« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

2008年10月27日 (月)

災害情報学会+講演

既報のように,10/25~26に日本災害情報学会第10回研究発表大会が行われました.

https://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/102526-bc23.html

研究者以外の参加者が多い(それは利点でもあり欠点でもありますが)ことが特色の学会ですが,今年もいろいろとおもしろい発表がありました.

緊急地震速報が本格運用になって約1年で,かつ震度6クラスの地震が実際に発生した後と言うこともあり,緊急地震速報がらみの発表が多くありました(私の発表もその一つですが).緊急地震速報は,「いかにして認知してもらうか」から,「どう使うか(いかに使えないか)」という議論の段階に完全に移行したという印象を持ちました.

災害情報学会からの帰路に,都内で「気象キャスターネットワーク」からの依頼による講演をさせていただきました.

気象キャスターネットワーク
http://www.weathercaster.jp/index.html

「災害情報などのソフト対策は,ハード対策と異なり人の介在が必要かつ重要」という話は常日頃しているところですが,「だれが,どう介在するのか」が私にもなかなか見えてきません.広い意味での「技術者」は全国各地におり,潜在的な人材は少なくないわけですが,介在する「場」がなかなかないのが現実です.今回の講演を通じていろいろとお話を伺い,気象キャスターのみなさんは,メディアを通じて,専門家・情報発信者側と,情報利用者を介在する役割が期待される方々なんだということを認識しました.

2008年10月24日 (金)

陸前高田市防災意識に関する調査の報告書を公開

岩手県陸前高田市気仙町地区の全世帯を対象に実施した,災害に関する意識などについてのアンケート調査の結果概要を報告書として公開いたしました.

岩手県陸前高田市気仙町地区における防災意識に関する調査
http://disaster-i.net/notes/081031report.pdf

なお,アンケートの果然回答者のみなさんにも配布した,2ページの概要版も公開しました.
http://disaster-i.net/notes/081031report_2.pdf

この調査は,岩手県大船渡地方振興局との共同調査として実施したものです.主な注目点を以下に示します.

  • 自宅が自然災害によって被害を受ける可能性については,地震,津波で危険側の回答が約4割,大雨・洪水,がけ崩れ・土石流で約3割だった.一般的な地区と比べれば危険側の回答が多いが,対象地区では主要集落のほとんどが津波浸水想定区域であり,洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域なども多いことを考えると,自然災害に対してやや楽観観的な見通しが持たれていることが示唆される.
  • 明治三陸地震津波,昭和三陸地震津波,チリ地震津波についてのイメージを尋ねたところ,古い時代の災害ほど,具体的なイメージを持つ回答者(量的な被害を挙げる回答)が少なくなった.また,3事例ともに中高生の方が具体的なイメージを持つ回答者が少ない.明治三陸地震津波では,中高生の35.3%が「名前も聞いたことがない」と回答した.
  • 「強い地震の後に『津波警報』が発表された」場合に「すぐ避難する」という回答者は38.6%,「強い地震の後に『避難勧告』が発表された」で61.0%だった.対象地区の場合,津波警報の発表は,状況の切迫性が高く,かつかなり深刻な状況であるが,すぐに避難行動を起こす人は半数に満たないようである.
  • 何メートルの津波予報が発表されたら避難するかを尋ねたところ,津波注意報や,津波警報(津波)に相当する2m以下の津波予報で避難する人は20.3%,極度に大きな値である「10m以上」の値を挙げる人も25.1%に上った.

2008年10月18日 (土)

日本災害情報学会・10/25~26

来週末の10月25日から26日にかけて,東京大学を会場に日本災害情報学会第10回研究発表大会が開催されます.

日本災害情報学会 第10回学会大会プログラム
http://www.jasdis.gr.jp/01gakkai_taikai/images/program/10.pdf

当方からは,下記2件の発表を行う予定です.1件目は,7月24日の岩手県沿岸北部の地震の後に実施したネットアンケートに基づく緊急地震速報体験者の意見をとりまとめたものです.2件目は,岩手県陸前高田市今泉地区で実施した住民対象調査を元に,「標高を理解している人の方が防災行動が積極的なようだ」という結果をとりまとめたものです.

牛山素行・矢守克也・篠木幹子・太田好乃,緊急地震速報に対する情報利用者の認識について,日本災害情報学会第10回研究発表大会予稿集
http://disaster-i.net/notes/2008JSDIS.pdf

太田好乃・牛山素行・吉田亜里紗,地形認知と津波リスク認知の関係について,日本災害情報学会第10回研究発表大会予稿集
http://disaster-i.net/notes/2008JSDIS_ohta.pdf

2008年10月17日 (金)

奥州市社会福祉大会でPDコーディネータ

昨日10月16日,岩手県奥州市で行われた「第3回奥州市社会福祉大会」に出席し,同大会の中で行われた,パネルディスカッション「災害福祉ネットワーク『この地域に住んで本当によかった』と誰もが思える地域づくりを目指して」のコーディネータをつとめさせていただきました.

10月16日(木)第3回奥州市社会福祉大会のご案内
http://www.oshu-shakyo.jp/sp/res/pdf/hukushi_1016.pdf

パネラーには,奥州市市民環境部消防防災課,岩手・宮城内陸地震での奥州市内の被災地の方,新潟県柏崎市社会福祉協議会,奥州市社会福祉協議会からそれぞれご参加をいただき,興味深いお話をいただきました.

災害の実体験を通して,結局,「綿密に行われた『防災訓練』よりも,防災とは直接関わりのなさそうな日常の活動の積み重ねの方が役に立ちそうだ」というお話に収斂していくように感じました.非常に納得のいくお話でした.

新潟県柏崎市社会福祉協議会では,ブログによる積極的な情報発信をされているようです.これもまた,日常活動の積み重ねのひとつになるのでしょうね.

おつぼねの赤裸々日記
http://blog.goo.ne.jp/ks-syakyou/

2008年10月15日 (水)

10/31陸前高田で防災ワークショップを開催予定

以前から何度かご紹介していますように,現在,岩手県大船渡地方振興局との共同研究として,陸前高田市気仙町地区を対象として,地域の防災意識に関する調査や,防災ワークショップの企画を進めています.

陸前高田にて打ち合わせ(2008/6/20本欄記事)
https://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2008/06/post_0fb0.html

ワークショップは,このプロジェクトの一環として行うものですが,「本番」はいよいよ今月末の10月31日(金)に迫りました.昨日10月14日,ワークショップ前の最後の事前打ち合わせを現地で行ってきました.

人数を集めてのワークショップは,31日の1回限りです.その後は,地域の主立った方々との事後打ち合わせを経て,1月頃に成果報告会的なミニシンポジウムを行ったこのプロジェクトを閉じるつもりでいます.

ワークショップのみを目的としたプロジェクトではないとはいえ,昨年度から準備を進めて,ワークショップ本体が1回のみという形には,違和感を覚えられる方もいるかもしれません.時間をかければよいものができるというわけではないのですが,今回のプロジェクトでは,企画に直接携わる「防災専門家」は私一人でしたので,これくらい時間をかけないと「必要最低限の内容」を作る自信が持てませんでした.

ともあれ,ワークショップ当日は,少しでも意義のある場をつくるお手伝いができればと考えています.

2008年10月13日 (月)

防災と図書館

「図書館の防災」の話ではありません.「図書館『と』防災」です.

ACADEMIC RESOURCE GUIDEの岡本さんが,そのブログで拙著「豪雨の災害情報学」の書評を書いてくださっています.

牛山素行著『豪雨の災害情報学』読了
http://d.hatena.ne.jp/arg/20081011/1223715474

同記事では過分なお褒めをいただいていますが,非常に新鮮に感じたのが,

図書館やアーカイブズが災害の記録と記憶についてどのような貢献ができるのか、という観点でも議論を深められるだろう。言うなれば「防災支援」の可能性である。

というご指摘でした.

筆者は以前から,過去に起こった災害を知る,学ぶ事の重要性を声高に言っていますが(ただし,過去の事例ばかりを学んでもいけないと思っています),その場面で図書館が機能を発揮するというのは,頭にありませんでした.

しかし,言われてみれば,図書館はまさに過去の情報を調べたり,あるいはさらに積極的に,展示・講座等でいわゆる「普及」をするためにうってつけの場所です.特別な場所にしか存在しないという訳でもなく,全国津々浦々に存在しているという点も大変心強い存在です.

私自身,災害関係の現地調査に行った際に,少しでも時間的余裕があれば現地の図書館に立ち寄って,災害関係の資料を探します.防災について考える上で図書館が役割を果たすという話は,大変納得がいきます.具体的なアイデアがあるわけではありませんが,今後,心にとめておきたいと思います.

2008年10月 5日 (日)

地理学会に出席

(※後日記録したものです)

10月4日から5日にかけて,岩手大学で日本地理学会秋季学術大会が開催されました.

http://www.ajg.or.jp/meetiing/2008autumn.html

地理学会は,関東で開催の春季大会に出席だけする,というパターンになっていましたが,近場でしたので久しぶりに秋季大会に出席してみました.古くからなじみの研究者と会話を交わすことができ,意義深いものでした.

会場内の図書販売コーナーでは,発刊されたばかりの「豪雨の災害情報学」が販売されており,まずまずの売れ行きだったとのことです.何人かの方からはご感想をいただくことができ,ありがたく思いました.

« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

無料ブログはココログ

ブログ内検索

Twitter