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2013年8月 3日 (土)

「平成25年7月山口・島根豪雨」全体の雑感

一連のブログ,ツイート記事を書きにまとめています.

平成25年7月山口・島根豪雨災害に関するメモ
http://www.disaster-i.net/disaster/20130728/

●豪雨の割には少なかった人的被害
 今回の豪雨災害で発生した降水量記録,被害事象の面から見ると,今回新たに特別なことが起こったといった側面は認められない.おおむね毎年1回程度は発生してしまう豪雨災害事例,という印象が持たれる.
 降水量の多さの割には,人的被害が少ないという印象がもたれる.この要因は明確には特定できず,仮にかなり詳しく調べてもはっきりは出来ないと思われる.可能性としては,豪雨発生の時間帯が,日曜日の早朝~午前中であったということは挙げられそうである.多くの人が自宅にいる状況で,豪雨の中を無理に行動するという形態が生じにくく,結果的に人的被害につながりにくかった可能性がある.住家の全壊家屋数は,まだ不明瞭だが,床上浸水が全壊等に判定替えされる前の現段階,つまり明確な倒壊・流失規模(屋内にいて犠牲者が出うる規模)の被害は,20~30棟規模と思われる.この規模で,結果的に犠牲者数人というのは一般的もしくはやや少ない,という印象.
 比較的的確な行動(無理に移動しなかった,建物内で少しでも高所に移動した)が散見されたことが報じられている.これが少数事例かどうかは分からないが,こういった事例が注目され,報じられるようになっていることは,なにかが(良い方向に)変わってきている可能性を感じる.

●「昭和58年7月豪雨に匹敵する」という表現について
 今回の豪雨発生地付近での既往の大規模豪雨事例としては,昭和58年7月豪雨(浜田・三隅など)がある.今回,気象庁は,少なくとも本庁レベルでは「昭和58年7月豪雨に匹敵する」といった表現を,明文的には用いなかった.予報課長会見のやりとりのなかでは出てきたらしい.
 「過去の××に匹敵する」という表現は,豪雨,台風,津波などの情報を伝える時に用いることが,最近の気象庁では行われている.このやり方自体は,個人的には賛成である.ただし,「匹敵する」と言われた場合,どのような現象を受け手がイメージするかについては,要注意と考える.
 今回の場合,阿武町の住民の話として,「山陰豪雨(1983年)の時よりひどい」という言葉が報じられた(7/29毎日新聞).これは当たり前で,昭和58年7月豪雨の時阿武付近はそれほど大きな雨は降っていない.気象や防災の「専門家」は,空間規模を広く考えるので,「今回の豪雨域の近くでは昭和58年7月豪雨があったよな,あれくらいのことが起こりそう,起こってる」という考え方をしやすい.しかし,特定の場所に住み続けている人にとっての「昭和58年7月豪雨」の記憶は,「その地区における昭和58年7月豪雨の時の様子」であって,「一番ひどかった三隅・浜田付近の様子」を思い浮かべるとは限らない.その意味で,「匹敵豪雨」という情報は,諸刃の刃という面もありそうだ.

●「特別警報相当」という情報について
 「平成25年7月山口・島根豪雨」の一つの特徴は,2012年から始まった「記録的な大雨に関する気象情報」の2回目(3回目という話も聞くけど九州北部以外はどれ?)の適用例だったことが挙げられる.「記録的な大雨に関する気象情報」は8月30日から運用開始となる「大雨特別警報」に相当する情報.本事例は「特別警報」の周知,報道が進む中で発生した事例と位置づけられる.「大雨特別警報相当」という情報が効果を発揮したかどうかの評価は難しい.過渡期的状況下であることも考慮すると,プラス,マイナスのエピソードを記録しておくことが本事例においては重要ではなかろうか.
 本事例で「記録的な大雨に関する気象情報」が発表されたのは,7月28日11:18.津和野や徳佐ではすでに雨脚が弱まった状況下であり,これら地域では事前に危険を知らせる情報としては機能できなかったといっていい.一方,須佐では豪雨のピーク時に「記録的な大雨に関する気象情報」が発表されたことになる.事前に危険を告げるとまでは行かないが,今まさに極めて危険な状況であることを知らせる情報とはなり得たと思われる.
 特別警報は,事前に余裕を持って行動を取ってもらうためのきっかけとしての役割ばかりでなく,危険な状況下でまだ「様子を見ている」ひとに,「通常の状況ではない」ことをはっきりと告げる,「最後に背中を押す」役割も持っていると私は考えます.その機能はかろうじて果たせた可能性があるのでは.特別警報が,すでに一部で被害が発生してしまっている段階で出ることになるかもしれない,という趣旨はすでに説明されているところで,今回の「特別警報相当」が「手遅れで役に立たない情報」だったとまでは言えないと思う.こういう限界のある情報だという一つの例として認識しておくことは必要.

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