改訂・緊急災害調査の心得(6)
◆「できる範囲のことをする」ことが重要
緊急災害調査では,調査時間も,資料整理・報告までの時間も限られていることが多い.したがって,あれもこれもと欲張った調査をするのではなく,情報収集,現地踏査とも,できる範囲内で得られたものを最大限に活用するよう努力するのが基本であろう.幸い,近年は多量のデータを迅速に入手することが容易になっている.災害直後に,インターネット上に掲示されている程度の情報を,あらためて相手方に電話をかけてFAXや郵送を依頼するような行為は,現代では迷惑行為であると断言できる.
現代は,基礎的情報,被害情報,学会の動きなど多くの情報がインターネットを通じて流通するようになった.もはや,災害関連の情報は,特別な人のところに「集まる」のではなく,「集める」時代になったと言っていい.「できる範囲のことをする」とは言っても,その「できる範囲」は大きく広がっていると言えよう.
◆参考となる図書
災害調査全般については,「自然災害調査の基礎」(水谷,1993)が,ほとんど唯一の良書である.洪水,土砂災害,地震,火山など幅広い災害事象ごとに,資料収集から現地調査などの方法を概説している.
このほかは,それぞれの分野ごとの「調査法」に関する図書のなかから,その災害調査に関連する事項を探索して,参考にするということになる.筆者自身が参考になると思う図書としては,以下のものが挙げられる(発表年順).拙著も含まれているが,ご容赦いただきたい.
池谷浩:土石流対策のための土石流災害調査法,山海堂,1980.
松村和樹ほか:土砂災害調査マニュアル,鹿島出版会,1988.
水谷武司:自然災害調査の基礎,古今書院,1993.
正井泰夫・小池一之編:卒論作成マニュアル,古今書院,1994.
新井正:水環境調査の基礎,古今書院,1994.
牛山素行ほか:身近な気象・気候調査の基礎,古今書院, 2000.
佐藤郁哉: フィールドワークの技法,新曜社,2002.
大谷信介ほか:社会調査へのアプローチ 第2版,ミネルヴァ書房,2005.
「調査法」は人により,対象により,様々である.災害調査にとって何より重要なことは,「調査法の教科書」を絶対視せず,その時々の調査目的に応じて,「この目的のためには何を調べればよいか」を考えることであろう.
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