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2018年7月 6日 (金)

時評=災害時の安全確保-状況応じた避難が鍵

7月5日付け静岡新聞「時評」欄に下記記事を寄稿しました.「避難場所を覚えろ」といった声や,避難所への誘導がりをしたがる人に対する違和感を記事にしたものです.
 
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時評=災害時の安全確保-状況応じた避難が鍵
 
 「避難場所を覚えましょう」とよくいわれる.間違いとは言わないが,危ない面があると常々違和感を持っている.
 
 「避難とは避難場所へ行くこと」との単純な理解に様々な問題があることが近年指摘されている.内閣府「避難勧告等に関するガイドライン」では,「『避難行動』は、数分から数時間後に起こるかもしれない自然災害から『命を守るための行動』である」とし,形態として,①指定緊急避難場所への立退き避難,②「近隣の安全な場所」への立退き避難,③「屋内安全確保」を挙げている.命を守るための行動が重要であり,「避難場所へ行くこと」はその手段の一つに過ぎない.
 
 「避難所」の意味についても整理が進んでいる.現在の制度では,指定避難所「災害により住宅を失った場合等において一定期間避難生活をする場所」,指定緊急避難場所「切迫した災害の危険から命を守るために避難する場所」の2種がある.「命を守るための行動」で向かうのは主に指定緊急避難場所と言えるが,指定避難所と指定緊急避難場所が位置的に同一なことも多く,「避難所へ行くのは間違い,指定緊急避難場所へ行きなさい」とは単純に言えない.
 
 災害の種類により適切な避難場所が異なることも要注意.例えば低い場所の平屋や広場は,地震災害時ならばよいが大雨時の適切な避難場所とは言えない.各避難場所は,どの災害時に使うかが決められている事が多い.「避難所か,指定緊急避難場所か」より,「その避難場所はどの災害時に使うのか」を知る方が重要だ.
 
 そもそも避難の意味が災害によって異なる.地震災害では基本的に事後避難となる.自宅で暮らせなくなった場合に避難するのであり,自宅が健全ならば避難所へ行く必要もない.津波の場合は避難場所かどうかに関わらず,少しでも速く高いところへ移動することが重要.洪水や土砂災害では場所や状況により話がかなり変わる.また,災害種別ごとに指定された避難場所でも,予期せぬ危険に見舞われることもある.避難場所で安心してしまわず,状況を見つつの判断も重要だ.
 「避難場所を覚える」ことよりは,「避難の仕方を覚える」ことの方が,いざというときに応用が効くのではなかろうか.

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