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2013年4月 2日 (火)

東日本大震災に伴う犠牲者の特徴・2013年2月修正

 少し必要があって,以前から数回改訂している,東日本大震災に伴う犠牲者の概要(牛山・横幕,2011,2012)を書き直しました.書き直した全体は別途報告書になる予定なので公表は後日としますが,その一部を紹介します.関連死に関するデータを考慮した結果です.
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 警察庁(2013a)による2013年2月13日現在の全国の死者は15,880人,行方不明者2,694人,計18,574人である.総務省消防庁からはしばらく発表がないが,直近の公表資料である2012年9月28日現在の値が,死者18,131人,行方不明者2,829人,計20,960人となっている(総務省消防庁,2012).ちなみに,消防庁の値と近い2012年9月26日現在の警察庁資料では,死者15,870人,行方不明者2,814人,計18,684人となっている.

 自然災害による人的被害について,一般に警察庁と消防庁の発表値には差異があり,これは発表日の相違によるものではない.警察庁の値は,各警察署・県警からの報告,消防庁の値は市町村・県からの報告をとりまとめたもので,資料収集者が異なることがこの差異の理由と思われる.毎年の自然災害による死者・行方不明者数が,警察庁資料と消防庁資料の間で異なっていることは従来から確認されており(牛山,1999),特に奇異なことではない.警察庁に問い合わせたところ,警察庁が公表している東日本大震災による死者数としては,「災害関連死」の統計はとっていない(ただし「災害関連死者」が重複計上されている可能性はあり)とのことだった.復興庁(2012)によると,2012年9月30日までに把握された災害関連死者は2,303人とのことである.警察庁の2012年9月26日現在の死者数と復興庁による災害関連死者数を合計すると18,173人で,消防庁による2012年9月28日現在の死者数18,131人に近い値となる.消防庁が公表している死者数は,災害関連死者が含まれた値と考えて良さそうである.すなわち,東日本大震災に伴う死者・行方不明者数は,2012年9月末時点で,地震・津波による直接的犠牲者が1万9千人弱,関連死を含むと約2万1千人程度と考えるのが妥当かと思われる.

 市町村別の傾向を検討する.警察庁(2013)では市町村別の値が得られないので,ここでは消防庁(2012)をもちいる.消防庁(2012)には関連死者が含まれていると考えられるため,消防庁(2012)の市町村別の死者数から,復興庁(2012)による市町村別関連死者数を差し引いた値を,市町村別直接死者数と推定することとした.全国の合計値は,消防庁(2012)の死者行方不明者数20,960人,復興庁(2012)の関連死者数2,303人の差18,657人となる.

 被害の集中した岩手,宮城,福島3県の人的被害は,海岸線を持つ市町村への集中が明瞭である.3県内で海岸線を持つ市町村は37存在するが,岩手県洋野町を除く36市町村で犠牲者が生じた.これら37市町村での死者・行方不明者(直接死)の合計は18,574人で,全国の99.6%となる.37市町村毎の死者・行方不明者を棒グラフにすると下図になる.最も被害が多かったのは宮城県石巻市の3,724人で,岩手県陸前高田市(1,778人)がこれに次ぎ,岩手県釜石市,大槌町,宮城県気仙沼市,東松島市で1000人を超える.

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図1 3県沿岸部の市町村別死者・行方不明者数(消防庁資料・直接死のみ)

 実数としての死者・行方不明者数は,人口の多い市町村で大きくなっている可能性もある.そこで,総務省統計局が,国土地理院公表の津波浸水範囲と2010年国勢調査を用いて公表した値を利用し,津波浸水域内に限定した人口に対する死者・行方不明者の比を計算した.なお,これは人口統計値(いわゆる夜間人口)を元にした集計なので,津波到達時に本当にその範囲にいた人の数とは乖離があると考えられる.
 最も高い値は宮城県女川町の10.70%で,以下,岩手県陸前高田市(10.69%),岩手県大槌町(10.68%)で10%を超えている.たとえば,阪神・淡路大震災時の神戸市では関連死含む死者でも4,573名であり,1990年国勢調査の人口が1,477,410名なので,犠牲者率は0.31%となる.豪雨災害の例では,2009年8月9日の兵庫県佐用町(20名)で見ると,犠牲者率は0.10%である.近年の日本の自然災害による犠牲者の発生率とは桁違いに大きな被害が生じたことになる.しかし,これだけ激甚な外力が加わったにもかかわらず,犠牲者は津波の影響を受けた範囲にいたと思われる人の1割前後と見ることもできる.つまり,9割前後の人は何らかの形で津波から逃れ,生き残った可能性が高い.少なくとも「津波到達範囲にいた大半の人が逃げ遅れて遭難した」という状況ではなかったと推定される.
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図2 3県沿岸部の市町村別津波浸水域人口に対する死者・行方不明者数の比(消防庁資料および統計局資料)

[参考文献]

  • 警察庁:今回の災害でお亡くなりになり身元が確認された方々の一覧表について,http://www.npa.go.jp/archive/keibi/biki/mimoto/identity.htm,2013.
  • 国土地理院:平成23年(2011年)東日本大震災に関する情報提供,http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/h23_tohoku.html,2011.
  • 総務省統計局:浸水範囲概況にかかる人口・世帯数(平成22年国勢調査人口速報集計による),http://www.stat.go.jp/info/shinsai/zuhyou/sinsui.xls,2011.
  • 総務省消防庁:平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第146報),http://www.fdma.go.jp/bn/higaihou/pdf/jishin/146.pdf,2012 .
  • 牛山素行:日本の各種災害統計(概要),地形,Vol.20,pp.419-425,1999.牛山素行・横幕早季:東日本大震災に伴う死者・行方不明者の特徴(速報),津波工学研究報告,No.28,pp.117-128,2011.
  • 牛山素行・横幕早季:特集 東日本大震災と災害情報 人的被害の特徴,災害情報,No.10,pp.7-13,2012.

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