでも「新潟県中越地方付近の豪雨としては」の話です.全国AMeDAS観測所の1979年以降の全データで見れば,今回の只見の24時間527mmは上位30位に入りません.

気象庁以外の観測所では新潟県三条市の笠堀ダムで27日21時~30日12時の累加雨量959mmなどの記録もあります.気象庁AMeDASは,山の中など,雨のよく降りやすいところにあまり置かれていない傾向があったりするので直接比較はできませんが,72時間960mmとすると,AMeDAS全データ中では16位くらいになります.大きな記録であることは間違いありませんが,全国的に見ておよそ起こりえないような豪雨と言うほどではありません.

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2011年7月30日に最大値を更新したAMeDAS観測所

2011年7月30日に最大値を更新したAMeDAS観測所の一覧です.18時までの集計値ですが,大局的に影響ないと思います.統計期間20年以上.筆者の管理している自動システムによる独自集計ですので,気象庁の公表値と異なる場合があります.

1時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
54506 新潟 栃尾 32 7/30 5 67 58 2004/7/13
54621 新潟 大湯 30 7/30 3 66 56 1996/8/4
54666 新潟 川谷 26 7/30 8 53 45 2004/7/17
54761 新潟 塩沢 28 7/30 4 65 57 1988/8/26

2時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
54501 新潟 長岡 32 7/30 6 105 84 1995/8/10
54506 新潟 栃尾 32 7/30 6 99 97 2004/7/13
54566 新潟 入広瀬 32 7/30 3 85 85 1998/8/4
54621 新潟 大湯 30 7/30 3 94 83 1996/8/4
54666 新潟 川谷 26 7/30 9 93 86 2004/7/17
54761 新潟 塩沢 28 7/30 5 118 84 2001/8/4

24時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
36426 福島 只見 32 7/30 7 527 332 2004/7/13
54396 新潟 三条 32 7/30 6 245 208 2004/7/13
54406 新潟 村松 32 7/30 5 229 185 2000/7/16
54462 新潟 宮寄上 28 7/30 9 469 316 2004/7/13
54566 新潟 入広瀬 32 7/30 8 273 224 1998/8/4
54761 新潟 塩沢 28 7/30 16 343 143 1998/9/16

48時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
36426 福島 只見 32 7/30 5 644 369 2004/7/14
36536 福島 南郷 32 7/30 4 255 192 2004/7/18
36726 福島 舘岩 32 7/30 3 251 231 1982/9/12
42046 群馬 藤原 32 7/30 5 346 276 1983/7/27
42106 群馬 片品 32 7/30 5 215 202 1982/8/3
54296 新潟 新津 32 7/30 6 270 213 1995/8/4
54341 新潟 32 7/30 5 167 163 1995/8/3
54396 新潟 三条 32 7/30 5 292 251 1985/11/14
54406 新潟 村松 32 7/30 5 328 208 1995/8/3
54421 新潟 津川 32 7/30 3 338 262 1995/8/3
54462 新潟 宮寄上 28 7/30 12 564 331 2004/7/14
54566 新潟 入広瀬 32 7/30 6 414 234 2005/6/29
54616 新潟 小出 32 7/30 6 345 281 2004/7/18
54621 新潟 大湯 30 7/30 6 396 309 2005/6/29
54671 新潟 松代 32 7/30 13 286 271 2005/6/28
54761 新潟 塩沢 28 7/30 5 514 206 2004/7/18

72時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
36251 福島 西会津 32 7/30 5 329 236 1995/8/3
36426 福島 只見 32 7/30 5 696 378 2004/7/14
36536 福島 南郷 32 7/30 5 292 208 2004/7/19
36641 福島 田島 32 7/30 6 214 212 1981/8/23
36726 福島 舘岩 32 7/30 3 278 242 1982/9/13
42046 群馬 藤原 32 7/30 13 376 357 1983/7/28
42106 群馬 片品 32 7/30 15 235 214 1982/8/3
54296 新潟 新津 32 7/30 18 317 213 1995/8/4
54341 新潟 32 7/30 18 198 191 1985/11/14
54396 新潟 三条 32 7/30 18 348 323 2004/7/13
54406 新潟 村松 32 7/30 18 360 267 2004/7/13
54421 新潟 津川 32 7/30 5 362 305 2004/7/13
54462 新潟 宮寄上 28 7/30 18 623 376 2004/7/13
54566 新潟 入広瀬 32 7/30 16 469 272 2004/7/13
54616 新潟 小出 32 7/30 15 400 290 2004/7/19
54621 新潟 大湯 30 7/30 6 432 311 2005/6/30
54666 新潟 川谷 26 7/30 9 366 347 2005/6/28
54671 新潟 松代 32 7/30 17 333 273 2005/6/30
54761 新潟 塩沢 28 7/30 14 562 207 2004/7/18

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2011年7月29日に最大値を更新したAMeDAS観測所

2011年7月29日に最大値を更新したAMeDAS観測所の一覧です.統計期間20年以上.筆者の管理している自動システムによる独自集計ですので,気象庁の公表値と異なる場合があります.

1時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
36426 福島 只見 32 7/29 19 69 50 2004/7/13
54462 新潟 宮寄上 28 7/29 11 91 51 2000/8/9
54666 新潟 川谷 26 7/29 20 45 45 2004/7/17
54676 新潟 十日町 32 7/29 21 112 71 2001/8/4
54761 新潟 塩沢 28 7/29 22 64 57 1988/8/26

2時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
36426 福島 只見 32 7/29 19 116 93 1979/7/27
54086 新潟 村上 32 7/29 6 76 67 1989/8/24
54396 新潟 三条 32 7/29 12 88 81 2004/7/13
54462 新潟 宮寄上 28 7/29 11 134 86 2004/7/13
54676 新潟 十日町 32 7/29 21 143 107 2001/8/4
54761 新潟 塩沢 28 7/29 22 93 84 2001/8/4

24時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
36426 福島 只見 32 7/29 21 461 332 2004/7/13
54396 新潟 三条 32 7/29 20 219 208 2004/7/13
54421 新潟 津川 32 7/29 2 241 238 2004/7/13
54462 新潟 宮寄上 28 7/29 21 322 316 2004/7/13
54761 新潟 塩沢 28 7/29 1 188 143 1998/9/16

48時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
36251 福島 西会津 32 7/29 18 285 236 1995/8/3
36426 福島 只見 32 7/29 24 564 369 2004/7/14
36536 福島 南郷 32 7/29 23 231 192 2004/7/18
36726 福島 舘岩 32 7/29 24 242 231 1982/9/12
54191 新潟 下関 32 7/29 18 210 201 1997/6/28
54396 新潟 三条 32 7/29 22 276 251 1985/11/14
54406 新潟 村松 32 7/29 24 246 208 1995/8/3
54421 新潟 津川 32 7/29 23 323 262 1995/8/3
54462 新潟 宮寄上 28 7/29 24 397 331 2004/7/14
54566 新潟 入広瀬 32 7/29 24 292 234 2005/6/29
54676 新潟 十日町 32 7/29 21 372 220 2005/6/28
54761 新潟 塩沢 28 7/29 24 347 206 2004/7/18

72時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
35541 山形 高峰 32 7/29 12 195 173 1981/6/23
36251 福島 西会津 32 7/29 16 304 236 1995/8/3
36361 福島 若松 32 7/29 14 178 176 2004/7/14
36426 福島 只見 32 7/29 24 605 378 2004/7/14
36536 福島 南郷 32 7/29 20 271 208 2004/7/19
36716 福島 桧枝岐 32 7/29 19 249 245 1982/9/13
36726 福島 舘岩 32 7/29 24 266 242 1982/9/13
54236 新潟 松浜 6 7/29 24 225 150 2006/7/15
54296 新潟 新津 32 7/29 24 214 213 1995/8/4
54421 新潟 津川 32 7/29 24 332 305 2004/7/13
54462 新潟 宮寄上 28 7/29 24 405 376 2004/7/13
54566 新潟 入広瀬 32 7/29 24 342 272 2004/7/13
54676 新潟 十日町 32 7/29 21 375 227 2005/6/30
54761 新潟 塩沢 28 7/29 24 371 207 2004/7/18

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2011年7月28日に最大値を更新したAMeDAS観測所

2011年7月28日に最大値を更新したAMeDAS観測所の一覧です.統計期間20年以上.筆者の管理している自動システムによる独自集計ですので,気象庁の公表値と異なる場合があります.

1時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
32286 秋田 男鹿 32 7/28 19 56 40 1987/8/21
34171 宮城 米山 32 7/27 17 43 42 1979/7/12
54761 新潟 塩沢 28 7/28 19 57 57 1988/8/26

2時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
32286 秋田 男鹿 32 7/28 19 82 61 1983/9/8
32296 秋田 五城目 32 7/28 20 82 73 1998/8/7
34171 宮城 米山 32 7/27 17 73 58 2002/7/11

24時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
54761 新潟 塩沢 28 7/28 20 190 143 1998/9/16

48時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
54676 新潟 十日町 32 7/28 20 220 220 2005/6/28
54761 新潟 塩沢 28 7/28 20 228 206 2004/7/18

72時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 本日最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日

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2011年7月29日 (金)

7/29新潟県付近での豪雨

本日の新潟県付近での豪雨関係のメモ,とりあえずツイートをまとめました.

http://togetter.com/li/167893

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2011年7月21日 (木)

2011年7月19~20日に最大値を更新したAMeDAS観測所

2011年7月19~20日に1979年以降の最大値を更新したAMeDAS観測所(統計期間20年以上)

筆者の独自集計値.いろいろなエラーが含まれている可能性があります.目安まで.

1時間降水量極値更新観測所
期間中に更新観測所無し

2時間降水量極値更新観測所
期間中に更新観測所無し

24時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 今回最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
42366 群馬 館林 30 7/19 23 218 169 1986/8/5
46076 神奈川 丹沢湖 30 7/20 1 463 383 1998/8/30
50106 静岡 井川 30 7/20 4 536 468 2002/7/10
50241 静岡 川根本町 30 7/20 12 410 383 2000/9/12
53321 三重 宮川 30 7/20 2 798 668 1997/7/27
65226 和歌山 本宮 30 7/20 2 469 449 1997/7/27
65306 和歌山 西川 30 7/20 3 613 602 2001/8/21
71211 徳島 福原旭 30 7/20 2 646 607 2004/8/1
74151 高知 魚梁瀬 30 7/19 21 860 675 2004/8/1
74276 高知 田野 30 7/19 20 414 303 1998/5/17
74447 高知 宿毛 27 7/19 11 389 271 1989/8/27

72時間降水量極値更新観測所

地点番号 府県名 地点名 統計
年数
月日時 今回最大値
(mm)
過去最大値
(mm)
記録年月日
50231 静岡 越木平 30 7/20 24 574 530 1983/8/18
53321 三重 宮川 30 7/20 21 995 883 1992/8/20
64261 奈良 玉置山 30 7/20 13 569 520 1992/8/20
65201 和歌山 川辺 10 7/20 24 290 290 2003/8/9
65226 和歌山 本宮 30 7/20 13 648 540 1990/9/19
65256 和歌山 栗栖川 30 7/20 24 441 409 1997/7/28
65306 和歌山 西川 30 7/20 21 785 637 1998/9/24
74151 高知 魚梁瀬 30 7/20 15 1199 919 1990/9/19
74276 高知 田野 30 7/20 23 552 527 1990/9/19
74447 高知 宿毛 27 7/20 21 488 381 2005/9/6

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台風2011年6号関係のメモ

台風2011年6号に伴う,主に豪雨の記録と被害に関して私がツイートしたものを中心にまとめました.

http://togetter.com/li/164276

2011年6~7月も,結局例年並みな豪雨災害の発生する年となってしまいました.降水量の多さの割には,集中的な人的,物的被害が出なかったとは思いますが.今年も台風,豪雨はまだまだこれから.常に注意が必要です.

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2011年7月16日 (土)

今年の梅雨期の豪雨災害が少ないことは「普通のこと」ではない

今週初めに全国が梅雨明け.今年は梅雨期終わりの時点までで豪雨災害による犠牲者が1人も出ていません(見落としがあるいはあるかも知れませんが).喜ばしいことであることは間違いありませんが,「異常なこと,驚くべき事」であると言っていいと思います.

気象庁資料(2009,2010は消防庁)をもとに集計した,6~7月の豪雨による被害の経年変化.6~7月の梅雨期に死者・行方不明者が0だったのは1971年以降だと1994年だけです.以下,1992:1人,2001:2人. http://twitpic.com/5qc6qy

ちなみに,年間の被害の経年変化は http://t.co/LoNrW4J となります.豪雨による死者・行方不明者は最近40年以上にわたって一貫して減少傾向で,近年は年間100人以下の年が多くなっています.

無論,物的被害も含めて,全く被害が出ていないということはありません.今年5~7月の豪雨災害(住家の全壊または床上浸水が発生したもの)を対象に,新聞報道で発生場所,月日を特定し,各県webで公表されている被害を抽出してみました.

  • 秋田県「6/23からの大雨」.全壊1,床上148.7/11現在県資料.
  • 新潟県「6/23~26の大雨」.全壊0,床上3.6/27現在県資料.
  • 新潟県「7/4~5の大雨」.全壊0,床上1.7/11現在県資料.
  • 石川県「7/4の大雨」.全壊0,床上5.7/5現在県資料.
  • 鹿児島県「6/15~22の大雨」.全壊1,床上1.6/30現在県資料.
  • 熊本県「7/6大雨」.全壊0,床上9.7/8現在県資料.
  • 熊本県「6/18~21の大雨」.全壊0,床上1.6/22現在県資料.
  • 熊本県「6/11~12の梅雨前線豪雨」.全壊0,床上4.6/15現在県資料.
  • 神奈川県「6/30大雨」.全壊0,床上1.6/30現在県資料.
  • 岩手県「6/23大雨」.全壊0,床上2.6/25現在県資料.
  • 愛媛県「6/21大雨」.全壊0,床上2.6/21現在県資料.

仮にこれらを合計すると,住家の全壊2棟,床上浸水177棟.データソースが異なるので単純比較できませんが,住家被害も近年の中ではかなり少ないと言えます.

死者・行方不明者が生じなくても,まとまった規模の家屋被害が生ずれば消防庁から集計値が公表されます.今年はそういう事案がまだありません.その意味でも,梅雨期までの状況について,例年に比べれば,被害が少なかったと理解されます.

被害がゼロではありませんから,被害を受けた当事者にとっては「被害が少ない」という指摘は受け入れがたいと思います.あくまでも,全体の中での比較の話であり,現に生じた被害を軽視するつもりはありません.

今年の梅雨期に豪雨による犠牲者が出ていないのは,「よかったこと」ではありますが,「これがふつう,あたりまえなこと」ではありません.「大きな被害が生じていないことの異常さ」にはなかなか目が向けられてもらえないようですが,これは異常なことです.「梅雨明け」したからといって豪雨災害の脅威が去ったわけではありません.今年の豪雨災害の被害の少なさは異常です.これが普通のことだと考えず,十分に注意を払う必要を感じます.

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2011年7月15日 (金)

緊急警報放送がもっと活用されるといいのに

研究室に,緊急地震速報と,緊急警報放送の両方を受信できる受信機を置いてみました.

UNIDEN 地震津波警報機 EWR200 (amazon)

FM放送で送出される緊急地震速報と緊急警報放送を受信するタイプの受信機です.研究室はあまり電波事情が良くないので安定して受信できるかどうか心配でしたが,通常の音声放送も特に問題なく入り,正常受信していることを示すLEDも点灯してくれました.

最近,PCで緊急地震速報を受信するソフト

http://www.estrat.co.jp/download.html

を入れていたのですが,結構ハードな環境でマシンを使っているためか動作が不安定化する要因となり,削除してしまいました.いっそのことまったく別のシステムで受信しようと探していたところ,この受信機に当たりました.緊急地震速報だけを受信するならばいろいろな方法があるのですが,この受信機だと緊急警報放送も受信できるところに意義があります.

ご承知の方も多いと思いますが,緊急警報放送はテレビやラジオを自動的にONにして放送するシステムです.

http://goo.gl/vvsjq (wikipedia)

緊急地震速報とは別のシステムですが,津波警報が出たことを自動的に伝えてくれるという強みがあります.古くから整備されているシステムですが受信機が全く普及せず,なかなか活用されていないのが実情です.大手メーカではpanasonicが細々と売り続けていましたが,一時販売中止となり,その後復活したものの,率直に言ってわざわざ買いたくなる気が起こらないような大げさかつ高価なラジオです.

Panasonic FM緊急警報放送対応FM/AM2バンドラジオ RF-U350-S (amazon)

個人的には別の対応機を使っていたのですが,すでに製造・販売が停止になっています.EWR200という受信機があることを知ったのは最近です.FMの緊急地震速報の受信機があることは知っていたのですが,緊急警報放送にも対応しているものがあるとは知りませんでした.なかなかいい感じです.

緊急警報放送は全く普及していないのですが,受信機が安価に手に入るのであれば,高額な防災無線の各戸受信機を代替するシステムになり得ます.放送局の電波を利用するので,主に県単位の範囲での送出となるため市町村単位での避難勧告を伝えるような場面では,法的には緊急警報放送を利用可能ですが,使いにくい面はあると思います.しかし,狭い範囲を対象とするコミュニティFM局が緊急警報放送に対応すれば,完全に防災無線の代替になり得ます.

FMながおか http://goo.gl/SaEIw

では,緊急警報放送に対応し,受信機も含めてかなり積極的に他地域への展開も図っているようです.

緊急警報放送の大きな問題として,
「気軽に入手できる受信機が存在しない」
「県単位の放送になるので市町村で使いにくい」
があったわけですが,現在はこれらの問題がほぼ解決していることを知りました.今更ですが,緊急警報放送のような枯れたシステムこそ,災害時にも強いシステムだと思います.もっと活用されるといいのですが・・・

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2011年7月14日 (木)

牛山のコメント・研究成果が掲載された報道記事等(6/5~7/12)

  • 「地域特性踏まえ防災」 市議研修会で講演-静岡大・牛山准教授,静岡新聞,2011.06.10
  • 耐震性確保半数のみ 清水区三保の「津波避難ビル」,中日新聞,2011年6月12日
  • 「地域に即す対応必要」 牛山静岡大准教授が被災地報告-磐田市自主防連,静岡新聞,2011.06.12
  • 全680校 防災対策調査へ 県教委 想定外事態に備え=群馬,読売新聞,2011年6月19日
  • 時評=大震災時の津波被害-想定だけでは防げない,静岡新聞,2011年6月29日
  • 防災アンケート 自治体「避難で減災」 津波対策 ビル確保急ぐ(解説),読売新聞,2011年7月12日
  • 大震災から4ヶ月 行方不明5200人 1日1700人減った石巻,サンデー毎日,2011年7月24日号
  • 豪雨災害に備える雨量・水位情報についてのコメント,SBS静岡放送「SBSイブニングeye」,2011年7月5日
  • 松崎町津波防災施設についてのコメント,SBS静岡放送「SBSイブニングeye」,2011年7月11日

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2011年7月11日 (月)

災害情報としての「標高」の重要性と電子地図のあやふやさ

その場所の標高を看板などで示すことは防災上有効だと思われますが,標高情報の精度や,「色」が安心情報になってしまうといった問題がありそうです.

twitter上での議論ですので,togetterでまとめました.

http://togetter.com/li/159429

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2011年7月 9日 (土)

東日本大震災の死者・行方不明者数が明治三陸津波の犠牲者数を下回る

7月8日の時点で,東日本大震災の死者・行方不明者数が,明治三陸津波の犠牲者(21959人)を確実に下回りました.石巻市の行方不明者が1700名以上減ったことが主な原因です.河北新報→ http://t.co/EYNJacT

警察庁webを見ると,7/8現在の値として死者15539名,行方不明者5200名,計20739名と発表されました.約1ヶ月前の6/6は23670人でしたから,ここからみると約3千人減少です.死者数の増加より,行方不明者数の減少ペースが高く,死者・行方不明者数の合計値はまだ少しずつ減り続けています.少しでも多くの方の安否が早く判明することを祈ります.

無論,死者・行方不明者が2万人以上というのは現代日本の災害としてはとてつもない被害です.しかし,これだけの津波を受けて,明治三陸の犠牲者よりは少ないようだということに,東北沿岸部の長年の積み重ねの重さを感じます.

なお,明治三陸津波については,死者の合計値として21959人が挙げられていますが,行方不明者という統計値はありません.今でいう行方不明者が含まれていない可能性はありますが,明治三陸津波の犠牲者数については長年議論が重ねられてきた問題でもありますので,今でいう死者・行方不明者の合計値とそれほど大きな違いのある値ではないのではないかと現時点では考えています.

一方,発災から3ヶ月を経てなお数千人の方の行方が分からないままである事も衝撃的な事実です.7/8現在の公表値をもとにすれば,死者・行方不明者数のうち行方不明者の比率は25%となります.最近30年間の,1年あたりの日本の自然災害による死者・行方不明者に占める行方不明者の割合はほぼ1割未満です.それに比べると行方不明者率25%というのはかなり大きな値です.

1993年北海道南西沖地震津波による死者・行方不明者は230名(地震起因含む・関連死は当時は含まなかったと思う),うち行方不明者28名.行方不明者率12%.津波では不明者が出やすいのかも知れませんが,1983年日本海中部地震津波では死者104名(地震起因含む)で,行方不明者がいない模様.津波で不明者が出やすいとは一概には言えなさそうです.

遭難された方を「統計値」で見ることに,常に後ろめたさを感じています.しかし,統計値で見なければならない場面もあると思います.災害の場合,統計値の背後に人がいることは,常に忘れないようにしたいと思います.

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2011年7月 2日 (土)

大震災時の津波被害-想定だけでは防げない

6月29日付静岡新聞「時評」欄に,当方の下記寄稿が掲載されました.「想定外に備えよ」という声がよく聞かれますが,それ以前の問題があるように思っています.

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時評=大震災時の津波被害-想定だけでは防げない

 東日本大震災において,「想定外」という言葉がよく使われるが.津波や地震などの「現象を想定すること」と,「想定した現象に対応すること」は異なることに注意をしなければならない.
 岩手県田野畑村について,津波浸水想定区域図と,今回の津波の浸水範囲を見比べると,今回の浸水範囲は明らかに浸水想定区域の範囲内に収まっている.三陸地方では集落内の数百メートル毎に津波避難場所があることが一般的で,田野畑村も例外ではない.先日筆者は同村の全津波避難場所を踏査したが,津波の到達した避難場所は1箇所もなかった.すなわち,田野畑村では,津波の浸水範囲や,避難場所の設置位置は,想定の範囲内だったことになる.しかし,同村沿岸部の集落はいずれも津波により集落の原形をとどめないまでに破壊され,村内で36名が死亡・行方不明となっている.津波浸水想定区域という形で「現象」を想定しても,その現象を防ぎきるための防潮堤などのハード構造物が,予算事情などにより整備できない事は一般的に見られることである.同村のように,いわば想定の範囲内の津波であっても,甚大な被害を生じ,想定した現象に対応できなかったケースは,今回の被災地の中でもけっして珍しくはない.
 ところで,同村の死者・行方不明者36名は,村内の津波浸水区域内の人口の2.3%に相当する.たとえば阪神・淡路大震災時の神戸市の犠牲者は人口比で0.31%であり,近年の日本の災害による犠牲者の人口比として2.3%はかなり大きな値である.しかし,見方を変えれば,津波が襲われた地域に居住する人の9割以上は何らかの避難行動をとって助かったとも言える.同村の津波避難場所はいずれも十分に高いところに置かれており,かつほとんどの避難場所で,さらに高いところへ避難するための道がつけられているなど「想定外」の現象に対する備えも考慮されていたように思われる.これらの結果として,壊滅的な被害を生じた中で人的被害をある程度軽減できたのではないかと筆者は考えている.
 6月16日付本紙によれば,静岡県内で津波対策が必要な海岸線の延長279キロのうち10.6%が防潮堤や水門などが未整備だとのことである.避難など地域でもできるソフト面の対応にも課題は多そうだ.想定の現象に対しても我々は必ずしも万全な備えをしていないし,そもそも想定を行うだけで被害軽減が図られるわけでもない.「想定外」の事態に備えることは無論重要である.しかし,現在の「想定内」に対しても我々はまだやり残していることが多くあるのではなかろうか.

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