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2018年5月14日 (月)

時評=土砂災害-「前兆」頼りすぎるな

5月9日付け静岡新聞「時評」欄に下記記事を寄稿しました.何回かツイートしている件を文章化したものです.添付の図は参考のためにつけたもので,紙面には掲載されていません.
 
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時評=土砂災害-「前兆」頼りすぎるな
 
 土砂災害が発生する際には,「前兆現象」があるので注意せよ,といった話をよく聞く.このこと自体は何も間違った話ではない.たとえば,平成29年5月12日付の政府広報オンライン「土砂災害のおそれのある区域は全国に約67万区域!」の中では,前兆現象として,「がけから水が湧き出る」「山鳴りがする」「急に川の水が濁り、流木が混ざり始める」「腐った土の匂いがする」「降雨が続くのに川の水位が下がる」など(一部抜粋)が挙げられている.しかし,こうした「前兆」に頼りすぎると,かえって危険である.
 
 これら現象を「前兆」のほとんどは「すでに山のどこかが壊れはじめている」ことに起因するものである.たとえば「腐った土の匂いがする」は,斜面が崩壊して攪拌された土砂の匂いが漂ってきたものであり,「急に川の水が濁り、流木が混ざり始める」は,崩壊した土砂が河川に流れ込み,土石流となって動き始めていることを示唆する.すなわちこれらは,「前兆」というよりは「発生」を示す現象と理解した方が適切である.
 
 土石流の速度は概ね時速20~40km前後,流れる距離は数百~数千m程度が目安である.仮に時速40kmとすれば1分間で667mを流下する.ということは,なんらかの「前兆」を覚知しても,残された時間は秒単位しか期待できない.「前兆」と聞くと,それを待って行動開始すれば良いかのような印象が持たれるが,実際に使える時間はほんのわずかである.「前兆」覚知後の行動開始では,手遅れとなることが懸念される.
 
 なお,「地すべり」と呼ばれる現象では,斜面全体がゆっくり(基本的には1日数cm程度)と動きはじめ,やがて大きく動くことがある.この場合は「地面がひび割れ・陥没」などの「前兆」が確認され,監視・対策がとられうる.2013年4月の浜松市天竜区春野町での地すべりもこのような経過をたどった.地すべりの場合「前兆」は有効と言っていい.しかし,大雨に起因するがけ崩れや土石流は,話が全く異なる.
 
 大雨に起因する土砂災害の「前兆」なら,基本に立ち返り「いつもと違う大雨」「ただならぬ増水」に目を向けて欲しい.これらの情報は,その場で目で見るばかりでなく,テレビやネットでも確認できる.

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