7/14~17の豪雨について
7月14日ころから,日本海側の中国,北陸地方や北海道などで比較的強い雨が続いています.本日17日は北海道で,15日には石川県内で,1時間降水量のAMeDAS観測開始(長いところで1976または1979)以来最大値を更新した観測所がいくつかありますが,24時間などの長い時間の降水量については特筆するような記録は生じていません.
被害も生じ始めていますが,今のところそれほど大きなものにはなっていません.たとえば,7月15~17日の石川県の被害は,石川県庁ホームページによると,人的被害なし,全壊・半壊なし,床上浸水12棟,床下浸水102棟とのことです.
石川県庁
7月15日からの大雨に関する被害の状況について(第3報)
[平成18年7月17日 18時30分現在]
http://www.bousai.pref.ishikawa.jp/press/20060717_01_press.htm
この種の被害は時間とともに増える場合も少なくありませんが,およそ2倍として,石川県において床上20棟かつ床下200棟以上の被害が生じた事例を気象庁資料から抽出しますと,1970年代7事例,1980年代3事例,1990年代3事例,2000年代0事例となります.大まかな言い方をすれば,「数年に1回程度は起こってきた程度の被害」となるでしょう.
だから,たいしたことはない,深刻に考える必要はない,という話ではありません.
全国的に見ていれば,この規模の災害は珍しくないのです.「いつでも頻発している」とでも言いましょうか.梅雨期から台風期にかけて,少し関心を持って報道を目にしていれば毎年,何回でも目にすることができるでしょう.ただ,現代が少し昔と違うのは,それらの情報を簡単に,詳しく目にすることができるようになったということです.その結果「昔はこんなことはなかった」と思い込みやすい状況が生じていると思います.
「温暖化で豪雨が頻発」という話をよく聞きます.「その結果災害が頻発」という話も耳にします.でも,「だからこれまでの災害への経験や備えが役に立たない」という話が出るとしたら,それは思考停止ではないかと思います.「豪雨が頻発」は,統計のとり方によってはそのように見ることもできます.しかし,「その結果災害が頻発」はかなり疑わしいです.豪雨災害による人的被害や浸水被害は,量的には増減を繰り返しつつ,長期的には減少しています(左図).無論,浸水による経済被害など,質的な変化が生じていることは忘れてはいけませんが.
「降水量記録」,「被害の量的大きさ」から見ると,「これまで経験しなかったような豪雨災害」などは起きていません.過去にどのようなことがあったのか,それぞれの地域ごとに見つめなおしておくことは,今後の災害に備えるためにきっと役に立つと思います.
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