気象庁より,8月の天候と,夏(6~8月)の天候が発表されました.
8月の天候
http://www.jma.go.jp/jma/press/0709/03b/tenko0708.html (概要)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/stat/tenko0708.pdf (詳細)
夏(6~8月)の天候
http://www.jma.go.jp/jma/press/0709/03c/tenko070608.html (概要)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/stat/tenko070608.pdf (詳細)
8月16日付本欄では,「今年は6月が全国的に高温傾向,7月が逆に低温傾向でした.週間予報では,今週末以降は暑さが和らぐようですから,このまま行きますと,今年の夏季(気候統計では6~8月)全体は,「記録的な暑さ」というような状況にはならないのではないかと思います.」と書きました.
https://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_a79a.html
「
夏(6~8月)の天候」の2ページの表にありますように,結果的には,6~8月の平均気温は,北日本(平年比+0.7℃),東日本(+0.4),西日本(+0.5)とも,平年比で「高い」になり,「かなり高い」にはなりませんでした.もう少し細かな地域区分(関東,東北,など)でみても,「かなり高い」地方は一つも現れませんでした.「実感」と違うかも知れませんが,今年の夏全体で見れば,「記録的な暑さ」だったとは言えないと思います.
「夏(6~8月)の天候」の「概要」にもあるように,「月毎の変動の大きい夏」だったと思います.最高気温の最大値を更新した観測所が多かったことから,瞬発的に,厳しい暑さが表れた年,というべきかも知れません.
「夏全体で見てごまかすな,ずっと暑い夏なんて無いんだろう?」と思われるかも知れませんが,「日本中」が「ずっと暑い夏」は少し前にもありました.1994年です.この年は,北日本(平年比+1.4℃),東日本(+1.6),西日本(+1.4)と,今夏とは比べものにならない状況でした.
http://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/db/longfcst/table/seasonal/s199408.png
この頃は,今と平年値の統計期間が異なり,今の方が概ね気温の平年値が高くなっています.しかし,夏季の平均気温で見比べると,ほとんどの地点が0~0.3℃程度高くなっている位ですから,全国(あるいは上記の3地方くらいの広い範囲)でみれば+0.2℃程度です.従って,平年値が高くなっていることを考慮しても,1994年夏の方が明確に今夏より「日本中」,「ずっと暑かった」と言えると思います.
平成6年夏の高温・少雨(気象庁)
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/kanman/1994/1994.html
1994年は,西日本を中心に厳しい給水制限が長期化した事を思い出される方もいるかもしれません.暑さ=雨の少なさ,ではありませんが,「ずっと暑い」夏は「ずっと晴れている」夏でもあるので,降水量は少なくなりやすいと言えます.
翻って,今年は「給水制限」というニュースを耳にしたでしょうか? 9月3日現在で,googleニュースで「給水制限」と検索すると,ヒットする
ニュースは最近1ヶ月に4件で,いずれも「今年の給水制限」を伝えたものではありません.朝日新聞社の検索サービス「聞蔵」で「給水制限」を検索すると,今年6~8月
のヒット数は1件,1994年6~8月は220件でした.
「聞蔵」で,同様に「猛暑」を検索すると,今年は539件,1994年は1001件でした.「実感」としても1994年は暑かったようです.「94年 AND 暑」で検索すると,2007年6~8月の間にヒットした記事は5件.ただし,いずれも94年に記録された値について単に言及しているもので,わずかに,8月17日付で「気象庁によると、猛暑だった94年8月と04年7月に2日連続で40度を超えたが、3日連続は初めて」という記事が,「1994年も猛暑だった」ということをほのかに伝えているのみでした.
たびたび申していますが,筆者は別に温暖化を否定したり,起こっている現象をことさらに過小評価しようとしているわけではありません.ただ,ほんのちょっと前のことがすぐに忘れられてしまうことが,残念でならない,というだけなのです.