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2016年6月27日 (月)

2016年6月20~21日に熊本県付近で発生した豪雨による人的被害の主な特徴(速報)

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 当研究室では,豪雨災害による人的被害(死者・行方不明者)の発生状況について,継続的な調査を行っている.2016年6月20~21日に熊本県付近で発生した豪雨にともなって生じた死者・行方不明者の発生状況について,主な特徴をとりまとめたので速報として報告する.本資料はあくまでも速報であり,今後大幅に変更となる可能性もある.

【要点】
  • 熊本県内で死者6人が生じた.2004~2014年の主要豪雨災害(2004-2014)の42事例の内,死者6人以上の事例は26事例あり,ほぼ毎年1回以上発生している被害規模である.
  • 原因外力別犠牲者数は洪水1人,土砂5人.2004-2014と比べ「土砂」が多い可能性がある.
  • 6人中5人が65歳以上であり,2004-2014と比べ高齢者に被害が偏在している可能性がある.
  • 6人中5人が「屋内」であり,2004-2014と比べ「屋内」が多い可能性がある.「土砂」では「屋内」が多い傾向があり,本事例では「土砂」が多いことから,特異な傾向ではないと思われる.
  • 「土砂」犠牲者5人全員が土砂災害危険箇所の「範囲内」と思われる.想定外の場所で犠牲者が生じている状況ではない.
1.はじめに
 当研究室では,近年発生した豪雨災害による死者・行方不明者(以下では「犠牲者」と略記する)について,行政資料,報道記事,現地調査などを元に,その発生日時,位置,原因外力,遭難状況などをとりまとめ,データベース化している(牛山,2015).ここでは,すでに整理している2004~2014年の主な豪雨災害42事例で生じた犠牲者712人(以下では「2004-2014」)と,2016年6月20~21日に熊本県付近で発生した豪雨で生じた犠牲者6人(以下「2016熊本」)を比較する.ただし,2016熊本の犠牲者数は2004-2014の犠牲者数と比べて値が小さいので,「比率」に関して厳密な議論はできない.また,2015年の調査対象死者・行方不明者は3事例11人あるが,現時点で未整理であるため2014年までの集計値を示している.
 
 2016熊本に関しては,行政機関の資料,新聞報道,テレビ映像,関連資料の収集を行うとともに,2016年6月21日に現地踏査を行った.
 
2.死者・行方不明者数の概要
 2016熊本では,熊本県内のみで死者6人(熊本市2人,宇土市2人,上天草市1人,甲佐町1人)が生じた(図1).2004-2014の主要風水害42事例の内,死者6人以上の事例は26事例あり,ほぼ毎年1回以上発生している被害規模である(図2).

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図1 死者・行方不明者発生場所

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図2 事例別死者・行方不明者数
 
3.原因外力別死者・行方不明者
 当研究室では,犠牲者をもたらした原因となった外力を「高波」,「強風」,「洪水」,「土砂」,「河川」,「その他」の6種に分類してある(表1).なお,「洪水」は河道外に溢れた水に起因する犠牲者で,「河川」は河道内の水に起因する犠牲者である.
 
 2016熊本では,洪水1人,土砂5人,その他は0人となった(図3).2004-2014では,洪水18.4%,河川,19.1%,土砂48.9%,強風 6.3%などとなっており,2016熊本では,土砂の犠牲者が多い可能性がある.
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図3 原因外力別犠牲者数
表1 原因外力の分類定義

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4.年代別死者・行方不明者
 65歳以上を高齢者と見なして分類すると,2004-2014では,65歳以上の犠牲者は385人(全犠牲者の54.1%),65歳未満324人(同45.5%)だった.参考までに2010年国勢調査では,65歳以上の人口は全人口の23.0%であり,犠牲者中の高齢者率は人口構成比に比べ極めて高い.
 
 2016熊本では,犠牲者6人中5人が65歳以上であり(図4),本事例においても高齢者に被害が偏在している可能性がある.

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図4 年代別犠牲者数
5.遭難場所別死者・行方不明者
 犠牲者の遭難場所を「屋内」(なんらかの建物の中)と,「屋外」(建物の外に滞在,歩行中,車等で移動中)に大別すると,2004-2014では「屋内」365人(51.3%)、「屋外」343人(48.2%)とほぼ同程度である.なお,図は示さないが原因外力別でみると,「土砂」のみは「屋内」が多い(86.5%)が,他の外力では「屋外」が多数派を構成しており,外力別に明瞭な相違がある.
 
 2016熊本では,犠牲者6人中5人が「屋内」であり,「屋内」犠牲者が多くなっている(図4).本事例では,土砂の犠牲者が多く,土砂では「屋内」での犠牲者の比率が高いことから,本事例に特異な傾向ではないと思われる.

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図5 遭難場所別犠牲者数

6.土砂災害犠牲者発生位置と危険箇所
 土砂災害については,ハザードマップ等で危険箇所が公表されている.「土砂」による犠牲者がこれらの危険箇所付近で発生しているかについて集計している(牛山,2016).集計対象は「土砂」の犠牲者の内,発生場所が世帯単位程度で特定できたものとし,危険箇所のデータとしては,国土数値情報の「土砂災害危険箇所」(土石流危険渓流,急傾斜地崩壊危険区域,地すべり防止区域)を用いている.土砂災害警戒区域ではない.これらいずれかの危険箇所内に位置していた場合を,土砂災害危険箇所の「範囲内」,いずれかの危険箇所から約30m以内にあった場合を「範囲近傍」,その他の場合を「範囲外」と判定した.
 
 2004-2014の「土砂」犠牲者の内,発生場所が世帯単位程度で特定できた243人の犠牲者については.「範囲内」174人,「範囲近傍」37人で,全体の87%が危険箇所内またはその近傍の範囲内で生じていた.
 2016熊本については,国土交通省の「重ねるハザードマップ」を参照し判定した.世帯単位で位置が特定できた「土砂」犠牲者5人の全員が土砂災害危険箇所の「範囲内」だったと思われる(図6).なお,「洪水」犠牲者1人も,洪水浸水想定区域の「範囲近傍」だった.2016熊本は,「平成28年熊本地震」により被害を受けた地域で生じた豪雨であり,地震の影響で土砂災害,洪水災害が生じやすくなっていた可能性があるが,犠牲者が発生した場所そのものは,「地震により新たに危険となった場所」ではなく,想定されている範囲内の場所だったと思われる.

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図6 犠牲者発生位置と土砂災害危険箇所の関係
7.備考
  • 本報告の数値等は速報値であり,今後の解析,再調査などにより,修正される場合がある.
  • 本報告に収録の内容や図表は,今後行われる学会の予稿集,刊行される論文などでそのまま用いられる場合があるが,災害調査という社会的な重要性を考慮し,論文等での刊行に先立ち公表しているものである.
参考文献
  • 総務省消防庁:6月20日からの梅雨前線に伴う大雨による被害状況等について(第7報),http://www.fdma.go.jp/bn/2016/detail/959.html,2016 (2016年6月23日参照).
  • 牛山素行:2004~2014年の豪雨災害による人的被害の原因分析,東北地域災害科学研究,No.51,pp.1-6,2015.
  • 牛山素行:発生場所から見た平成27年9月関東・東北豪雨災害による犠牲者の特徴,河川技術論文集,Vol.22,,pp.309-314,2016.

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