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2007年3月27日 (火)

岩手県大船渡市での共同研究

岩手県立大学では,平成18年度より,「公募型地域課題研究」という枠組みが作られました.これは,大まかに言いますと,地域からの提案にもとづき,教員等が調査研究を行うという趣旨のものです.

この枠組みで,当方に対して,岩手県大船渡地方振興局より提案があり,「中・高校生を主な対象とした地域防災連携アクションプランに関する研究」として採択され,このたびスタートしました.本日は,その最初の意見交換会が大船渡市にて行われ,出席してきました.

このプロジェクトは,少なくとも2年程度の継続が計画されています.一過的なイベントの企画ではなく,この地域にとって何が問題で,何のために,どのような活動が必要なのか,ということじっくりと検討した上での企画にしたいと考えているところです.

2007年3月25日 (日)

能登半島沖地震

本日3月25日09時42分頃に石川県能登半島沖で発生した地震に関しては,報道メディアを中心として情報収集を行っています.現時点で,当方として何らかの調査を行う見込みはありません.

当方の災害調査に関する方針
災害調査実施の方針

2007年3月23日 (金)

自然災害を学ぶ(3.推薦する図書等)

(牛山素行,2007:自然災害を学ぶ,自然災害科学,Vol.25, No.5, pp.442-444. より)

3.推薦する図書等
 以下,筆者の専門領域に近い図書の中から,なるべく「災害そのもの」を学ぶ上で参考になりそうなものを挙げてみたい.

名称:防災事典
著者:日本自然災害学会
発行所:築地書館
寸評:自然災害科学分野の現在最も基本的な用語集.前版の「自然災害科学事典」(1988年刊)に比べて内容が一新されており,「自然災害科学事典」を少し古い時代の事例や概念について知るための用語集として併用すると効果的.

名称:防災学ハンドブック
著者:京都大学防災研究所編
発行所:朝倉書店
寸評:防災に関わる研究者サイドの最新の取り組み,関心分野などを知ることができるハンドブック.用語集としての「防災事典」の内容を掘り下げて知るときに重要になる.

名称:自然災害と防災の科学
著者:水谷武司
発行所:東京大学出版会
寸評:現在刊行されている数少ない「自然災害全般を扱った教科書的出版物」の一つ.地震災害から気象災害までほとんどのハザードを網羅し,それらの基礎的な構造を紹介すると共に,自然災害についての概念にも触れている.

名称:水谷武司
著者:自然災害調査の基礎
発行所:古今書院
寸評:自然災害全般の調査法について紹介した,ほぼ唯一の専門書.「ハザードの調べ方」ではなく,被害や社会の影響に関する調査法に触れており,間違いなく「災害そのものの調査法」の専門書である.1993年刊のため,情報収集法については事情が変わっている部分もあるが,基本的な概念は全く古さを感じさせない.

名称:NHK気象・災害ハンドブック
著者:NHK放送文化研究所編
発行所:日本放送出版協会
寸評:自然災害に関する用語集のひとつ.専門外の読者にも分かりやすい内容となっている.これまで4回刊行されており,既刊は気象用語集的な色彩が強かったが,2005年刊の現行版は,地震,火山,河川に関わる用語も取り上げられ,災害を意識した内容になっている.

名称:自然災害を知る・防ぐ
著者:大矢雅彦・木下武雄・若松加寿江・羽鳥徳太郎・石井弓夫
発行所:古今書院
寸評:「自然災害全般を扱った教科書的出版物」の一つで,「自然災害と防災の科学」よりはやや読み物的な色彩が強く,入門者向け.

名称:自然の猛威
著者:町田洋・小島圭二編
発行所:岩波書店
寸評:岩波書店の「日本の自然」シリーズの第8巻.書名から想像しにくいが,内容は自然災害全般に関する入門的専門書.日本の気象災害分布図など,基本的かつ重要な図表が多く掲載されている.1986年の初版と,1996年刊の改訂版があり,どちらも役立つ.

名称:災害論
著者:高橋浩一郎
発行所やURL:東京堂出版
寸評:気象庁長官を務めた気象・気候学の第一人者によって著された,災害の概念,災害を把握・理解するための考え方について触れた専門書.1977年刊とやや古典だが,けっして古い内容ではない.災害を巡っては,似たような問題意識,似たような議論が繰り返されてきていることを知る上でも参考になる.

名称:そこが知りたい気象と災害の法律知識
著者:気象災害研究会
発行所やURL:オーム社
寸評:気象業務法,災害対策基本法,水防法など,災害に関わる基本的な法律についての重要事項を解説した図書.気象予報士受験者向けの参考書だが,災害に関わる研究者も,この程度の知識は持っておきたい.1997年刊で,その後法改正されている部分があるが,基本的な概念については現在でも十分通用する.

名称:災害情報論
著者:廣井脩
発行所やURL:恒星社厚生閣
寸評:「災害情報」をメインタイトルとした数少ない専門書.情報伝達とその障害,パニック神話,災害時の流言など災害情報に関わる重要なキーワードについて,事例を元に紹介されている.やや入手しにくく,かつ20年ほど前の刊行物だが,同じ著者が分担執筆している,「災害と情報」(東京大学新聞研究所編),「災害と人間行動」(同)も,災害情報分野の基礎概念を知る上では参考になる.

名称:防災・危機管理eカレッジ
著者:総務省消防庁
URL:http://www.e-college.fdma.go.jp/
寸評:防災に関わる,無料で開設されているほぼ唯一のe-learningサイト.一般市民,防災リーダー向けの内容だが,防災についても携わることがあるハザード研究者にもお勧めしたい内容となっている.

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※現在でも入手可能な図書については,ブログ左段の「図書」リストにも掲げました.学術サイトでのアファリエイト利用には批判的なご意見もあるかもしれませんが,情報提示法の一つとして利用しております.

2007年3月22日 (木)

自然災害を学ぶ(2.どのように学んできたか)

(牛山素行,2007:自然災害を学ぶ,自然災害科学,Vol.25, No.5, pp.442-444. より)

2.どのように学んできたか
 「自然災害科学」が学問領域として必ずしも確立されていないためなのか,「自然災害科学の基礎的教科書」と呼べるものは,現在でもごくわずかである.筆者の学生時代には更に少なかったように思う.「災害について学びたい」という気持ちは学生時代から強かったが,そもそも「災害について学ぶ」ということはどういう事なのか,何を学べばよいのかがわからず,既に体系化された様々な学問分野のなかから,手探りで材料を探し,学んできたのが実態である.「災害を学ぶためには具体的に何を学ぶべきか」というテーマは,現在の筆者にとっても,まだ未解決の課題である.
 どのように学ぶべきかの指針が存在しない以上,学ぶためには,自分が関心を持った「災害関係の調査研究文献」を読み,その中で使われている知識について探索していくしかなかった.学会の口頭発表を聞くのも,そういった探索の効率的な手法の一つであった.より小規模な研究会に参加することも効果的だった.筆者は学生時代,東京地区の気象・気候系の学生・若手研究者で構成されていた「気候コロキウム」という研究会に参加していた.毎月1回の例会があるのだが,その場での濃密な議論は,極めて刺激的だった.
 そして,もっとも多くのことを学び取れたのは,災害に関わる「現場」だと思う.学生時代には講義・演習科目の一環として数多くの巡検が組み込まれており,新旧の山地崩壊,地すべり,洪水などの跡地を訪ねた.現在の現地を見ると共に,災害当時の様々な記録を読むことから,「昔から似たような災害が各地で繰り返されている.そして,私たちはそのことをすっかり忘れ去っている」という事を感じた.この考えは,現在の私の調査研究活動を方向付ける,基礎原理のようになっている.学位取得後は,各種調査団の一員として,あるいは独自の企画により,最新の災害に触れる機会が増えた.1999年広島豪雨,2000年東海豪雨,2001年台湾の台風,2002年台風6号,2003年水俣土石流,2004年台風23号,2005年台風14号など,それぞれの年の最大規模豪雨災害は必ず現地調査をするよう心がけた.それぞれの災害において,何が問題なのか,を知る最も効率的な方法は現地を歩くことだと思う.現地の観察から,どのような資料収集,どのような解析が必要か見えてくる.被災地は急速に姿を変えていくので,現地踏査は早いほどよい.現在,筆者は遅くとも発災2,3日以内に現地に行くことを目指している.

2007年3月21日 (水)

自然災害を学ぶ(1.私のバックグラウンドと専門領域)

(牛山素行,2007:自然災害を学ぶ,自然災害科学,Vol.25, No.5, pp.442-444. より)

1.私のバックグラウンドと専門領域
 筆者の現在の専門領域は,豪雨災害を中心とした自然災害科学と,災害情報学である.「気象学」や「水文学」ではなく,「自然災害科学」などという「専門領域」があるのか,というご意見もあるかと思われるが,筆者は,Hazardを専門とするのではなく,災害そのものを専門としたいと考えており,「専門は?」と問われたときは,上記のように答えることにしている.
 筆者が災害や防災に関心を持ったのはいつ頃からかは分からないが,少なくとも小学校高学年時には,台風通過時に天気図を書いたり気象観測を行ったりしていた記憶がある.観測はかなり好きな遊び(?)であり,比較的測りやすい気温などとともに,降水量も自作の簡易雨量計で観測していた.はじめて現実の災害を目にしたのは,中学3年の時である.筆者は当時長野県の諏訪湖付近に住んでいたが,この年,台風にともなう豪雨により,諏訪湖が溢水し周辺の市街地が広範囲にわたって浸水した.自宅は被災しなかったが,この激しい現象に強い関心を抱き,浸水した地域を踏査した.この時見たり経験した様々なことが,結果的にはその後の筆者の生き方を決めたように感じている.
 大学は,信州大学農学部の森林工学科に入学し,砂防工学系研究室に所属した.もっとも,砂防そのものはあまり研究したことがなく,学部の頃は雨氷という着氷現象の一種による森林被害に関する研究を行っており,気象観測や,被害林分に関する統計解析などを行っていた.博士課程では,豪雨災害による被害の統計解析や,当時萌芽期にあったネットワーク通信による(人と人との)災害時の情報交換に関する研究を行っていた.このようなことをしていた学生を置いてくれた,当時の先生方には本当に感謝している.
 学位取得後,ポスドクとして東京都立大学の地理学教室にお世話になった.当時の仕事は災害と関係ないものだったが,もともと関心のあった地理学の専門家と身近に接し,議論を交わすことができた事はたいへん有意義だった.その後,京都大学防災研究所にポスドクとして異動することができた.この時に所属したのが土木の水文系の研究室(当時は洪水災害分野)であり,以来,土木分野の仕事が多くなっていった.京大の後にお世話になったのが,東北大学災害制御研究センターの津波工学研究室だった.地震系のハザードについては素人同然であり,津波そのものの研究をしたわけではなかったが,津波災害に伴う避難など,災害と人の関わりに関する調査研究を行う機会を与えていただいた.現在所属している岩手県立大学総合政策学部は,いわゆる学際系の学部であり,そのなかで,地域災害論という,災害そのものについての専任教員として活動させていただいている.

解説記事2件が掲載

最近,下記の記事が刊行されました.

登内道彦・牛山素行,2007:気象ビジネスII 応用気象と気象災害,天気(日本気象学会誌),Vol.54, No.2, pp.123-128.

牛山素行,2007:自然災害を学ぶ,自然災害科学,Vol.25, No.5, pp.442-444.

いずれも,学会誌の解説記事です.一つめの方はあと2ヶ月ほどすると学会web上でも公開されますので,その時あらためて紹介いたします.ふたつめの方は短文ですので,この後ブログ上で何回かに分けて掲載したいと思います.

2007年3月 2日 (金)

河川災害シンポジウム・水工学講演会

3月6日~8日の日程で,土木学会主催による,「河川災害に関するシンポジウム」,「第51回水工学講演会」が,東京都小金井市の法政大学小金井キャンパスで行われます.

第51回水工学講演会会告(河川災害シンポの案内も含む)
http://www.jsce.or.jp/committee/hydraulic/2007/suiko07-kaikoku.pdf

牛山は,6日午後の河川災害に関するシンポジウムで,「平成18年7月豪雨による災害の特徴 -長野県における被害を中心として-」のタイトルで講演を行います.内容は,これまでに行ってきた,平成18年7月豪雨に関するいくつかの調査をとりまとめたものになります.当日配付資料の原稿を下記に置きます.

http://disaster-i.la.coocan.jp/notes/20070306kasen.pdf

また,水工学講演会では,8日に「平成18年7月豪雨による人的被害の分類」のタイトルで発表します.水工学講演会では,あらかじめ論文を投稿し,査読を通過した論文が採択され,発表となり,講演会開催とと同時に論文集が刊行されます.論文集に掲載となる論文を,下記に置きます.

http://disaster-i.la.coocan.jp/notes/20070308_0095.pdf

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