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2015年7月11日 (土)

災害のライフサイクル

 災害を時間軸に沿って整理してみると,「Hazardの発生」という時点を中心として,さまざまな態様を持っていることがわかる.このことを,「災害のライフサイクル」と呼ぶ場合がある(たとえば,京都大学防災研究所,2001).

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 図は,筆者の考える「災害のライフサイクル」である.事前→事中,事中→事後の境界は必ずしも明確ではない.ここでは,事前→事中の境界は,警報の発表など平常とは異なる状況が発生した時点,事中→事後の境界は,被災者自身やごく近くにいる人のみによる緊急避難的対応を終え,地域社会や被災地域外からの組織的対応が始まった時点と考えている.これらの境界,あるいはそれぞれの時点の時間的長さ,態様などは,Hazardの種類によって大きく異なる.
 
 ここで注意しなければならないことは,災害のライフサイクル中のそれぞれの時点において,必要とされる対策・技術が異なるということである.必要とされる技術が異なれば,それに携わる「専門家」も異なることになる.豪雨災害を例に考えてみよう.事中フェーズの初期に発せられる「大雨洪水警報」は,気象庁によって発表される.この時点では,「気象庁」という「専門機関」の必要度が非常に高い.水防施設の防護などの場面では,「水防団」の必要度も高くなる.その後,豪雨が実際に発生し,破堤により洪水が急速に広がったとする.このような,災害進行中の時点ではもはや「気象庁」の必要度はほとんどなく,個人や,末端の防災支援組織(消防団等)がもつ「状況対応能力」の必要度が高くなる.洪水の拡大が収まった後(事後フェーズの始まり)は,消防機関などの救援組織や,医療機関などの必要度が高まる.浸水が引いた後は,後片付けのボランティアなどの必要度が高まり,復興の推進には,都市計画の専門家の役割が重要になるだろう. 
 
 漠然と「防災を考え」ても,考えなければならないことがあまりに広範にわたり,挫折してしまう.まず,それぞれの地域において起こりうるHazardの種類を考え,それぞれのHazardによって引き起こされる災害のライフサイクルを描く.そのライフサイクルの中で,その地域ではどこが弱いかを点検してみる.こうすれば,その地域において重要なことを検出することができるかもしれない.その上で,「弱いところ」にかかわる専門家の協力を得て,「弱いところ」の改善を図る.このように,災害の構造を整理して考えることが,「防災を考える」第一歩となる.「防災を考える」ために,闇雲に「地震の専門家の話を聞く」,「避難訓練をする」などの行動を起こしても,それが本当にその地域の「防災を考える」ために重要なことかどうかはわからない.ステレオタイプ的な「防災」の概念にとらわれず,その地域が災害に見舞われる姿を,具体的にイメージすることがまず重要である.
 
牛山素行「豪雨の災害情報学」より抜粋
 
[参考文献]
京都大学防災研究所編:防災学ハンドブック,朝倉書店,724p.,2001.

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