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2019年12月 6日 (金)

時評=直近の災害事例に強い関心 広い視点から議論を

11月14日付け静岡新聞に下記寄稿をしました.目先で起こった災害事例のことばかりに注目し,振り回された議論をするのはいかがなものか,という,みなさまのお気持ちに沿わない内容です.

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時評=直近の災害事例に強い関心 広い視点から議論を

 10月12~13日に日本列島を通過した台風19号は,本県をはじめ全国で死者・行方不明者87人(11月3日消防庁資料)などの大きな被害をもたらし,今なお各地で発災後の厳しい対応が続いている.

 この台風では特に洪水の被害が目立った.筆者の調査では,洪水で流されたり河川付近を通行中に転落するなど,水関連の犠牲者は63人で,犠牲者中の7割を占める.筆者の1999~2018年の風水害犠牲者1259人の調査では水関係犠牲者は42%なので,本事例の水関係犠牲者はかなり多かったと言える.また,床上・床下浸水家屋の合計は6万8千棟に上る.床上浸水などの指標の意味は時代ととも変化し単純な比較はできないが,この台風による浸水関係の家屋被害は最近20年間で最大規模となる可能性が高い.

 筆者は10月末に静岡県,神奈川県などに居住する人を対象に調査を行ったが,台風上陸前日に「自宅が暴風による被害を受けるかもしれない」とイメージした人は静岡で6割,神奈川で7割に,「自宅が数日以上にわたって停電するかもしれない」とイメージした人は静岡,神奈川とも6割弱に上った.一方,洪水可能性がある付近に居住と推定される回答者でも「自宅が洪水による被害を受けるかもしれない」とイメージしたのは静岡で3割,神奈川で4割ほどだった.暴風を心配した人に対し,洪水を心配した人は比較的少なかった印象がある.この理由は明確には分からないが,9月上旬に房総半島などを襲った台風15号の暴風による家屋損壊や,長期停電が印象に残っていたのかもしれない.

 災害に対する関心は時間とともに急速に低下する事はよくいわれ,たとえば京都大学の矢守らの研究ではその低下速度は5年で10分の1,10年で100分の1といった見方もある.これは,直近の災害事例に対しては強く関心が持たれるが,少し前の災害に関しては薄れていく可能性も示唆している.

 自然災害は様々な様相を見せる.大きな災害が起こった直後は,その直近の災害に目を向けた議論が活発になりやすいが,直近の災害に見られた「課題」は,災害に関わる「課題」のあくまでも一つに過ぎない.目先のことばかりにとらわれず,広い視点からの議論が重要だと考えている.

 

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