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2007年8月 7日 (火)

改訂・緊急災害調査の心得(5)

◆現地で(2)  -人の話を聞く-

 被災地の行政機関,被災者などから話を聞くことによって有益な情報が得られることは間違いないが,トラブルに遭遇する可能性も高い.怒鳴られたり,なぐられたりするくらいのことはあるものと覚悟した方がよい.まず,相手が会話に応対できる状態かよく見極めて,手短に話を聞くよう心がけたい.また,名札を着用したり,所属機関名のついたヘルメットをかぶるなどして,自分の素性を相手にはっきり理解してもらえるようにすることも必要であろう.

 行政機関も,災害発生直後は混乱を極めており,災害後少し時間がたってから(災害の規模や機関にもよるが,1週間~1ヶ月後くらい)たずねることが望ましい.どうしても災害直後に話を聞きたい場合は,役所内のカウンターでの立ち話程度にとどめておき,後日電話や文書であらためて尋ねるなどの方法をとった方がいいだろう.

◆現地で(3) そこでしか入手できない資料を探す

 これは,条件的に可能であればのことであるが,「現地でなければ手に入らない資料」,あるいは,「現地の方が簡単に手に入る資料」の入手にも気を配っておきたい.最近では「現地でなければ手に入らない資料」は減りつつあるが,それでも現地ならではの資料は少なくない.現地の役所や避難所で配布,掲示されているが,ネット上には出てきていない「お知らせ」や,「被害状況報告」などは代表例だろう.もらって差し支えのないものはなんでももらってくるくらいの気持ちでいた方がいいだろう.

 「現地の方が簡単に手に入る資料」の例としては,その地域の地史など郷土資料が挙げられる.この種の資料は,現地の図書館に立ち寄ることができれば,必ず集積された棚があるので効率よく参照できる.遠隔地でも,図書館の相互貸借や国会図書館の利用などの方法で参照できないわけではないが,非常に手間がかかるし,予想外の資料を発見することはほとんど期待できない.

◆現地で(4) 測る

 緊急災害調査の主な目的の一つとして,何かを「測る」事が挙げられる.何を測るかは,それぞれの調査者の専門分野,関心の内容によってまったく異なるが,共通して言えることは,「すぐに消えてしまう情報を優先的に測る」ということであろう.たとえば,洪水などの浸水痕跡は,1週間も経過するとほとんど分からなくなってしまう事も珍しくない.調査目的に応じ,計画的に「測る」事が重要である.

 一昔前は,「災害調査=Hazardに関わる何らかの物理量を測ること」であり,その「測定」の結果を整理して,Hazardのメカニズムを解析,説明するのがすなわち「災害研究者」であったようなイメージを筆者は持っている.現代でも,Hazardのメカニズムを「解明」する事はもちろん必要なことであり,今後も取り組まれるべきだと思うが,災害そのものを観察する事にももっと力が注がれるべきではなかろうか.Hazardを観察するだけではなく,災害そのものの姿を明らかにするためには,なにを「測」ればよいのか,これについては,筆者にもまだ明確な方向が見いだせていない.

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