改訂・緊急災害調査の心得(3)
◆調査計画を立てる・準備する
災害の大まかな発生状況が理解でき,自分自身が何らかの調査活動を行う必要があると考えたら,具体的な調査計画を立てることになる.まずはっきりさせる必要があるのは,グループ調査をするのか,単身調査かである.グループ調査は,現地での活動の際にお互い助け合えることや,移動を効率よくできること,資料収集の効率が上がることなどメリットが多いが,日程調整が必要で迅速に動けない場合があることや,必ずしも自分が見たい場所を回れないこと,現地へ迷惑がかかりやすいなどのデメリットがある.単身調査の場合は何かと自由が利くことがメリットである.
次に,移動手段を決める必要がある.このあたりは,調査者自身の事情や,必要な機材の多寡などの関係もあり,一概には言えないが,多くの場合は自動車の利用が中心となるだろう.無論,ほとんどの場合,災害直後の被災地の道路事情は混乱を極めているので,特に都市部の災害を調査しようとする場合は,公共交通や徒歩で移動できる範囲をまずは計画するという方向性もある.道路状況などの把握も,事前情報収集の範囲内である.
筆者の場合,被災地に最も近い大都市まで航空機,新幹線などの公共交通機関で行き,そこでレンタカーを借りて現地入りするというスタイルがほとんどである.これは,筆者の災害調査では迅速性が最優先されることと,筆者自身が長距離の自動車運転が苦手なためである.一例として2004年の「平成16年福井豪雨」の際の筆者の行動を示す.なお,当時筆者は仙台在住であった.
7月18日
午前 福井県内で豪雨発生
午後 降水記録,被害記録の整理.筆者の観点からも「大規模」事例と判断.現地調査の準備,交通機関予約手配.
7月19日
6時頃 仙台発,東北新幹線で東京へ
11時頃 羽田発,空路,小松空港へ
12時頃 小松空港着,レンタカーで福井市内へ
13時頃 福井市内着,以降,付近を車&徒歩で移動
16時頃 現地(美山町付近)発
17時頃 小松空港着,17時半頃小松発,空路で仙台へ
18時半頃 仙台空港着
この時の現地調査では,被災直後の現地観察が主たる目的で,訪問すべき箇所としては以下の付近を考えていた.
・福井市街の足羽川破堤箇所
・破堤箇所周辺の観察,浸水深などの記録
・足羽川中流域谷底平野部の被災状況
・山間部の土砂災害の状況
このときの現地調査の状況は,下記に整理してある.
平成16年7月福井豪雨災害 研究関係情報
http://www.disaster-i.net/disaster/20040718/
現地への携行品は,自分の専門分野に応じた機材のほか,地図,カメラ,野帳,雨具,食料,飲料水(水筒)などが挙げられよう.専門的な調査での地図というと国土地理院の地形図を考える人が多いかもしれないが,災害調査では,広範囲の地図をまとめて携行しやすく,各種の施設や目標物を確認しやすい冊子体の道路地図も案外便利である.飲食物は忘れがちであるが,災害直後は都市部であっても飲食物が入手しにくい場合もあるので,現地調達を前提とせず,軽い登山をするくらいのつもりで用意した方がよい.服装は作業着やスポーツウェアなどがよい.活動的になれることはもちろんだが,現地にいる人と同様な服装になることによって,無用な心理的摩擦を避ける意味もある
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