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2019年3月 1日 (金)

時評=「想定外」に違和感-乱発せず情報生かせ

1月16日付け静岡新聞「時評」欄に下記記事を寄稿しました.「想定外」という言葉についてあらためて考えてみたものです.
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時評=「想定外」に違和感-乱発せず情報生かせ
 「想定外」という言葉を,東日本大震災頃以降よく聞くようになったように思うが,その言葉の使われ方に違和感を覚えることもある.静岡新聞で「想定外」が含まれる記事数を検索すると,2003~2010年は20~82件で平均45件に対し,2011年は274件と急増しその後も毎年100件以上がほとんどで,2011~2018年の平均は131件だった.記事中の出現頻度は確かに増している.
 
 デジタル大辞泉(小学館,年3回更新)によれば「想定外」は「事前に予想した範囲を越えていること」とあり,「想定」は「ある条件や状況を仮に設定すること」とある.なお「想定外」は新語のようで,広辞苑第六版(岩波書店,2008年刊)や明鏡国語辞典(大修館書店,2011年刊)では見出し語に含まれていない.
 
 防災の計画を策定する際,具体的な対応計画のための基礎資料として,何らかの条件を設定してどのような被害が起こりうるかを計算した「被害想定」を作成することがある.「被害想定」で設定した規模を越える現象が発生すれば,それは「想定外」と言っていいだろう.たとえば河川の堤防などの構造物は,大河川では100年に1回程度発生する規模の洪水を想定して設計される事が多い.この規模を越える洪水は「起こり得ない」訳ではなく,必ず起こる.しかしそれに対応する堤防等は広大な土地や巨大な費用が必要となるため,現実的に対応可能な規模の現象を想定して設計されているに過ぎない.
 
 こうした防災計画上の想定を越える現象を「想定外」と呼ぶことに違和感はないが,一方で「想定外」という語が濫発されているのではないかと感じることもある.たとえば,ハザードマップで危険性が示されていた地域で想定規模の現象が起こった際に,その想定を知らなかったからといって「想定外だ」というのは適切ではないように思う.
 
 「温暖化でなにが起こるか分からない」といった声を聞くこともあるが,何もかも皆目見当がつかないわけではなく,過去100年程度の間に起こっていない巨大な現象が近年頻発しているわけでもない.むしろ情報の整備や予測精度の向上で,一昔前より「想定しやすくなっている」面も少なくない.安易に「想定外」と言うことなく,様々な情報を生かしていきたい.

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