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2008年1月16日 (水)

人的被害に関する論文等の公開

過日,自然災害科学(日本自然災害学会誌)に掲載された,下記論文を公開しました.

牛山素行,2007:2006年10月6日から9日に北日本で発生した豪雨災害時に見られた行方不明者覚知の遅れ,自然災害科学,Vol.23,No.3,pp.279-289.
http://disaster-i.la.coocan.jp/notes/JJSNDS23-3.pdf

人的被害に着目した研究の一つですが,これは「覚知に時間がかかった行方不明者」,「避難した後で遭難した犠牲者」というケースについての検討です.

ちょっと長くなりますが,「まとめ」から抜粋します.

  • 2006年10月7日から8日にかけて発達した低気圧が本州東方沖,北海道東方沖を通過して豪雨と強風をもたらし,岩手県葛巻町では1名(62歳男性)の人的被害が生じた.避難勧告に応じて指定避難場所に避難したが,10月7日19時頃以降行方不明となった.行方不明と覚知されたのは約2.5日後の10日午前で,翌日遺体で発見された.
  • この犠牲者の特徴として,(1)避難したにもかかわらず遭難したこと,(2)行方不明の覚知に時間がかかったこと,が挙げられる.2004年以降の豪雨災害による犠牲者154名から同様な被災形態を調べたところ,(1)は4名,(2)は3名が抽出され,特異な事例とは言えない.ただし,(2)はいずれも覚知までの時間が1.5日程度であり,今回の犠牲者が群を抜いている.
  • 避難後に遭難した場合,早期の避難自体は実行されており,早期の避難勧告による避難の促進や,情報伝達システム整備などの対策だけでは軽減に結びつかない.
  • 覚知が遅れた行方不明者は,いずれも「要援護者」ではなく,「要援護者が人知れず遭難し,発見が遅れた」といった状況ではない.共通するのは独居者だったことである.高齢者など,典型的な「要援護者」ばかりに目が向けられがちであるが,様々な形で脆弱性を持つ者が存在することにも注意が必要である.

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