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2012年9月 7日 (金)

竜巻などの災害情報-実態踏まえ改善議論を

一月遅れになってしまいましたが,8月9日付け静岡新聞「時評」欄に下記記事が掲載されました.空想的な「わかりやすい情報」を夢想するより前に,まずは実態把握が必要だと思っています.

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時評=竜巻などの災害情報-実態踏まえ改善議論を

 今年5月6日に,茨城県,栃木県で竜巻が発生し,死者1名,住家の全・半壊286棟などの被害を生じた.この災害を契機に気象庁は「竜巻等突風予測情報改善検討会」を開催し,7月27日に報告書がとりまとめられた.筆者はこの検討会に参加し,気象庁と共同で竜巻等の気象情報に関するアンケート調査を実施する機会を得た.

 

日本で竜巻が起こることは決して珍しい話ではない.気象庁の「竜巻から身を守る」というリーフレットを見ると,全国沿岸部を中心に発生記録があり,1991~2008年の間では年平均約13個が確認されている.ダウンバーストやガストフロントと呼ばれる激しい突風も含むと,年平均発生回数は数十回に及ぶ.人的被害を伴う竜巻も,2011年奄美大島(死者3名),2006年北海道(同9人),2006年宮崎県(同3人)など,希なことではない.しかしながらアンケート結果を見ると,5割以上の回答者が竜巻等の突風の1年あたり発生回数は10回以下との認識だった.竜巻がそれほど珍しい現象ではないことはあまりよく知られていないようである.

 

竜巻などが発生しやすい気象状況となった場合,気象庁から「竜巻注意情報」が発表される.5割の回答者がこのことを知っており(情報の名称が「竜巻注意報」だと思っていた者を含む),名称は認知していないが竜巻に関する情報が出ることを知っていた回答者まで含むと8割に上った.竜巻発生の可能性を告げる情報が出されること自体は,かなり多くの人が認知していた.竜巻注意情報は1県当たり1年間に10回程度発表されるが,そのうち実際に竜巻が発生するのは数年に1回程度で,身の回りで本当に竜巻が発生することは滅多にない.この程度の精度であることを説明した上でも,6割以上の回答者が「竜巻注意情報は自分にとって役に立つと思う」と回答し,「役に立つとは思わない」との回答は1割程度にとどまった.現在の竜巻注意情報は精度が低すぎて使えない,とまでは思われていないようだ.

 

近年は災害が起きる都度,「情報が分かりにくい」「役に立たない」といった「課題」が指摘され,「改善」ということで情報の名称や内容が変更されることがよくある.しかし,その「課題」の根拠が,実はごく限定的なエピソードであったということも珍しくない.災害情報の「改善」に当たっては,情報がどのように使われ,情報利用者がどのように認識しているのかといった,実態調査を踏まえた議論が重要である.

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