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2014年3月17日 (月)

国土地理院の避難所記号についての意見募集について思うこと

2014年3月14日より,国土地理院から避難所記号意見募集がはじまりました。

避難所等地図記号(案)に関する意見募集について
http://www.gsi.go.jp/kikaku/hinanjo20140314.html

4月に地図記号として決定する予定です。 https://pic.twitter.com/5k4H2J4sV0

私は,この記号についての検討に少しかかわらせていただきましたので,提案の背景について少し書いてみたいと思います.

この地理院地図用の避難所,緊急避難場所の記号は,すでに広く使われているJIS規格の広域避難場所,避難所(建物)の記号を,地形図の記号としても視認できるよう簡略化したものとして提案されました.「避難所等の地図表示に関する会合」→http://goo.gl/FouGTM

「避難所」「緊急避難場所」という区別がそもそもわからない,と言う意見もあるかと思いますが,これは改正された災害対策基本法 http://goo.gl/uvBTHN に従っているもので,地理院の独自の概念ではありません.

災害種別の記号を分けすぎてわかりにくい,と言う意見もありそうですが,これについても災対法で「現象ごとに緊急避難場所を指定する」ことが定められていることに従ったもので,地理院独自のアイデアではありません.

「避難所」「緊急避難場所」などの新たな概念については,「災害対策基本法等の一部を改正する法律」 http://goo.gl/Xoni3A を参照してください.これも意見がわかれるところでしょうが,今の法律ではこう決まっている,というのが現実です.

私の意見としては,せっかく広く普及したJIS記号の避難場所,避難所記号と異なる記号を新設することは「どの記号が正しいのか?」といった混乱につながることを懸念し,なるべくJIS記号に近いものがいいのではと考えます.このあたりは意見の分かれるところだと思います.

避難所のJIS記号について,JIS公式データベースがやたらとセキュリティが厳しくなって当方の環境では表示すらできないので,孫引きですが,練馬区「建物サインづくりマニュアル http://goo.gl/0er4Rq 」を挙げておきます. http://goo.gl/kMLVUw

避難所,避難場所の「記号」は,今回初めて提案されたものではありません.すでにJISで規格化された記号があり,ハザードマップや看板などで広く使われています.今回提案されたのは,あくまでも,地理院地図で使うための記号です.

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2014年3月11日 (火)

岩手日報による長期にわたる震災遺族調査の紹介

岩手日報社は,東日本大震災後,津波による犠牲者のご遺族を対象に,長期にわたる継続的な取材を続けています.その成果を,毎年異なる視点からの記事として3月11日前後に大きなスペースにまとめています.今年も3月9日付紙面に2面にわたる記事が掲載されました.web紙面に掲載されたのは,

「まだ受け止められない」 震災遺族調査、苦悩濃く
http://goo.gl/YZyyoq

のみでしたが,他にも多くの記事が盛り込まれています.私も少しかかわらせていただきましたが,災害に対する意識の変化についての記事もあります.同じ人に取材しているため,パネル調査ができることが,この取材記事の大きな特徴です.

以下に,web版には掲載されなかった記事の一部と,私のコメントを引用します.単純に「意識の低下」「風化」と言えるものではないことが浮かび上がっています.

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■防災への備えは? 「津波堤防越す」減少 前年調査から9.2ポイント低下

 震災から3年が経過する中、津波防災の意識に変化が見られた。今後数十年以内に「津波が堤防を越える」「被災前の自宅付近が浸水・流失」について「可能性は高い」と回答した人が2013年の調査に比べて減少した。防潮堤建設が進む中、津波の犠牲を出さないために、災害の記憶を風化させず次世代に伝える取り組みが求められている。

 意識の変化を比較するため、13年調査と同一の回答者335人に絞った場合、可能性が高いと考える人は「津波が堤防を越える」は前年比9・2ポイント減の56・6%。「被災前の自宅付近が浸水・流失」は同12・7ポイント減の49・8%だった。

 また、今回の津波浸水範囲内にいる時に津波の予想高さが伝えられた場合、「何メートルだったら高台に避難するか」との設問に対して「2メートル以下」を回答した人は57・1%と前年調査より6・6ポイント低下。それ以上の数値は3~5メートルが大半を占めた。

 明治と昭和の三陸大津波で大きな被害を受け、「万里の長城」とも形容された巨大防潮堤が整備された宮古市田老地区。東日本大震災当時、津波が防潮堤を越えることはないと判断し、自宅から避難しなかったり、逃げ遅れた人が相次ぎ、181人が死亡・行方不明となった。

 自宅から避難する際に夫を亡くした同市田老の鈴木ヨシ子さん(70)は「新しい防潮堤は前よりも高くなるため大丈夫だと思う」と以前の自宅付近が浸水する可能性は低いと受け止めつつ、「逃げなかったことを後悔している。津波の怖さを言い伝えることが大事だ」と強調する。

 防潮堤付近にいたとみられる夫を津波で失ったグリーンピア三陸みやこ仮設住宅に暮らす堀子朝子さん(74)は「新しく二重の防潮堤ができたとしても、あの津波を見たからには安全とは思えない。津波の可能性を忘れず、防潮堤を過信しないようにしている」と心境を語る。

 一方、今回の津波浸水範囲内にいた時に震度5強の地震が発生した場合の行動については、「すぐに避難する」と回答した人が60・8%を占め、前年調査から8・6ポイント増加。津波警報や避難勧告が発表された場合の行動も昨年と同様の傾向を示した。

 震災の教訓を伝えるため、宮古市は避難場所・避難所の存在を身近なものにする啓発活動など、ソフト面の対策にも力を入れる。下沢邦彦危機管理監は「子どものころから津波防災に対する意識付けをしていくことが肝心だ」と指摘。防災意識の変化を注視し、対策に反映することが欠かせない。

■意識の変化 追跡重要  
牛山 素行氏(静岡大防災総合センター副センター長) 
危険性、規模 緩和の可能性

 今回注目したのは、津波と防災に関する考え方に、この1年間で若干の変化がみられたことだ。2013年の前回調査と比較すると、問19の震災前の自宅付近の浸水流失可能性について、可能性の高さを指摘する回答が低下。可能性が高い側から可能性が低い側へ変化した人も21%いた。

 問24の高台避難と津波予想の関係もやや低下。2メートル以下から3メートル以上に変化した人が15%確認される。津波の危険性や警戒すべき津波規模の認識が昨年よりやや緩和された可能性がある。

 ただ、これで「警戒心が低下した」とは即断できない。例えば問20の震度5強程度の地震への避難行動は「すぐに避難する」が増加した。筆者はこれと同様の質問を10年チリ地震津波後に各地で調査している。当時の陸前高田市内では「すぐに避難する」が13%、静岡県内の沿岸部3市町では15~17%だった。

 震災前と比べると、「すぐに避難する」は依然として極めて多い。今回の変化は「警戒心低下」というより、津波に過敏に反応していた状況から、現実的な意識への変化と考えるべきかもしれない。

 過去のさまざまな大災害の被災地の経過を見れば、岩手の被災地も時間の経過とともに防災対策への関心が低下することは、ほぼ必然的と予想される。防潮堤建設や避難しやすい都市・道路建設など時間と予算がかかるハード対策は、予算措置などの諸条件が整っている今のうちに議論を尽くし、確実な整備計画の構築が重要。

 

避難計画、情報整備、教育など人の行動に関わるソフト対策は、災害直後の意識を基に社会的負担が大きすぎる方策を取ると、やがて実施されなくなってしまうことも考えられる。例えば「毎月11日に津波避難訓練をする」として、今ならば参加が期待できるかもしれないが、10年後にも実施可能か疑問である。長期にわたり継続可能な方法を編み出していくことも重要だ。

 あらゆる意識を震災直後のままに維持するのは現実的でなく、ある程度の「意識低下」は受け入れねばならない。ただ、「ここまで低下してはまずい」という局面もある。本取材は、同じ方の気持ちが時間とともに変化していく様子を明確に捉えることができる。今後も「意識の変化」を長期的・客観的に見つめ続けることが重要だ。

【調査方法】1月6日~2月26日の間、東日本大震災犠牲者の生きた証しを残す企画「忘れない」の取材に、これまで応じていただいた遺族約2400人のうち500人(男性246人、女性254人)を対象に、本社記者が直接面談224人と郵送276人で実施。年代別は20代13人、30代51人、40代124人、50代132人、60代116人、70代52人、80代12人。500人中、昨年の回答者は335人。

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