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2018年7月31日 (火)

平成30年7月豪雨被災地での特別警報に対する理解などの調査結果速報

 7月31日朝のNHK「おはよう日本」5,6,7時台に「西日本豪雨 特別警報の発表認識も避難は3%余」というタイトルで,当方の調査結果の一部が報じられました.

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 報じられた内容に関連する集計結果の一部を下記pdfとして公開します.報道では触れられなかったものとして,「特別警報の意味を適切に認知していた回答者は5割前後」,「普段より詳しく気象情報を確認したという回答者は7割前後」という結果を追加しています.

※更新版を公開しましたので,このファイル公開は停止します.

 回答者のうち,いわゆる「水平避難」を行った人が3%程度だったのは結果としては事実ですが,この調査では,回答者の居住場所は郵便番号程度までしか分からず,居住する建物の構造も明確には分からないため,この値が低いとは,一概にはなんとも言えないと考えています.予定変更や,気象情報確認など,どこに居ても実施しても良さそうな対応行動の方を注目すべきかと思っています.

 
 このほかにも,
  • 避難勧告等の意味に対する認識
  • 大雨特別警報を覚知したメディア
  • 居住地の洪水に対する危険度認知状況
  • 回答者居住地の大まかな洪水危険度の推定
などについての調査をしており,これらについては8月3日の速報会(http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/307-e426.html)などで紹介したいと思います.
 
※上記速報会で配布した資料を公開しました.下記記事から参照してください.
 
平成30年7月豪雨時の災害情報に関するアンケート(8/4加筆修正版)」について
 

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2018年7月27日 (金)

「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会(東京・日本気象協会)

静岡大学防災総合センター牛山研究室では,「平成30年7月豪雨」による災害に関し,一般財団法人日本気象協会と合同で現地調査を行いました.このたび,同協会において,調査速報会を開催することとなりましたので,ご案内します.
 
「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会
 
■日時 平成30年8月3日(金) 14:00~16:30 (開場13:30)
■場所 一般財団法人日本気象協会 第1・2会議室
 (東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60・55階)
■定員  先着50名程度
■参加費   無料
■内容
1.平成30年7月豪雨の特徴と被災地現地調査の報告(仮)
(日本気象協会  30分程度)
 
2.平成30年7月豪雨による人的被害の特徴(速報) (仮)
平成30年7月豪雨時の住民の防災情報利用・避難行動の調査(速報) (仮)
(静岡大学防災総合センター 牛山素行教授  60分程度)
 
■申込
下記の申込用紙(Wordファイル)の内容をご確認ください.準備の都合上、7月31日(火)までにお申し込みくださいとのことです.
なお,詳細未定ですが,8月9日(木)に,同様の速報会を静岡市内で予定しています.これについては,追ってご案内します.

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7月25-26日愛媛県内現地踏査雑感

 7月25日,愛媛県内を現地踏査.写真は大洲市森山地区で洪水による被害箇所.肱川に架かる橋が流失.付近に流失した住家は確認できないが,集落内の低いところでは2階床上まで浸水し,そのうち1軒の屋内で1人が死亡. 大洲市内の肱川沿いでは他に2人が死亡,1人が行方不明で,いずれも洪水によるものとみられる.ただし屋内での遭難は先の森山地区の1人のみで,他はいずれも車や徒歩で屋外移動中の遭難とみられる.

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 同じく7月25日の現地踏査から.宇和島市吉田町白浦.やや大きい斜面崩壊による家屋倒壊.付近で人的被害が発生とみられる.この地区を含む法花津(ほけつ)湾付近は,至る所で斜面崩壊が生じている印象.ただし,集落のほとんどが土砂災害で倒壊しているような状況ではない.家屋倒壊が生じている箇所は限られ,人的被害はそうした家屋倒壊が発生した場所のさらに一部で生じているという印象.これはこれまでの災害と変わらない.

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この地区の崩壊の分布は,地理院地図でよく分かる.
 
 7月26日,愛媛県西予市野村町野村地区を現地踏査.肱川の氾濫による洪水災害.この付近では家屋の流失が見られ,住家と思われる建物数棟が流失したと思われる.この付近で人的被害が生じているが,建物流失に伴うものではない模様. 空中写真を見ていて見当はついていたけど,やはり家屋流失などの激しい被害が見られるのは谷底平野の範囲に限られる印象.旧野村町役場など,野村の旧市街地は台地上に形成されており,そこでは浸水による被害は激しくない模様.

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 野村町付近は,地理院地図では地形分類図が見られないが,陰影起伏図でもなんとなく雰囲気は分かるだろうか.「分かりやすい」話ではないけど.

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2018年7月17日 (火)

「流れる水には近づくな」「土砂災害の前兆に頼るな」

 もう少し書こうかと思ったけど時間が無いので,先日のツイートにすこしだけ加筆.
 
 よく防災パンフレットなどで目にする記述,「徒歩での避難が難しくなるとされる50センチ」.これはとても危険な知識のように思う.このような伝え方をすると,「50cmまでなら歩ける」と思われてしまいそう.流速が速ければもっと浅くても流されるし,体格や年代性別によってもだいぶ話が変わる.

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このあたり,詳しくは関西大学の石垣先生が以前に書かれたコラムが参考になる.
 
 防災上の知識として単純化するなら「人も車も簡単に流される.流れる水には近づくな」でよいと思う.普通の人にとって,水に勇気を持って立ち向かう必要は無い.水からは逃れないといけないと思う.

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 でもそう言うと必ず怒り出す人がいて,「実際に水に取り囲まれたらどうするのか!,運動靴!,ロープ!,探り棒!」とかいう話に.そんな状況にならないように早めの行動をする事が何よりも重要.どうしてもだめなときは,少しでも高いところに逃れる.つまるところ,「最善を尽くす」しかない.
 
 これとよく似た「危ない防災知識」が,「土砂災害の前兆現象」だとおもう.これについては最近のコラム記事を参照ください.
 
時評=土砂災害-「前兆」頼りすぎるな

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2018年7月15日 (日)

平成30(2018)年7月豪雨 倉敷市真備地区での流失家屋の判読

 住家に激しい被害が生じ,そこに人が居れば犠牲者が発生する可能性は高い.犠牲者を生じうる家屋被害の情報としては,「全壊」などの統計値がまず考えられる.しかし現在の基準(内閣府:災害に係る住家の被害認定基準運用指針)では,1階天井まで浸水だけでも「全壊」と判定されることになっている.つまり,犠牲者の発生に直接結びつかない家屋被害が「全壊」に計上されることがあり得る.このため,完全に流失・倒壊した建物数に関する情報が必要となる.一方近年の災害時には,国土地理院が発災直後に被災地の空中写真を撮影し,オルソ化してWeb版の「地理院地図」で公開することが一般的で,災害前後の空中写真を比較判読することにより,流失家屋を読み取れる可能性がある.
 
 ここではまず,平成30年7月豪雨により激しい浸水被害を受けた,岡山県倉敷市真備地区を対象に,地理院地図から被災前後の空中写真判読を行った.用いたのは,被災後の空中写真は国土地理院撮影の「高梁川地区(7月9日撮影),同(7月11日撮影)」を,被災前の空中写真は,地理院地図収録の「全国最新写真(シームレス)」である後者の撮影時期は,2007年以降とされている.読み取り範囲は第3次メッシュを単位として,下記の範囲とした.

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 流失家屋の判読は筆者自身の読図によるものである.被災前後の空中写真を比較し,下記の2種類に該当すると読み取れる家屋を流失家屋と見なした.
  • 「流失(完全)」:被災前に存在した建物が完全に流失または倒壊し建物としての形状が認められない
  • 「流失(変形)」:被災前に存在した建物で形状が明らかに変形しているまたは一部が流失している
 判読結果には個人差がありうる.また,空中写真での判読であり,現地で見れば変形していると分かるものでも,判読できていない場合もありうる.空中写真でも分かる程度の大きな被害を受けた家屋と考えてもよい.また,空中写真撮影後に撤去された家屋もありうるので,Googlemap,ストリートビュー,ゼンリン住宅地図も合わせて参考とした.
 判読対象家屋は,被災当時のゼンリン住宅地図において番地記載がある建物とした.従って,同一敷地内にある建物であっても番地記載の無い建物(物置,車庫などと考えられる)は対象外としている.
 判読結果が下記である.作図は埼玉大学谷研究室のGeocoding and Mappingによる.背景図は地理院地図である.緑色の■が流失家屋と判読された家屋の位置である.今回の判読範囲では,7箇所が判読された.

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 比較のため,同様な方法で判読した,平成29(2017)年7月豪雨による,山地河川洪水で被害を受けた福岡県朝倉市の,赤谷川中下流域での判読結果を示す.地図の縮尺,範囲は真備地区とほぼ同じである.朝倉市内では,土砂災害による流失家屋も多かったが,この図の範囲内の多くは洪水(山地河川洪水)によるものと考えてよい.

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 真備地区と赤谷川中下流を比較すると,後者の方が多くの流失家屋が生じている.真備地区の洪水は,平野部の破堤氾濫であり,洪水の形態がやや異なり,被害の出方に違いが出ていると言っていい.被害形態として類似している平成27(2015)年9月関東東北豪雨による茨城県常総市もいずれ判読したい.概略的に判読したところでは,おそらく朝倉市のケースよりかなり流失家屋は少なく,真備地区と同程度と思われる.
 
 流失家屋が少ないことは,被害が軽微であることを意味しない.ことに今回の真備地区では,2階軒先(5m程度)まで浸水した家屋が多く見られ,常総市での被害よりははるかに浸水の程度が激しい.家屋自体は残っても,家財に大きな被害が出ていることが予想され,決して軽微な被害ではない.さらに,深い浸水によると思われる人的被害もかなりの規模に上っている.
 
 また,平成30年7月豪雨全体では,特に土砂災害による大きな被害を受けた地域において,多数の流失家屋が生じている事は間違いない.本稿はあくまでも,真備地区の流失家屋の規模を読み取ることだけを目的としたものであり,平成30年7月豪雨による被害全体を矮小化する意図は全くない.
 
※本稿の一部は,2018年9月の日本自然災害学会で口頭発表予定の内容を転載したものです.

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7月14日倉敷市真備地区現地踏査雑感

 7月14日午後,倉敷市真備町を現地踏査.写真は小田川の箭田橋付近左岸側の破堤箇所.応急改修が概ね終わったように見える.たいしたものだ.場所はこのあたり

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 箭田橋付近破堤箇所の近く.数棟の家屋が流失したと思われる.破堤箇所の正面ではなく,やや上流側の家屋が流失している.
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 7月7日の朝日新聞にあった画像https://twitter.com/asahi_photo/status/1015394952547717120に見られた道路標識.場所はこのあたり.看板下部の道路面からの高さを測ってみたところやはり約5m(規格なんだから当たり前か).道路面からの浸水深は約5mと見てよさそう.なお,当日の画像がピーク水位の時点であるとは限らないことは注意が必要.ただし,周囲の建物の浸水痕跡から類推すると,この付近でほぼ5m弱がピーク水位とみてもよいように思えた.

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 真備地区では他にも2箇所ほど見て,後は車で流しただけだが,浸水深は深いところが目立つものの,やはり流失家屋が至る所に見られるような状況ではなかった.被害がひどくないという話ではなく,この付近では,深い浸水が目立ったことが特徴ということ.
 

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2018年7月14日 (土)

平成30(2018)年7月豪雨 家屋被害についての雑感・7月14日朝時点

この記事の「家屋被害」とは,全壊,半壊,一部損壊,床上浸水,床下浸水の合計値だね.この数え方で3万だと,近年でも何回もあるレベルでそれほど大きくは感じない.ただ,家屋被害は時間とともに大きく変化するから,現段階では大小は議論できないと思う.

全壊~床下浸水までの合計(仮に全家屋被害と呼ぶ)で,値が大きい近年の事例としては1999年台風18号で約10万7千棟(消防庁資料).これは風が強かったためか,一部損壊が非常に多く(全体の約半数),合計がこうなっている.ただし一部損壊以外でも決して少ない数字ではない.www.data.jma.go.jp/obd/stats/data…

「全家屋被害」で他に被害が多いのは,2004年台風23号で約7万5千棟(消防庁資料).これは人的被害も多く,広域で様々な被害の出た事例で,今回と形態的には共通点が多い. www.data.jma.go.jp/obd/stats/data…

1980年代以前だと,「全家屋被害」が10万棟以上という事例は全く珍しくなくて,ほぼ数年に1回程度発生している.近い時代で値が大きいものとしては1976年台風17号で,約45万4千棟(理科年表による).これは長良川が決壊して濃尾平野で大規模な浸水が発生した事例.www.data.jma.go.jp/obd/stats/data…

なお,リンクで挙げた気象庁のページにある家屋被害の数と,ここで示した数字がだいぶ違っていることもあるけど,災害統計というのはそういうもの.出典や,集計時期によって大きく異なる事は珍しくない.長い期間について均質なデータで比較することは結構難しい.

災害統計って本当に手強い.数字をそのまま読むことは要注意.

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2018年7月12日 (木)

平成30(2018)年7月豪雨 「夜(深夜)の災害」ばかりが怖いわけではない

 下記の記事は,今回の災害における,夕方から夜にかけての人が多く動いている時間帯の災害の恐ろしさの一端を表すものと感じた.
 
7月6日夜 広島で起きていたこと
 
 2013伊豆大島,2014広島の頃「夜(深夜)の災害がこわい」のフレーズがあまりに強調されることに強い違和感を覚え,抵抗した.怖いのは夜だけではない.
 
 ふたたび当方のこれまでの調査結果から.1999年以降の風水害犠牲者の発生時間帯別分類.夜と昼はほぼ半々.昼ならではの怖さは,「少し無理な行動(帰宅,迎え,仕事など)をとってしまう」ということでは,と考えている.

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 今回の災害は様々な時間帯に生じたので,どのような傾向があるかはまだ分からない.少なくとも「深夜だけ」という事はなさそうに思うが,様々な状況があったようにも思う,慎重に検討したい.特定事例の「教訓」だけに引っ張られることは本当にまずい,とあらためて痛感した.

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平成30(2018)年7月豪雨 家屋被害に関する予察

 今回の災害では家屋被害も相当程度と思われるけど,家屋被害の値は人的被害よりもさらに時間とともに変わるので,早い段階での言及はできない.7/125:30の消防庁資料で全半壊+床上で8316棟で,1999年以降でも上位7位相当.
 
 人的被害が多い=家屋被害が多い,とは必ずしも言えなくて,図は1999~2016年の主要風水害の事例別家屋被害と人的被害の関係.消防庁資料をもとに牛山作図.なんとなく相関がありそうに見えるけど,相関係数は0.24程度で,かなりばらついている.いろいろな状況次第という所.

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 なお,近年の風水害では,床上浸水が後日半壊などに判定替えされるケースがかなり多いようなので,「全半壊だけ」「浸水だけ」の値を見ると,災害の実体像を反映しない可能性が高い.過去事例との比較には,全半壊+床上が良さそう,と考えている.関連論文は下記.
 
牛山素行:日本の風水害人的被害の経年変化に関する基礎的研究,土木学会論文集B1(水工学),Vol.73,No.4,pp.I_1369-I_1374,2017.

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2018年7月11日 (水)

平成30(2018)年7月豪雨に関する人的被害の特徴については,今後順次調査を進めます

当方では今後,従来から実施してきた,
風水害人的被害に関する調査研究
を踏まえ,本災害の人的被害に関する解析を中心に調査を進めたいと考えています.図は当方調査による1999~2017年の風水害犠牲者の原因外力別分類,参考まで.

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平成30年7月豪雨の人的被害について,早めにまとめた方がいい状況も感じたのですが,現時点では状況不明なことが多すぎますので拙速な対応はしないことにしたいと思います.おおむね1ヶ月以内には,速報として報告する機会を作ることを目標としています.
 
人的被害を生じた現場だけで100箇所以上に上ると思われる.その多くにこれから足を運ぶことになるだろうが,今日の現場はそのほんの第一歩に過ぎないのか,と思うと,本災害のあまりにも大きな規模感が実感された.
 

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7月10-11日広島市付近現地踏査雑感

7月10日,広島市安佐北区口田南3丁目付近などを現地踏査.写真は口田南3丁目で土石流により複数の犠牲者が生じたと思われる付近.複数世帯の家屋が流失,倒壊していると思われた.

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10日時点で目立った被害現場は数カ所ほど見ただけなので,限定的な印象だが,犠牲者,家屋流失ともに複数生じている現場で,発災4~5日目にしては,メディア関係者,調査関係者などがほぼいないという印象があった.今回,激しい被害を生じた現場があまりにも多い事を象徴しているような感じがした.
 
7月11日は広島市安芸区,熊野町付近をいくつか現地踏査.写真は熊野町川角5丁目.この付近で斜面勾配7-8度くらいか.付近は土石流危険渓流,土砂災害警戒区域.ここに限らず,見た範囲ではやはり,地形的に土砂災害の可能性がある場所での被害が目立つ印象.

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この付近では,死者・行方不明者十数人の可能性とのこと.そうなると,1箇所の人的被害規模としては2003年水俣土砂災害時の最大被害のあった宝河内集(ほうごうち・あつまり)地区に近い.
 
水俣と比較すると,この地区への社会的注目度や,現地への人の集まり方(救出や支援の手が足りてないという話ではなく,実務的な様々な人の集まり方)があまりに小さい,という(あくまでも感覚的な)印象.繰り返しになるが,今回は現場があまりに多い,とあらためて思った.

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2018年7月 9日 (月)

平成30(2018)年7月豪雨の降水量・被害・情報面の特徴(7月9日14時所感)

 今回の豪雨は,「広い範囲に大量の雨が長時間にわたり降り続けた」事が大きな特徴と言える.たとえば2017年7月九州北部豪雨では,1時間降水量など短時間の降水量が非常に大きかったが,強い雨が継続したのは10時間前後で,今回とは様相が異なる.今回は,72時間降水量など,長時間の降水量が大きかったところが多く,気象庁AMeDAS観測所(統計期間10年以上)のうち7月7日に最大値を更新した観測所は116箇所となった.
 
 なお,72時間降水量も値自体が特別大きいわけではない.最大は高知県魚梁瀬で,まだ欠測の関係で値が不詳だが1400mm程度と思われ,これは全AMeDASの上位3位に相当する可能性.しかし他の観測所はいずれも1000mm以下で,全AMeDASの上位10位よりはかなり小さい.
 
 また,絶対値としての降水量が大きかった地域で大きな被害が出ているわけではない.被害が集中した広島市付近,倉敷市付近の72時間降水量は,高知県魚梁瀬と比べれば1/3近い数字である.瀬戸内地方はもともと降水量の少ない地域であり,その地域にとって大きな降水量が記録されたところで被害が出ているもので,これはごく一般的な傾向である.
 
 人的被害の全体像はまだ明らかになっていないが,2004年台風23号(死者行方不明者98人)や2011年台風12号(同98人)を上回ることは確実で,昭和57年7月豪雨(同345人)以来の被害規模といっていい.理科年表によれば,死者行方不明者が100人を超える事例は,1951年以降35回発生しているが,昭和58年7月豪雨(同117人)を最後に発生しておらず,30数年ぶりの発生となりそうだ.過去に繰り返し発生している規模ではあるが,ハード,ソフト両面の対策が進んだ現代において発生したことは大変痛ましい.

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 個々の現場で発生していることは,現在の映像で見る限りでは,特に巨大な崩壊や,起こったこともないような広範囲の浸水が見られているわけではない.被害が大きくなったのは,ひろい範囲に激しい外力が作用してしまったことが,まず第一の要因,というか,ほぼそれに尽きると思われる.詳細はまだ分からないが,発生している場所についても,地形的に起こりうるところで起こりうることが起こった」という印象がもたれる.
 
 今回の豪雨はいわゆる「不意打ち」タイプではない.7月5日に気象庁が異例の会見を行ったことは印象的で,予想は十分なされ,早期の警告も行われた.詳細は要検討だが,従来よりは避難勧告等も早期に出された可能性が高い.「予測精度の向上」「避難情報の整備」だけではダイレクトに被害軽減に繋がらない可能性があらためて示唆された印象もある.
 
 被害が大きいので言いにくいことだが,今後調べが進むと,早期の情報により,被害軽減が図られたケースも出てくる可能性はあるのではないかとも考えている.

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平成30(2018)年7月豪雨の降水量の特徴・7月8日現在

 今回の豪雨の降水量の大きさについて,7月8日夕方時点の資料をもとに簡単に整理する.今回は長時間降水量が大きく,72時間,48時間降水量を更新した観測所が多かった.以下,気象庁webより,72時間の更新箇所が多かった7月7日の図を示す.しかし,この図が数日前まで含めて参照できるようになったことはとてもよいと思う.

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 一方短時間降水量はそれほど記録的ではない.こちらは6,7,8日に1時間降水量の最大値更新観測所.更新観測所がないわけではないが,他の豪雨事例と比べても多くはない.長時間の降水量が大きかった特徴が分かる.

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 なお,72時間降水量も値自体が特別大きいわけではない.最大は高知県魚梁瀬で,まだ欠測の関係で値が不詳だが1400mm程度と思われ,これは全AMeDASの上位3位に相当する可能性.しかし他の観測所はいずれも1000mm以下で,全AMeDASの上位10位よりはかなり小さい.

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2018年7月 8日 (日)

平成30(2018)年7月豪雨による人的被害の特徴・7月8日時点の所感

 平成30(2018)年7月豪雨による人的被害の全貌は,まだよく見えてきていない部分が多いが,7月8日夕方時点の公表資料や報道からみると,2004年台風23号や2011年台風12号に匹敵するか,場合によると1983年以降で最大規模の風水害となってきている可能性があると思われる.
 
 8日15:30時点の消防庁資料で既に死者57人,行方不明者22人.他に「連絡が取れない者20人」.ここ数年の「行方不明者数をなるべく明示しない」状況下でもこの数に上っていることに慄然とする.
 
 災害発生後,死者・行方不明者数の合計は次第に増加するがどこかでピークを迎え,やがて減少する.ピークまでの期間は事例によって異なり,近年の風水害では概ね数日だがもっと長いこともある.これについては下記論文で示している.
 
牛山素行:日本の風水害人的被害の経年変化に関する基礎的研究,土木学会論文集B1(水工学),Vol.73,No.4,pp.I_1369-I_1374,2017.
 
 従って,現時点で公表、報じられている死者,行方不明者数は今後変動する可能性が高い.このため,不確実な要素が多い中ではあるが,すでに2017年九州北部豪雨や2013年伊豆大島豪雨の犠牲者数を大きく上回っていることは確実で,2014年広島豪雨の被害規模を上回る可能性も高くなってきたと思われる.
 
 どこかで集中的に被害が生じるのでなく,広くいろいろな所で発生しているのは,2004年台風23号に似ている.被害が大きく期間が長い点の類似例は昭和47年7月豪雨まで遡るだろうか.
 
 総務省消防庁の8日15:30現在の資料にもとづく,死者・行方不明者発生市町村分布を作成した.まだ状況がよく分からないが,広い範囲で人的被害が生じているのが分かる.広島市~倉敷市にかけての瀬戸内側,愛媛県西部での被害が目立つ.

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 原因外力別はまだ不明な部分が多いが,消防庁資料で見る限りでは,土砂21人,洪水1人,河川8人,不明18人など.土砂災害がやや多そうだが,水関連も少なくはない印象である.このあたりは今後大きく変わるかもしれない.

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倉敷市真備地区の洪水ハザードマップ上の特徴

 大規模な破堤氾濫による浸水が生じた倉敷市真備地区は,洪水ハザードマップ(計画規模)で想定浸水深5m以上(紫)と示されているところ.国土交通省「重ねるハザードマップ」より.
 
 5m以上というのは,標準的な洪水HMの色分けのランクで最大の規模に相当する.現在は「計画規模」の他,「想定最大」という情報も公開されており,それだともっと大きな浸水が想定されているが,ここでは堤防などハード整備の基準となる「計画規模」について示す.

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 5m以上がこれだけ広く面的に示されているのは中国地方ではほぼここだけといっていい.近隣だと豊岡盆地くらいか.浸水してしまったら被害規模が大きくなりやすいところと言える.詳細に調べれば,局所的にさらに激しい浸水が生じていたことが確認されるかもしれない.
 
 しかし,「5m以上」とは,ハザードマップ上では最大の表記であり,建物で換算すると2階の軒先以上が浸水する状況.映像を見る限り,確かにその程度になっていると思われる.激しい現象が生じたとは言えるが,規模的に「想定外」のことが起こっているとは言えないと思う.ただし,「想定内に備えておかなかったのがいけない」という話にしてよいかどうかはまた別の話である.

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 ちなみに関東平野に行けば,想定浸水深5m以上の地域は結構あります.先の中国地方の図と縮尺はほぼ同じにしたもの.

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平成30(2018)年7月豪雨 主な地点の降水量

 量的に降水量の多かった高知県繁藤の降水量推移と,過去の記録との比較.繁藤はAMeDASの24時間最大記録を持っているところ.今回72時間最大で940mmに達し,かなりの量だけど極値は更新してない.全国最大値よりもかなり小さい.

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繁藤の位置はこの図で.気象庁HPより.

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比較的被害が出ている模様の広島県.比較的降水量が多かった志和(東広島市)をみる.48時間最大426.5など,先の繁藤と比べると半分くらい.しかし,過去の最大値の約1.5倍.この場所としては大変な雨.しかし,短時間降水量はそれほど記録的ではない.

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志和の位置はこの図で.気象庁HPより.

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大規模な破堤氾濫による浸水が生じた岡山県倉敷市真備地区.最寄りのAMeDASは矢掛(矢掛町).やはり,24,48時間降水量などが大きいが(ただし絶対値は繁藤の半分以下),過去最大値と同程度.短時間降水量は大きくない.

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矢掛の位置はこちらで.気象庁HPより.真備地区の洪水は,流域全体に多量の雨が降った影響かも.ただ,上流側の佐屋の降水量も,過去の記録と比べ極端に大きいものではない.

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愛媛県内の降水量はどこをみればよいかよく分からなかったが,量的に多い宇和(西予市)を挙げておく.7月7日22時までのデータを利用.5時間以上で既往最大値を大きく更新だが,短時間降水量は大きくない点は,他の地点の特徴と共通.

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宇和の位置図はこちら.気象庁HPより.

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平成30(2018)年7月豪雨は「広域・多量・長時間」の大雨の可能性

 今回の平成30(2018)年7月豪雨は,非常に広い範囲で,多量の降水が,長時間にわたり生じたことが大きな特徴と言える.それが具体的にどの程度であったのかを端的に示す一般的な指標が見当たらない.そこでここでは,水資源について議論する際などに用いられる「降水総量」,すなわち,降水量に面積をかけて体積で表現する指標を用いて,過去の豪雨との比較を試みた.
 
 気象庁のAMeDAS観測所は全国に約1300箇所あり,山間部に設置されていないなどのかたよりはあるものの,なるべく均等になるよう配置されており,その空間密度は平均的には17km×17km=289平方kmとされている.そこでここでは,1つのAMeDAS観測所が,面積289平方kmの空間を代表する値と仮定し,全国のAMeDAS観測所で観測された降水量の合計値に289平方kmをかけ,降水総量(単位は立方メートルに換算)を求めることとした.
 
 用いたデータは,当方が従来から計算してある全国AMeDAS観測所の,1980年以降の毎日の24時(00時)の24,48,72時間降水量を用いた.なお,AMeDAS観測所数は約1300箇所で大きく変化はしていないが,時期によって数十箇所規模で増減する.また,値の大きくなりやすい山間部の観測所が2000年代以降一掃されたりしている.前述のように,完全に均一に配置されているものではないという問題もある.これらの影響は考えられるが,今回はあくまでも概算値なのでこれらについては特に考慮しないこととした.

24

 24時間降水量の降水総量をみると,期間中で最も多かったのは2004年10月20日24時の,約351億立方メートルで,今回多かった2018年7月6日24時は221億立方メートルと,既往3位未満だった.

48

 48時間降水量の降水総量をみると,期間中で最も多かったのはやはり2004年10月20日24時の,約462億立方メートルで,今回多かった2018年7月6日24時は約413億立方メートルと,やはり既往3位未満だった.

72

 72時間降水量の降水総量では,期間中で最も多かったのは2011年9月21日24時の,約491億立方メートルだった.一方今回多かった2018年7月7日24時は約553億立方メートルとなり,既往最大値を大きく上回った.
 
 2004年10月20日は,広域で大雨が降り,広い範囲で被害が出,全国で死者行方不明者98人が生じた2004年台風23号の通過日である.2011年9月21日は九州,四国の「いつもからよく降るところでたくさん降った」パターンで,被害はあったが,極端に大きくはなかった.
 
 計算結果は未精査で,あくまでも緊急に概略値として計算したものだが,今回の豪雨が最近約40年中でも特に「広域,多量,長時間の大雨」であった可能性は高いものと思われる.
 
※(2018/7/9修正)過去データと今回豪雨とで、日界(何時を一日の区切りとするか)の定義を変えてしまっていたことに気が付きました。今回事例で「7月7日」としていたものは「7月6日」の誤り、「7月8日」は「7月7日」の誤りです。図と本文は訂正済みです。

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2018年7月 6日 (金)

時評=災害時の安全確保-状況応じた避難が鍵

7月5日付け静岡新聞「時評」欄に下記記事を寄稿しました.「避難場所を覚えろ」といった声や,避難所への誘導がりをしたがる人に対する違和感を記事にしたものです.
 
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時評=災害時の安全確保-状況応じた避難が鍵
 
 「避難場所を覚えましょう」とよくいわれる.間違いとは言わないが,危ない面があると常々違和感を持っている.
 
 「避難とは避難場所へ行くこと」との単純な理解に様々な問題があることが近年指摘されている.内閣府「避難勧告等に関するガイドライン」では,「『避難行動』は、数分から数時間後に起こるかもしれない自然災害から『命を守るための行動』である」とし,形態として,①指定緊急避難場所への立退き避難,②「近隣の安全な場所」への立退き避難,③「屋内安全確保」を挙げている.命を守るための行動が重要であり,「避難場所へ行くこと」はその手段の一つに過ぎない.
 
 「避難所」の意味についても整理が進んでいる.現在の制度では,指定避難所「災害により住宅を失った場合等において一定期間避難生活をする場所」,指定緊急避難場所「切迫した災害の危険から命を守るために避難する場所」の2種がある.「命を守るための行動」で向かうのは主に指定緊急避難場所と言えるが,指定避難所と指定緊急避難場所が位置的に同一なことも多く,「避難所へ行くのは間違い,指定緊急避難場所へ行きなさい」とは単純に言えない.
 
 災害の種類により適切な避難場所が異なることも要注意.例えば低い場所の平屋や広場は,地震災害時ならばよいが大雨時の適切な避難場所とは言えない.各避難場所は,どの災害時に使うかが決められている事が多い.「避難所か,指定緊急避難場所か」より,「その避難場所はどの災害時に使うのか」を知る方が重要だ.
 
 そもそも避難の意味が災害によって異なる.地震災害では基本的に事後避難となる.自宅で暮らせなくなった場合に避難するのであり,自宅が健全ならば避難所へ行く必要もない.津波の場合は避難場所かどうかに関わらず,少しでも速く高いところへ移動することが重要.洪水や土砂災害では場所や状況により話がかなり変わる.また,災害種別ごとに指定された避難場所でも,予期せぬ危険に見舞われることもある.避難場所で安心してしまわず,状況を見つつの判断も重要だ.
 「避難場所を覚える」ことよりは,「避難の仕方を覚える」ことの方が,いざというときに応用が効くのではなかろうか.

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