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2018年7月15日 (日)

平成30(2018)年7月豪雨 倉敷市真備地区での流失家屋の判読

 住家に激しい被害が生じ,そこに人が居れば犠牲者が発生する可能性は高い.犠牲者を生じうる家屋被害の情報としては,「全壊」などの統計値がまず考えられる.しかし現在の基準(内閣府:災害に係る住家の被害認定基準運用指針)では,1階天井まで浸水だけでも「全壊」と判定されることになっている.つまり,犠牲者の発生に直接結びつかない家屋被害が「全壊」に計上されることがあり得る.このため,完全に流失・倒壊した建物数に関する情報が必要となる.一方近年の災害時には,国土地理院が発災直後に被災地の空中写真を撮影し,オルソ化してWeb版の「地理院地図」で公開することが一般的で,災害前後の空中写真を比較判読することにより,流失家屋を読み取れる可能性がある.
 
 ここではまず,平成30年7月豪雨により激しい浸水被害を受けた,岡山県倉敷市真備地区を対象に,地理院地図から被災前後の空中写真判読を行った.用いたのは,被災後の空中写真は国土地理院撮影の「高梁川地区(7月9日撮影),同(7月11日撮影)」を,被災前の空中写真は,地理院地図収録の「全国最新写真(シームレス)」である後者の撮影時期は,2007年以降とされている.読み取り範囲は第3次メッシュを単位として,下記の範囲とした.

01

 流失家屋の判読は筆者自身の読図によるものである.被災前後の空中写真を比較し,下記の2種類に該当すると読み取れる家屋を流失家屋と見なした.
  • 「流失(完全)」:被災前に存在した建物が完全に流失または倒壊し建物としての形状が認められない
  • 「流失(変形)」:被災前に存在した建物で形状が明らかに変形しているまたは一部が流失している
 判読結果には個人差がありうる.また,空中写真での判読であり,現地で見れば変形していると分かるものでも,判読できていない場合もありうる.空中写真でも分かる程度の大きな被害を受けた家屋と考えてもよい.また,空中写真撮影後に撤去された家屋もありうるので,Googlemap,ストリートビュー,ゼンリン住宅地図も合わせて参考とした.
 判読対象家屋は,被災当時のゼンリン住宅地図において番地記載がある建物とした.従って,同一敷地内にある建物であっても番地記載の無い建物(物置,車庫などと考えられる)は対象外としている.
 判読結果が下記である.作図は埼玉大学谷研究室のGeocoding and Mappingによる.背景図は地理院地図である.緑色の■が流失家屋と判読された家屋の位置である.今回の判読範囲では,7箇所が判読された.

02

 比較のため,同様な方法で判読した,平成29(2017)年7月豪雨による,山地河川洪水で被害を受けた福岡県朝倉市の,赤谷川中下流域での判読結果を示す.地図の縮尺,範囲は真備地区とほぼ同じである.朝倉市内では,土砂災害による流失家屋も多かったが,この図の範囲内の多くは洪水(山地河川洪水)によるものと考えてよい.

03

 真備地区と赤谷川中下流を比較すると,後者の方が多くの流失家屋が生じている.真備地区の洪水は,平野部の破堤氾濫であり,洪水の形態がやや異なり,被害の出方に違いが出ていると言っていい.被害形態として類似している平成27(2015)年9月関東東北豪雨による茨城県常総市もいずれ判読したい.概略的に判読したところでは,おそらく朝倉市のケースよりかなり流失家屋は少なく,真備地区と同程度と思われる.
 
 流失家屋が少ないことは,被害が軽微であることを意味しない.ことに今回の真備地区では,2階軒先(5m程度)まで浸水した家屋が多く見られ,常総市での被害よりははるかに浸水の程度が激しい.家屋自体は残っても,家財に大きな被害が出ていることが予想され,決して軽微な被害ではない.さらに,深い浸水によると思われる人的被害もかなりの規模に上っている.
 
 また,平成30年7月豪雨全体では,特に土砂災害による大きな被害を受けた地域において,多数の流失家屋が生じている事は間違いない.本稿はあくまでも,真備地区の流失家屋の規模を読み取ることだけを目的としたものであり,平成30年7月豪雨による被害全体を矮小化する意図は全くない.
 
※本稿の一部は,2018年9月の日本自然災害学会で口頭発表予定の内容を転載したものです.

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