« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »

2016年9月19日 (月)

2016/9/11岩手県岩泉町現地踏査雑感

9月11日も岩泉町内の人的被害発生場所を中心に現地踏査.小本川下流部に,災害後初めて行った.数百m程度の谷底平野全体を洪水流が流れている印象.写真は袰野地区.水田だったところが河原のようになっている. pic.twitter.com/158Js8jHPT

乙茂地区のグループホーム付近遠景.現水面からホーム等のある低地面まで比高は4,5m程度.高水敷という印象.明治期の地形図では辺り一帯が川と表記されてたが,高水敷が水田化され,近年になって建物が建ってきたという所だろうか. pic.twitter.com/8Ssb3w8WHd

グループホームのすぐ上流側では,住宅地図に住家として表記されている建物が少なくとも3棟流失していた.ただしこれらに伴う人的被害は確認されていない. pic.twitter.com/HJA6qeaUMC

岩手県内の死者・行方不明者24人のうち,家屋流失に伴うものは2人,屋内で洪水にが10人(うちグループホーム9人),土砂2人,他は屋外で洪水に見舞われた可能性.当初の印象より屋外で洪水が多い(洪水ではこれがもともと多い).ただし現時点の判断,今後変わる可能性大いにあり.

|

2016/9/10岩手県岩泉町・葛巻町現地踏査雑感

9月10日,11日と,岩泉町の被災地を,人的被害発生場所を中心に現地踏査.道はだいぶ啓開されてきたが,大きく決壊したところなどはまだまだの印象.普段なら20分程度の所を3時間かけて迂回など.10日夕方には国道106号の宮古-盛岡間が通れるようになり,おかげで帰路は比較的スムースに盛岡に戻れた.

今回の岩手,北海道での人的被害はほとんどが洪水起因と考えていたが,岩泉町二升石で行方不明者が生じたと報じられている場所は,土砂災害(土石流)起因と考えてよいか.建物倒壊には至っていないが,土砂の堆積が見られる. pic.twitter.com/cYmZRBUXQq

二升石の現場は,支川と本川が合流する地点にあり,本川側に多量の土砂が堆積している.支川側は家屋付近で勾配が5~6度,本川側は1~2度.河道が満砂状態. pic.twitter.com/77v3vSCLxm

岩泉町内は洪水による被害が目立つが,土砂流出箇所も無数に見られる.土砂による人的被害が多数見られなかったのはたまたまの結果かもしれない.目先で目立った事象ばかりに眼を向けないよう注意が必要.

先週も行った安家地区を再訪.あらためて確認したところ,安家地区中心部付近では住宅地図上の住家が6棟完全に流失している.写真の箇所はそれぞれ住家2棟が流失した. pic.twitter.com/qAhVANPYBn

洪水による住家(小屋などでなく)の流失は,近年ではそれほど見られないので,一つの地区で6棟はまとまった被害.ただしこれに伴う人的被害は今のところ行方不明者1人.関心が持たれるが,今のところは(判断材料が乏しいので)何も言えない.

迂回したついでに,2006年10月の岩井県葛巻町での豪雨被災地の跡を少し見てみた.写真はだいたい同じ場所(本日の方が数十m下流側)で,下が当時,上が本日.ザ「河川改修」でしょうか. pic.twitter.com/vU4Lbps4gS

先の写真の川(元町川)も,今回河岸が大きく浸食されているところも見られました.写真の改修区間では大きな被害はないようでしたが,ざっと見た印象ですのであまり正確な話ではありません.

2006年の葛巻での災害では,変な角度から論文を書いた→「2006年10月6日から9日に北日本で発生した豪雨災害時に見られた行方不明者覚知の遅れ」自然災害科学,2007. goo.gl/TC46NG

|

2016年9月 9日 (金)

大雨時の避難行動-河川水位情報 活用を

9月8日付け静岡新聞「時評」欄に掲載された筆者の寄稿記事です.8月末の東北・北海道での豪雨災害発生より前に入稿した原稿ですが,原稿が出る前にまたしても洪水災害発生となってしまいました.岩手県岩泉町の災害に限っていえば,山間部で水位観測所の少ない地域でした.「やっぱり役に立たないじゃないか」ではなくて,行き届いていない地域は当然ありますが,役に立つ地域も多くあるわけですから,「使えない」と決めつけず,活用していくことが重要だと思っています.
 
------------------------
時評=大雨時の避難行動-河川水位情報 活用を
 
 昨年,関東から東北の広い範囲に被害をもたらした「平成27(2015)年9月関東・東北豪雨」からまもなく1年となる.この豪雨に伴って様々な災害が生じたが,茨城県常総市(鬼怒川)などでの堤防決壊,各地の河川での越水(堤防がある川で水が堤防からあふれだすこと)など,洪水による災害が目立つ事例であった.
 
 「水につかる(浸水)」現象は大別すると「洪水」と「内水氾濫」の2種類がある.洪水は主に堤防の決壊や河川の水が堤防を越えたりすることにより起こる浸水をさし,内水氾濫は大雨によって地表の水が増えて河川等への排水が追いつかなくなり,側溝などから水があふれ出す浸水を指す.
 
 ただし両者は明確に区別できない場合も少なくない.洪水,内水氾濫ともに浸水による家屋や農地などの被害があるが,洪水の場合は堤防決壊箇所付近での家屋の流失,道路走行中の車や人が流されるなど,より深刻な被害に繋がる場合がある.
 
 洪水は,自分がいる場所を見回している限りでは,「突然水がやってきた」と感じるかもしれない.しかし,何の前触れもなく突然洪水が発生することは考えにくい.大量の降雨→近隣の河川水位が上昇→越水や堤防決壊が発生→浸水開始,というケースがほとんどである.雨や,河川の水位に注意していれば,不意打ちは回避できる可能性がある.
 
 河川水位は重要な情報だが,大雨の中で川にちかづくことは危険で推奨できない.筆者の最近約10年間の調査では,「水田,用水路,川などの様子を見に」でかけて亡くなった人が,全犠牲者の11%にも達する.
 
 水位は主な川の多くの地点で観測されており,国土交通省「川の防災情報」,Yahoo!「天気・災害」,静岡県「サイポスレーダー」などのホームページや,SBSとNHKテレビのデータ放送で見ることができる.主な観測所については,注意する基準の水位が設定されており,たとえば「氾濫危険水位」を超えると,その観測所の周辺で水が川からあふれ出す可能性があることを意味する.
 
 まずはハザードマップで自宅や勤務先付近の浸水の可能性を確認し,大雨の時には河川の水位情報にも目を向けたい.「ここが浸水するとは思わなかった」「突然水がやってきた」といった声は少しでも減らしたい.

|

2016年9月 4日 (日)

2016/9/2岩手県岩泉町現地踏査雑感

2016年9月2日,岩手県北部の豪雨被災地を数時間現地踏査.通れない道が多くて移動にかなり手間取る状況.

久慈市役所付近の浸水痕跡.0.2m程度の歩道からの高さなので,道路面からの浸水深は約1m程度というところか. pic.twitter.com/hQtcgyyLLC

久慈-田野畑-安家-久慈,と移動したが,斜面崩壊は田野畑-安家-久慈の内陸部では至る所で見られ,沢からの土砂流出も多く,数十cm程度の礫を含む小規模な土石流と思われるものも散見された.これは岩泉町安家地区にて. pic.twitter.com/jHPKLYLSMi

洪水により家屋が流失し,人的被害が発生した可能性がある岩泉町安家地区.崩壊,土石流によるものではなく,洪水による家屋被害と思われる. pic.twitter.com/SRNM6JKDIV

岩泉町安家(元村)地区は,はば数百mほどの谷底平野の河川(安家川)沿いの集落.現河道沿の最低位面上に家屋が並び,これらが被害を受けている.その両側,比高1~2m程度の段丘面(かな)上の家屋の被害は軽微のように見えた. pic.twitter.com/EMGdYsoQT5

岩泉町安家地区の写真を1点追加.安家小中学校近くの「新橋」.欄干上を洪水流は超えているが,右手樹木への流下物付着状況から最大浸水深は欄干の少し上くらいか.付近では道路面から2.5m位の浸水も見られた. pic.twitter.com/7q95GCCXjJ

岩泉町安家の中心部(元村)付近での調査写真等を検討したところ,住家が少なくとも4世帯流失していた.洪水による家屋流失は近年の水害ではあまり多くなく,激しい状況だったことがうかがえる.一方4世帯流失で人的被害は行方不明者1名ということも関心が持たれるところ.

先日の現地踏査では,ごく限定的なところしか見ていないのでなんともいえないが,写真を示した安家地区のような,河道沿いの家屋等の損壊は小規模なものも含めれば散見された.見ていない地域にも同様な被害はあってもおかしくないと思う.

低地の洪水に比べ相対的に洪水の流速が早くなりやすい(建物等を破壊しやすい),山地河川の洪水が今回の岩泉の災害の特徴的な面の一つと思う.グループホームを巡る課題はそれで重要だが,そこだけに焦点が当てられると,山地河川の洪水という課題が見落とされることも心配される.

|

2016年台風10号に伴う岩手県岩泉町のグループホーム被災について雑感

2016年台風10号による豪雨に伴って発生した洪水により,岩手県岩泉町のグループホーム「楽ん楽ん」で,死者9人の人的被害が生じた.

いわゆる要支援者関連施設で風水害による犠牲者が出ることは繰り返し懸念されていたが,実際に犠牲者に繋がる実例はかなり稀で,私が調べている2004年以降では,2009年防府市で土砂災害により7人(後関連死3人追加認定)が唯一の例.洪水によるケースは確認できない.

要支援者関連施設について,私は十分知見を持たない.災害現象としての課題とは別に,こうした施設の運営上の課題もいろいろあると思われ,この点については言及できない.少なくとも「情報不足」「情報が届いていれば」というだけの問題ではないように思う.

グループホーム「楽ん楽ん」はこのあたりか.浸水想定区域図は整備されていないか.まあ,それはそうだろう. pic.twitter.com/7N1fbMZDWl

グループホーム「楽ん楽ん」の付近,国土調査の5万分の1地形分類図でみると「谷底平野及び氾濫平野」となっている.地形的に洪水及び洪水による災害が発生しない「想定外」な場所とはいえない.

なお,地形分類図は「あれは違う」とか言うご意見をいただく事が想定されるので提示しない.いつも思うことだけど,地形分類図を平時には「防災教育に有効」とか言っているくせに,いざ災害時に参照すると「その図は間違っている,定義がどうのこうの」とか言う人たちは,早く「間違ってない地形分類図」を全国整備することに尽力して欲しいと思う.

犠牲者の出たグループホームの付近は,量的にはそれほど激しい雨は降っていなかったけど,上流でたくさん降ってしまった.これが影響している可能性はあるかもしれない.あくまでもぼんやりした思いつきの話.

|

2016年台風10号 降水量資料

AMeDAS岩泉と,小本.いずれも2006年撮影.小本は小本川近くの低地.30日24時から欠測になっているが,洪水でやられたのかな. pic.twitter.com/kkTVnP5gCb

8/28~30のAMeDAS岩泉の降水量推移.29日から弱い雨が降り続け,30日夕方の4時間ほどに集中的に降り,20時過ぎには上がっている. pic.twitter.com/48J4GdE9k4

8/28~30のAMeDAS岩泉の降水量の過去の記録との比較.1時間~6時間降水量が1976年以降最大となっているが,24,48時間は大きくない.72時間が過去最大とほぼ同じ.主に短時間降水量が大きかった降り方. pic.twitter.com/zLrYOTHRyW

8/28~30のAMeDAS岩泉の降水量推移と過去の記録との比較.欠測となったのは24時以降なので本図は影響なし.小本は人的被害が発生した場所にちかいが,過去の記録を全く更新していない.それほど激しい雨は降っていないようだ. pic.twitter.com/zbt4vGjetg

グループホーム「楽ん楽ん」付近の小本川から下流約5kmほどのところに岩手県赤鹿水位観測所がある模様.30日夕方から水位が上がりはじめ,ピークは20時前後か. pic.twitter.com/LetTjIYJYq

犠牲者の出たグループホームの付近は,量的にはそれほど激しい雨は降っていなかったけど,上流でたくさん降ってしまった.これが影響している可能性はあるかもしれない.あくまでもぼんやりした思いつきの話.

8/27~31の北東北のアメダスデータによる1時間降水量と3時間降水量のそれぞれ最大値の分布.×が1976年以降最大値(統計期間10年以上)を更新した地点.1時間と3時間の両方を更新したのは岩泉のみ. pic.twitter.com/Ab5NQz4Qy3

8/31 24時の北東北のアメダスデータによる72時間降水量の分布.こちらは最大値更新観測所がない.主に短時間の降水量が大きかった事例であることが示唆される. pic.twitter.com/eNi4yLXIHG

8/27~31の道東の1,時間降水量最大値の分布.いずれも最大値更新地点がみられない.ただし解析雨量の積算値(近く気象庁から出てくるでしょう)を見ると日高山脈内に強い降雨域が見られ,AMeDASだけでは議論できない事例といえそう. pic.twitter.com/U5jqLdRXTQ

8/31 24時の道北の72時間降水量.こちらは「ぬかびら源泉郷」で最大値更新だが,日高山脈付近がよくわからないのは1,3時間降水量と同様.AMeDASだけで見ればの話で「山の中の雨量がわからない」事はありませんから,念のため. pic.twitter.com/g1r1HXcy1T

|

« 2016年8月 | トップページ | 2016年10月 »