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2018年12月13日 (木)

時評=風水害は、いつ集中?-昼も夜も警戒が必要

11月1日付け静岡新聞「時評」欄に下記記事を寄稿しました.思い込みや,「自分の体験」に依拠して防災教えたがる人にもういい加減つかれてきました.

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時評=風水害は、いつ集中?-昼も夜も警戒が必要
  「夜の災害(風水害)が怖い」といった趣旨の話を聞くことがある.たとえば2014年8月22日付朝日新聞社説は「伊豆大島や広島のケースでは、雨が夜更けに強まったことが自治体の対応を鈍らせた」と指摘している.「伊豆大島」は2013年10月,「広島」は2014年8月の豪雨災害を指す.
 
 これが誤りということではない.内閣府の「避難勧告等に関するガイドライン」ではこうした災害の教訓も元に,「夜間・早朝に避難勧告を発令するような状況が想定される場合には、その前の夕刻時点において避難勧告を発令する」など,夜間の災害に注意喚起する記述が見受けられる.
 
 夜間は,寝ている間に急に天候が悪化し「寝込みを襲われる」ことや,就業時間外のため行政機関などの組織的対応に難しさがあること,何らかの対応行動をとるにも暗闇で見通しがきかないなど,災害対応を阻害する要因がいろいろと考えられる.しかし,だからといって夜の災害ばかりを警戒することも適切でない.
 
 筆者の1999~2017年の風水害犠牲者1011人を対象とした調査では,犠牲者発生時間帯は夜間(18~06時)48%,昼間(06~18時)47%,不明5%で,被害の実態としては「犠牲者は夜間に集中している」状況ではなさそうである.夜間の災害対応に難しさがあることは間違いない.しかし,対応が難しいのは夜だけで昼は大丈夫という訳ではない.夜には夜の,昼には昼の怖さがある.
 
 「昼の怖さ」はイメージしにくいが,「無理な行動をとりやすい」面があるのではなかろうか.多くの人が起きて行動している時間帯なので,少し無理をして移動,帰宅しようとして難に遭うケースが見受けられる.また,様々な形で「様子を見に」行って遭難するケースも昼間が目立つ.
 
 平成30年7月豪雨の犠牲者231人については,夜間72%,昼間24%と,夜間の犠牲者が多かった.しかし,少しこまかく見ると18~24時が40%,24~06時が32%であり,多くの人が起きていたと思われる時間帯の被害が多く,「寝込みを襲われる」ケースが多数を占めたわけではないことがわかる.
 
 自然災害には様々な姿がある.特定の事例にもとづく「教訓」ばかりに目を向けるのではなく,広い視野から考えることが重要だと筆者は考えている.

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