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2012年7月16日 (月)

「水田や用水路の見回り中に水路に転落するなどして死亡」について

農家が「ちょっと田んぼ見に行ってくる」理由 - NAVER まとめ http://matome.naver.jp/odai/2134207976414114901

これが話題になっているので,この件について少し考えるところを書いてみます.

災害時に「移動や避難の目的ではなく,自らの意志で危険な場所に接近したことにより遭難した者」を私は「能動的犠牲者」と定義しています.私の集計では,2004-2011年の豪雨災害犠牲者398人中132人(33.2%)が「能動的犠牲者」です. http://t.co/Qbb34wU1

「能動的犠牲者」132人のうち37人(28%)が「水田や用水路の見回り中に水路に転落するなどして死亡」というケースです.豪雨災害犠牲者全体に対しては9.3%.少なくない数です. http://t.co/o9i8Kzqc

「水田や用水路の見回り中に水路に転落するなどして死亡」を含め,「能動時犠牲者」は,(それぞれ事情があって)危険な状況であることは理解した上で行動し,遭難しているわけで,単に情報伝達すればよいというような簡単な方法では被害軽減できない,難しい遭難形態だと考えています.

豪雨災害時の人的被害に関する研究
http://goo.gl/ofOW8

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2012年7月15日 (日)

今回も土砂災害は起こるべき場所で起こっている

洪水も土砂災害も,「まさかこんなところで」起こることはまずありません.今回の九州北部豪雨でもその傾向は同様です.

報道等をもとに,7月12日の豪雨により,阿蘇市内で死者・行方不明者を伴う土砂災害が発生した箇所が12箇所特定できました.この位置をもとに,

熊本県土砂災害情報マップ
http://goo.gl/uzk7X

を参照して何らかの土砂災害関係の指定箇所になっているかどうかを確認しました.その結果12箇所中9箇所は,土砂災害警戒区域,同特別警戒区域,土石流危険区域,急傾斜地崩壊危険箇所のいずれかの指定地であると読み取れました.

これらの位置を,国土数値情報「土砂災害危険箇所」データとともに,GISソフトMANDARAで分布図として示すと下図のようになります.国土数値情報「土砂災害危険箇所」には土砂災害警戒区域,特別警戒区域は含まれていないので実際の指定区域はもっと広くなりますが,あくまでも目安として.
Aso
至る所に危険箇所があり,不思議な場所で土砂災害は起きない,ということがよく分かります.

図中「坂梨B」は,この場所 http://goo.gl/quef6 になります.住家数棟が流失し,死者5名を生じましたが,ここは指定箇所になっていませんでした.ただし,この地区付近は土砂災害警戒区域の設定作業がまだ行われていないようで,行われていれば警戒区域くらいにはなっていたのではないかなと思える地形でしたが,どうでしょう,もっと詳しい方.

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熊本県阿蘇市付近を現地踏査

昨日7月14日,豪雨に見舞われた熊本県阿蘇市付近を現地踏査してきました.前日夕方の天気予報ではくもりがちの日と出ていたので出かけたのですが,いざ着いてみるとかなりの豪雨.福岡県内ほどひどくはないものの,積極的に動くのは難しいと考えました.状況を見つつ,遠巻きに数カ所を踏査してきました.

阿蘇市一の宮町三野三閑.左手の斜面崩壊により住家が倒壊し,1名が死亡.左の家屋の裏の家屋で犠牲者が出た.発生時刻は明け方04~05時頃とのこと.
http://goo.gl/We3xk

三野付近は斜面崩壊だけでなく,浸水にも見舞われた.中央家屋のパイプ付近に浸水痕跡有り(床上浸水).
http://goo.gl/xEY8D

阿蘇市一の宮町坂梨福岡.土石流により住家が倒壊,流失し,4名が死亡.05時から06時頃とのこと
http://goo.gl/quef6

写真中央付近に犠牲者の出た住家があった模様.住家付近の勾配は3度程度
http://goo.gl/DELOe

菊池市旭志伊坂.矢護川の氾濫に伴う側岸浸食で3棟の基礎が露出する状況に.水位上昇を警戒した避難行動により犠牲者は出なかった
http://goo.gl/n1zcQ

様子を見つつの行動だったのであまり地点数は多くありませんが,他の写真も含めたアルバムはこちら.
http://goo.gl/OzbnV

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2012年7月14日 (土)

平成24年7月九州北部豪雨(仮称)の特徴 7/13午後現在

平成24年7月九州北部豪雨(かってつけた名前です)の特徴について,7月13日午後現在の資料から整理しました.

●降水量の特徴
気象庁の集計によれば,全国AMeDAS観測所のうち,統計期間20年以上で最大値を更新したのは、7/12は1時間降水量3カ所、3時間5カ所、24時間1箇所、72時間0箇所。7/13は16時現在で同1箇所、2箇所、0箇所、0箇所。

24時間降水量最大値を更新した阿蘇乙姫の記録は507.5mm。これはAMeDAS全地点の記録と比べると上位50位に満たない。阿蘇乙姫では1時間降水量最大値も更新しているが,その記録は108mm。これも全国の記録と比較すると特筆するようなものではない。

最大値更新観測所数、降水量の値そのもののいずれの点で見ても、今回の豪雨は局所的であり、かつ降水量の値自体も「当該地域としては非常に大きいが、全国的に見て非常に大きいとは言えない」規模。

●人的被害の特徴
人的被害は、7月13日14時現在の報道では,死者・行方不明者27人。直近だと、2011年台風12号(同97人)よりだいぶ少ないが、2009年台風9号(兵庫県佐用豪雨、同27人)、2009年7月中国・九州北部豪雨(同30人)と同等規模。最近5年間のうち,2010,2008,2007年はこの規模の災害はない。

現在、報道で確認できる範囲では、死者・行方不明者27人中24人が土砂災害による犠牲者。近年の豪雨災害では土砂災害の犠牲者が最も多い(1/3程度)が今回は,近年の事例としても土砂災害犠牲者が偏在した事例と言える。

九州北部豪雨による死者・行方不明者発生カ所のおおよその位置。拡大して信じないこと!!。位置は地名に付けただけで当てになりません。 http://goo.gl/maps/3Plc

一の宮町(現阿蘇市)の土砂災害、竹田市の洪水、白川流域のはん濫などは、1990年7月災害の極めて相似性が高いことは昨日も指摘した通り。昭和28年6月西日本水害(この時の方が降水量や被害は遙かに大きい)との共通点も見られそう。

●災害情報面の特徴
災害情報面では、「これまでに経験したことのない大雨」という気象情報が初運用されたことが何より大きな特徴。

これがその現物

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記録的な大雨に関する九州北部地方(山口県を含む)気象情報 第4号
 平成24年7月12日06時45分 福岡管区気象台発表

 熊本県の熊本地方と阿蘇地方、大分県の中部と西部を中心に、これまでに経験したことのないような大雨になっています。この地域の方は厳重に警戒してください。
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「経験したことのない大雨」についてはいろいろと意見が出てきそうな所。私自身で調べてみたいと思います。まとめきれるのか?、とも思いますが、自分が強い問題意識を持ったことは、自分の責任で調べないと。

なお、今回の「経験したことのない大雨」情報は、本当に「経験したことのない大雨」になった後で発表された。各地での土砂災害の発生時刻がよく分からないが、発生時刻には間に合わなかった可能性があるように思われる.

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2012年7月13日 (金)

記録的短時間大雨情報 7/12 熊本県分

7月12日に発表された記録的短時間大雨情報.熊本県分.阿蘇市,菊池市では記録的短時間大雨情報が実質的に同日3回.これは非常に穏やかではない状況.2010年奄美豪雨の時と同様.

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熊本県記録的短時間大雨情報 第1号平成24年7月12日02時55分 熊本地方気象台発表 2時30分熊本県で記録的短時間大雨 阿蘇市付近で約120ミリ 菊池市付近で約110ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第2号平成24年7月12日03時26分 熊本地方気象台発表 3時熊本県で記録的短時間大雨 大津町付近で約110ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第3号平成24年7月12日03時54分 熊本地方気象台発表 3時30分熊本県で記録的短時間大雨 菊陽町付近で約110ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第4号平成24年7月12日04時23分 熊本地方気象台発表 4時熊本県で記録的短時間大雨 菊池市付近で約110ミリ 阿蘇市付近で約110ミリ 合志市付近で約110ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第5号平成24年7月12日05時00分 熊本地方気象台発表 4時30分熊本県で記録的短時間大雨 大津町付近で約120ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第6号平成24年7月12日05時53分 熊本地方気象台発表 5時30分熊本県で記録的短時間大雨 菊池市付近で約110ミリ 阿蘇市付近で約110ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第7号 平成24年7月12日06時23分 熊本地方気象台発表 6時熊本県で記録的短時間大雨 阿蘇市付近で120ミリ以上 産山村付近で約120ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第8号 平成24年7月12日10時54分 熊本地方気象台発表  10時30分熊本県で記録的短時間大雨  水上村付近で約110ミリ

熊本県記録的短時間大雨情報 第9号  平成24年7月12日11時25分 熊本地方気象台発表  11時熊本県で記録的短時間大雨  球磨村付近で約120ミリ  芦北町付近で約110ミリ

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記録的な大雨に関する気象情報 熊本県

これが話題となった「これまでに経験したことのないような大雨」情報の原文.熊本地台関係のみ.

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記録的な大雨に関する熊本県気象情報 第6号

平成24年7月12日06時45分 熊本地方気象台発表

(見出し)
鹿本菊地、阿蘇地方を中心に、これまでに経験したことのないような大雨になっています。この地域の方は厳重に警戒してください。

(本文)
なし。

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記録的な大雨に関する熊本県気象情報 第10号

平成24年7月12日11時47分 熊本地方気象台発表

(見出し)
芦北地方、球磨地方を中心に、これまでに経験したことのないような大雨になっています。この地域の方は厳重に警戒してください。

(本文)
なし。

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7月11日の気象情報

災害前夜の7月11日夕方に熊本県に出された気象情報.残念ながら,この時点ではここまでの災害の切迫性は読み取れそうにない.

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大雨と落雷及び突風に関する熊本県気象情報 第2号

平成24年7月11日16時25分 熊本地方気象台発表

(見出し)
熊本県では、12日明け方から昼前にかけて局地的に雷を伴った非常に激しい雨が降り、大雨となるおそれがあります。土砂災害、浸水害、河川の増水やはん濫に警戒し、落雷や竜巻などの激しい突風に注意して下さい。

(本文)
 朝鮮半島にある梅雨前線が、12日にかけて九州北部地方を南下し、前線に向かって、暖かく湿った空気が流れ込み、活動が活発になる見込みです。
 このため、熊本県では、11日夜遅くから雷を伴った激しい雨が降り、12日明け方から昼前にかけて雷を伴った非常に激しい雨の降るおそれがあります。
 また、大気の状態が非常に不安定となるため、落雷や竜巻などの激しい突風のおそれがあります。

<雨の予想>
 1時間降水量(多い所)
  11日  40ミリ
  12日  70ミリ

 11日18時から12日18時までの24時間降水量(多い所)
  250ミリ

<防災事項>
 土砂災害、低地の浸水、河川の増水やはん濫に警戒して下さい。
 落雷や竜巻などの激しい突風に注意して下さい。発達した積乱雲の近づく兆しがある場合には、建物内に移動するなど、安全確保に努めて下さい。

 今後、気象台が発表する警報や注意報、竜巻注意情報、気象情報などに留意して下さい。

 次の「大雨と落雷及び突風に関する熊本県気象情報」は、12日06時30分頃発表の予定です。

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2012年7月10日 (火)

今後3週間以内に死者・行方不明者5名以上の豪雨災害が発生する確率は43%

梅雨末期はまとまった豪雨災害が発生する可能性がとても高くなります.今日からの7月中旬から下旬がまさにその「梅雨末期」.ざっくりとした集計ですが,数字で例示してみましょう.

気象庁資料により集計すると,1980~2009年の30年間で7月10~31日の間に,1府県あたり死者・行方不明者5名以上の災害が発生した年は13回(事例数は22),10名以上は10回(同12)でした.ここから単純に考えれば,7月中下旬に,犠牲者5名以上の災害が発生する経験的な確率は43%(13回/30年),10名以上ならば33%となります.

直近3年間でも,2011年新潟・福島豪雨(死者・行方不明者5名),2010年可児豪雨(同6名),2009年山口県防府豪雨(同17名)などがすべて7月中下旬.この時期にまとまった規模の豪雨災害が生じることは「当たり前」.何事もなければ「今年はよかった」というところでしょう.

巨大災害以外はもうどうでもいいかのような雰囲気を感じないでもないのですが,規模が中小規模でも,豪雨による災害は避けるための手立てもいろいろあるわけですから,要注意とは言い続けたいものです.

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2012年7月 9日 (月)

防災気象情報に関するアンケート(2012年 竜巻注意情報等)の素集計結果を公表

竜巻等突風予測情報改善検討会 第2回検討会 http://goo.gl/M03eM で報告した,当方が気象庁と共同で実施した,防災気象情報に関するアンケート(2012年 竜巻注意情報等)の素集計結果を,報告書形式で公開しました.この報告書は,牛山の責任により集計,分析したものです.

http://www.disaster-i.net/notes/120710report.pdf

主な結果は以下の通りです.

●背景・調査手法

  • 2012年5月6日に竜巻災害に見舞われた,茨城県つくば市など(エリアA),被災地近傍の水戸市・宇都宮市(エリアB),近年大きな竜巻災害に見舞われていないが竜巻災害の可能性がある地区(エリアC:新潟市,エリアD:高知市周辺)の在住者を対象に,竜巻に関係する起床時用法に対する認識などをアンケートで調査.
  • インターネットを通じた社会調査サービスであるgooリサーチを利用.2012年6月20日~25日に依頼メールを配信,計1162件の回答を得た.

●主な結果とコメント

  • 「竜巻注意情報」または「竜巻注意報」が発表されることを認知している回答者が5割.名称の理解が曖昧な回答者を含めれば8割前後
  • 実際に竜巻が発生するのが数十回に一度程度でも,6割以上が「竜巻注意情報は役に立つ」と回答.ただし強い支持は2割.
  • 7割以上の回答者が,竜巻注意情報の「解除」を出した方がよいと回答
  • 8割前後の回答者が,もっと細かな地域単位で発表した方がよいと回答
    • 竜巻注意情報に対する認識,「解除」に対する意見,地域単位の細分化については,地域による回答傾向の差は不明瞭
  • 竜巻ナウキャストを見るという回答者は3割程度.積極的回答は数%
    • 竜巻注意情報を覚知してナウキャストを見る,という反応は期待できない
  • 登録制防災メール利用意向は4割強.積極的回答は1割以下.
  • (エリアメールはごく限定的な情報のみを配信しているという現状を説明した上でも)6割前後の回答者が竜巻注意情報をエリアメールで配信した方がよいと回答.
    • ナウキャストの利用意向,登録制防災メールの利用意向,エリアメールでの竜巻注意情報配信については,地域による回答傾向の差は不明瞭
  • 竜巻注意情報が出た際の対応行動は「実行する可能性がある」まで含むと,挙げた対応行動に6~7割の回答者が対応意向を示した.
  • 対応行動はおおむね被災地の方が積極的(「確実に実行する」「実行する可能性がある」が多い)な傾向
    • すなわち,対応行動は被災経験から時間が経過すると消極的になる可能性がある
  • 「竜巻警報」には,竜巻注意情報よりも積極的な対応行動を取る傾向(「確実に実行する」「実行する可能性がある」が多い)が見られる
    • 今の竜巻注意情報を精度等を変えずに名称のみ「警報」に変更すると,過剰な対応を喚起する可能性がある

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2012年7月 5日 (木)

「高田松原地区震災復興祈念公園構想会議」に委員として参加させていただくに当たって

結局,報道では東海新報にしか出なかったようですが,一昨日7月3日に盛岡で開催された,「高田松原地区震災復興祈念公園構想会議」(事務局:岩手県・陸前高田市)に,委員として出席してきました.

盛岡市で高田松原整備に向け構想会議 震災復興祈念公園の実現を(東海新報)
http://goo.gl/YTrF8

いわゆる「国営公園」の誘致を考える会議です.陸前高田への「国営公園」誘致については,いろいろな意見があることも聞いていましたので,この会議に委員として参加することは少し迷うところもありました.「他に優先してやることがあるだろう」という意見ももっともなことだと思っています.

当然,国営公園誘致は,今の被災地にとって最優先の課題ではないと思います.しかし,いくつかある課題の一つであることは間違いではないと思います.被災した土地をどう使うかは,何かの形で考えていかなければならないところだと思います.その際には,「よそ者」としての視点も必要だろうと考え,この会議に参画させていただくことにしました.

陸前高田の海岸沿いの被災箇所をどうすることがよいのか,これは「これが絶対に正しい」という答えを出せるものではないと思います.災害,防災に関わる立場から,私なりに考えるところを発言していきたいと思っています.

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