洪水ハザードマップと防災情報に関する調査報告書の公表について
岩手県立大学総合政策学部牛山研究室では,社団法人日本損害保険協会(会長 児玉 正之)と共同で、全国市町村に対して、洪水ハザードマップをはじめとする防災情報の整備・活用の実態にかかるアンケート調査を実施し、その結果を分析した「洪水ハザードマップと防災情報に関する調査報告書」を取りまとめました。
損害保険協会によるリリース文
http://www.sonpo.or.jp/action/release/news_06-020.html
この調査の主な結果は以下の通りです.
1.調査手法(概要)
全国市町村の防災担当者を対象に、郵送送付・郵送回収法で実施。調査票は、2005年7月19日に送付、10月11日到着分で締切。調査対象は、2005年6月20日現在で存在した2393市町村(東京都23特別区を含む),有効回答は1089件、回収率45.5%。
2.調査結果速報(抜粋)
- 洪水ハザードマップ作成率は2003年調査と比べ明らかに向上したが、25%程度.未作成市町村の7割は作成に向けた具体的な行動を起こしていない。作成されているハザードマップの76.3%は2001年以降に発行されたものであり、水防法改正などの法制度の整備による好影響は明らかに出ている。
- ハザードマップ作成後に何らかのフォローアップを行った市町村は、2003年調査に比べやや増加したが、33.8%。ハザードマップは作成・配布がゴールではなく、作成後の活用方法の検討、提案が必要である。
- 82.0%の市町村がハザードマップ作成や普及のための人材が不足していると考えている。ガイドラインの整備や、自主的な取り組みを期待するだけではなく、国などによる流域一括作成など、市町村に対する、技術的、人的面でのより積極的な支援が望まれる。
- 防災マップ作りなどの防災ワークショップは15.1%の市町村で実施されている。防災マップの作成市町村のうち、40.2%が「住民だけ」で作成していると回答した。住民だけで取り組むことが「自助・共助」ではなく、問題点の見落としや、技術的な誤解が生まれる可能性も否定できない。より広範な専門家との協働が望まれる。
- ハザードマップ作成後に、指定避難場所の変更を行ったのは、浸水想定区域内に指定避難場所があった市町村の3割程度.避難勧告を出す際に、ハザードマップを参考にした市町村は、避難勧告を経験した市町村の4割程度.まずは、市町村自身が活用できるハザードマップを作成することが必要.
- 2003年7月の水俣土石流災害時に指摘された、夜間・休日の市町村役場における初動体制に関する課題関連の改善を最近2年間に行った市町村は、10%前後に止まった。災害の教訓は、報道等で伝えられるだけでは他地域に波及しにくいと推測される。
3.備考
- 本調査の一部は,2006年6月8日開催の「2006年度・河川技術に関するシンポジウム」(主催:土木学会)にて発表を行いました.また,今後,11月13~14日に群馬大で行われる日本自然災害学会などで発表する予定です.
- 報告書に関しては,ご希望があれば無料にて進呈いたします.
○問い合わせ先
岩手県立大学総合政策学部 牛山研究室
牛山 素行 助教授
E-Mail ushiyama@disaster-i.net(最も確実です)
Fax & Tel 019-694-2722
http://www.disaster-i.net/
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