2019年10月12日 (土)

風水害ではどのように犠牲者が生じているのか(2019/10/12版)

私が専門的に調べている,洪水・土砂災害でどのように犠牲者が生じているか,というお話をします.1999-2018年の風水害による死者・行方不明者1259人分の集計結果です.

犠牲者を生じた原因外力で相対的に多いのは土砂災害で全体の5割弱,それに次ぐのが洪水(川からあふれた水で流された),河川(増水した川に近づいた)です.風や,海岸付近での波などによるケースは,合わせて1割程度です.「増水した川に近づいた」と聞くと,「田んぼの様子を見に行き,用水路に転落」というケースが思い浮かぶかもしれませんが,こうしたケースは全体の5-6%くらい.日常の中で車や徒歩で移動していて川に落ちたケースの方が多くなっています.

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土砂災害では,土石流による被害が特に激しい様相を見せます.この写真のように,3件あった住家が跡形もなくなってしまうようなことは,決して珍しいものではありません.

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土砂災害のうち,いわゆるがけ崩れでも犠牲者が生じます.この写真のように,崩れた土砂の量が少なくても,人的な被害につながることもよくあります.斜面と反対側の部屋にいるかどうかで運命が分かれるようなこともあるようです.

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平野部の比較的新しい家屋では,浸水だけで家が流されて犠牲者が生じるようなことはほとんどありません.流されるとすれば,堤防が決壊した周辺などに限定されます.ただ注意が必要なのは,決壊する場所は最後まで分からないことです.堤防沿いはどこでも可能性があるとも言えます.ところによっては「家屋倒壊危険ゾーン」といった範囲が示されていることもあり,一つの目安にはなります.

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堤防がないような,山間部の中小河川は洪水と無縁ではなく,むしろ破壊力は大きいとも言えます.この図のように,元あった河川が横方向に河岸を浸食し,河川沿いの家屋を流失させて犠牲者が生じることもあります.

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水の流れだけで家屋が流されてしまうことは稀ですが,車や人は簡単に流されてしまいます.これは8月末の佐賀の豪雨のケース.道路を通行中の車が右手の水田の方に流されて犠牲者が生じたようです.こうしたケースをよく見かけます.

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河川に近づいて亡くなるケースでは,河川沿いの道路の路肩が崩れ,それに気がつかず車が転落するケースをよく見かけます.橋は流されなかったが,取り付け部の盛土が流されてそこに転落というケースもありますし,小さな側溝で犠牲者が生じることもあります.

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犠牲者全体で見ると,遭難した場所は屋内と屋外がほぼ半々.風水害犠牲者の約半数は,何らかの形で屋外行動中に亡くなっている,とも言えます.屋外行動中といっても避難中というケースは少数で,多くは様々な移動などで屋外にいたところ遭難したケースです.

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何らかの避難行動をとったが亡くなった,という方は全犠牲者の1割弱です.

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原因外力別に見ると,土砂災害犠牲者は屋内で亡くなった人が8割ですが,洪水,河川の水関連を合わせると7割,風や波の関係では8割が屋外です.危険な場所にある家屋からどこかへ避難することも重要ですが,移動する距離はなるべく短くした方がいいのかもしれません.

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土砂災害による犠牲者は,9割弱がハザードマップ等に示された土砂災害危険箇所かその近傍(地図の誤差の範囲内程度)で亡くなっています.

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一方,洪水,河川といった水関係の犠牲者は,ハザードマップ等に示された浸水想定区域付近での犠牲者は4割程度です.中小河川などでは浸水想定区域の指定が進んでいない場合がある事などが背景として考えられます.行政は何やってるんだケシカランとかは全然思いません.

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ただし,地形的に見れば,水関係の犠牲者は,洪水の可能性がある低地(標高×m以下の低い土地という意味ではありません.地形分類上の低地です)で亡くなっている人がほとんどです.でも地形分類の情報は使うのがなかなか難しいです.

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特に,堤防などがない中小河川では,相対的に川と同じくらいの高さにある場所は,洪水の影響を受けうる,と理解しておくのも一つの考え方かもしれません.

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2014年9月 6日 (土)

奈良県の土砂災害危険個所を参照する方法

奈良県で講演するに当たって参考にするために,奈良県の土砂災害危険個所を参照しようとしたのだが,これがなかなか手ごわい.以下,見えるようにするまでの顛末をメモしておく.
 
まず,国交省の「各都道府県が公開している土砂災害危険箇所と土砂災害警戒区域」 http://goo.gl/4T6B0 から奈良県の位置をクリックすると http://www1.nara-saboinfo.jp/ だが,Chromeでは一瞬で奈良県トップに連れて行かれてしまう.
 
まあこういうときはIEで見るのが吉なのでIEで接続すると,奈良県トップページに連れて行かれることはなくなり,現在の土砂災害危険度情報や雨量や,土砂災害危険個所図を重ねてみることができるらしきページが表示される.しかし,あくまでも「らしきページ」で,文字や画像やボックスがガチャガチャ重なり合っていて操作ができない.危険個所を表示するらしき「レイヤ選択」というところを操作しても何も変化しない.
 
これは相当な手ごわさだ,と困惑したが,親切な方が教えてくれた.このページは古いIEにしか対応していないとのこと.解決策は,メニューバー「ツール」から「互換表示設定」を選択→「追加するWebサイト」に http://www1.nara-saboinfo.jp/ と入力.以上.すると,おおっ,正常に表示された!
 
こういう現象を見て,「行政は情報を公開する気がない」と憤られる向きもあると思うけど,お金や技術や人手を動かしにくい世界(それは社会がそれを望んだ結果ですしね)ではこういうことはどうしても起こりうる.問題は分かっていても手が出ない,ということも.
 
でもやっぱり,「使えるものは一昔前に比べればずっと増えた」ことは間違いない.あるものは最大限使っていきたい,との気持ちを新たにした.
 

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2012年6月25日 (月)

個人でもできる降水量の測り方 -やや正確に-

 ある程度正確な降水量を、簡単に観測するための道具として、いろいろな簡易雨量計が提案されているが、市販されているものはないようである。筆者が試作した簡易雨量計は、科学実験用のポリエチレン製ロートの管の部分に、カーステレオなどの防振用として市販されている粘着テープを巻きつけ、清涼飲料水の1.5リットル入りペットボトルに取り付けたものである。これに貯まった降水を、100mlメスシリンダーで計測し、次式によって降水量に換算する。

 P=(V/πr^2)*1000

  P:降水量[mm]
  V:観測値[ml]
  r:ロートの半径[mm]

 この簡易雨量計は、一般的な転倒ます式雨量計との比較観測の結果、降水量10mm以上の場合では、転倒ます式雨量計に対する観測誤差が±10%以内となった。降水量の少ない時には、転倒ます式雨量計の観測値にもばらつきが生じ易いことを考えると、この簡易雨量計は豪雨時などにまとまった雨量を観測するには十分実用的である。しかし、簡易雨量計の観測値を元に月降水量や年降水量を算出するには注意が必要である。

 簡易雨量計の材料のうち、ロートとメスシリンダーは理化学器材専門店のほか、薬局などで購入できる。店頭に揃えている薬局は多くないようであるが(96年5月に長野県伊那市内で調査したところ、薬局薬店全27店中、常備は1店のみ)、取り寄せることは多くの場合可能なようである。学校の理科担当教員に問い合わせることも有効かと思われる。

 なお、降水量は、測器による誤差以上に、測器の置かれている条件による観測値への影響が大きな問題となる。屋上などの高所や、障害物に囲まれた場所などでは降水量がかなり少なめに観測される場合がある。なるべく見通しのいい平らな場所で観測することが望ましい。これは、簡易雨量計であれ、市販されている雨量計であれ、同様の注意点である。

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簡易雨量計の材料
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比較観測中の簡易雨量計

関連記事:降水量って何ですか

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個人でもできる降水量の測り方 -ごく簡単に-

 もっとも簡単な降水量の観測方法としては、茶筒などのような、円筒形で底が平らなの容器を屋外に出して降水を貯め、貯まった降水の深さを定規等で計測する方法が挙げられる。しかし、1mm単位を正確に読み取ることはなかなか困難である。また、円筒形の容器というものも、意外に身近なところには無い物である。たとえば、洗面器などは、多くの場合上面が底面より面積が大きい形状をしているので、降水観測には不適である。

 阪神大震災後に、神戸地区の灘五郷酒造組合加盟の酒造メーカー各社から、日本酒のワンカップのラベルに目盛りを書き込んだ「目盛り付コップ酒」(通称:ワンカップ雨量計)が市販されたことがあった.ラベルの位置の制約により、20~30mm程度の強い雨でないと観測できないのが残念だが、これも一つのアイデアではあろう。残念ながら「ワンカップ雨量計」は、最近ではほとんど見かけることがなくなった.

 しかし,似たようなものは自作できる.ワンカップを活用するのであれば,ワンカップの底面が0になるように,カップの側面に定規をあて,1cmごとに水平方向にマジックなどで線を引けば,10mmごとに目盛りのついた簡易雨量計となる.

 なお、降水量は、測器による誤差以上に、測器の置かれている条件による観測値への影響が大きな問題となる。屋上などの高所や、障害物に囲まれた場所などでは降水量がかなり少なめに観測される場合がある。なるべく見通しのいい平らな場所で観測することが望ましい。

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「ワンカップ雨量計」の外観(菊正宗)
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ラベルの拡大図

関連記事:降水量って何ですか

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2012年3月12日 (月)

袋井市の津波対策施設と御前崎の津波避難タワー

昨日3月11日に訪問した袋井市の津波対策施設と,御前崎の津波避難タワーの写真を整理しました. http://goo.gl/photos/ql50fTa4zo 

外階段を建設して津波避難ビルに指定されたコニカミノルタケミカル.中を見学させていただきました.かなりいろいろ考えられている.この写真から7枚→ http://goo.gl/photos/bsmIfvBAar

袋井市湊 津波避難用高台(盛土)建設候補地 http://goo.gl/photos/1WFRzUV6wp

御前崎市津波避難タワーの「利用上の注意」.かなりコワイことが書いてありますよ. http://goo.gl/photos/vXllp4HssP

避難タワーから100mほどのところには斜面があり,その後方は標高40m以上の高台.多分いろいろ考えてのこととは思うけど,避難階段整備が先のような気もしなくもないが・・・ http://goo.gl/photos/kJtO7im1IQ

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2008年10月13日 (月)

防災と図書館

「図書館の防災」の話ではありません.「図書館『と』防災」です.

ACADEMIC RESOURCE GUIDEの岡本さんが,そのブログで拙著「豪雨の災害情報学」の書評を書いてくださっています.

牛山素行著『豪雨の災害情報学』読了
http://d.hatena.ne.jp/arg/20081011/1223715474

同記事では過分なお褒めをいただいていますが,非常に新鮮に感じたのが,

図書館やアーカイブズが災害の記録と記憶についてどのような貢献ができるのか、という観点でも議論を深められるだろう。言うなれば「防災支援」の可能性である。

というご指摘でした.

筆者は以前から,過去に起こった災害を知る,学ぶ事の重要性を声高に言っていますが(ただし,過去の事例ばかりを学んでもいけないと思っています),その場面で図書館が機能を発揮するというのは,頭にありませんでした.

しかし,言われてみれば,図書館はまさに過去の情報を調べたり,あるいはさらに積極的に,展示・講座等でいわゆる「普及」をするためにうってつけの場所です.特別な場所にしか存在しないという訳でもなく,全国津々浦々に存在しているという点も大変心強い存在です.

私自身,災害関係の現地調査に行った際に,少しでも時間的余裕があれば現地の図書館に立ち寄って,災害関係の資料を探します.防災について考える上で図書館が役割を果たすという話は,大変納得がいきます.具体的なアイデアがあるわけではありませんが,今後,心にとめておきたいと思います.

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2007年4月28日 (土)

ハザードマップポータル

国土交通省が,「ハザードマップポータル」というページを開設しました.

国土交通省ハザードマップポータル
http://www1.gsi.go.jp/geowww/disapotal/

全国の市町村別に,どのようなハザードマップが公開されているかを調べることができます.また,ネット公開されているハザードマップにはリンクが張られています.これまでも類似のページはないでもなかったのですが,なかなか便利なものになりました.

無論,フォローできないハザードマップは出てきます.たとえば,岩手県,宮城県では津波浸水予測図(ほぼハザードマップと言って問題ありません)がweb公開されていますが,これは今回のハザードマップポータルからはリンクされていません.よそのページからちょっとリンクがしにくいページ構造の為なのかな,とも思います.

あるいは,岩手県では

岩手デジタルマップ
http://gisweb.pref.iwate.jp/iwategis/readMe.jsp

というところから,急傾斜崩壊危険箇所などの表示ができます.これも上記のポータルには触れられていません,が,これも無理もないことだと思います.これはいわゆるwebGISで,たまたま岩手を例に挙げましたが,各地で見られます.見る側からするとハザードマップですが,この種のページは,かなり上位側の入り口以外は他のページからのリンクが困難です.

情報整備をする方々は,「使いやすいシステムを,分かりやすいシステムを,見やすいシステムを」というふれこみで,各地で様々な「工夫」をされています.無論,その努力を否定するつもりはありませんが,結果的に「ハザードマップ」という一つの目的のために,使い方がてんでに異なる無数の「システム」が存在していることは事実でしょう.

少しうれしかったのは,国土地理院の土地条件図も「ハザードマップの仲間」だということが認知されてきたのか,このポータルに含まれていたことです.土地条件図は,「読める人さえいれば」大変有力なハザードマップになります.

いずれにせよ,最も重要なのは「ハザードマップを読める人」の存在でしょう.「どなたにも分かるようなハザードマップ」は理想でしょうが,空想のような気がします.不特定多数を対象とするのではなく,まずは,「ハザードマップを読んでもらわないと困る人」に徹底的に読んでもらうことが必要なのではないでしょうか.

全国のハザードマップのポータル開設(レスキューナウの紹介記事)
http://rescuenow2.cocolog-nifty.com/bousai/2007/04/post_5601.html

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