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2009年10月 7日 (水)

「最大級の台風」

昨日あたりからメディアの取材を受けていて気になったことをメモしておきます.

まず,「最大級の台風」.これに類した言葉がメディアに踊っています.気象現象の「激しさ」は,単一の指標では示すことができず,「激しく見せよう」と思えばいくらでも見せることができます.

台風の「激しさ」を示す一般的な指標としては,気象庁が定義している,「大きさ」と「強さ」があります.「大きさ」は風速15m/sの半径,つまり,強い風の吹いている範囲の広さです.「強さ」は中心付近の風の強さです.詳しくは気象庁web内の,

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-3.html

にあります.このほかに中心気圧という指標もあり,これが低ければ,激しい台風となる傾向があります.

台風に伴って,激しい雨が降ることが多いですが,雨の激しさは台風の「強さ」「大きさ」あるいは「中心気圧」と必ずしも直結しません.また,「強く」て「大きい」台風が必ずしも「大きな被害」をもたらすとも限りません.あるいは,中心気圧の低い台風が,大きな被害をもたらすとも限りません.

現在接近中の台風2009年18号は,10月7日19時現在で,「大きさ」は特に分類なし,つまり,「大型」でも「超大型」でもありません.「強さ」は「非常に強い」で,「分類なし」「強い」「非常に強い」「猛烈な」という現在の分類中では,強い方から2番目です.こう言うとあまり激しくなさそうですが,では,何が「最大級」かというと,中心気圧が,今の時点ではやや低いことです.

1945年以降で,上陸時の中心気圧の低かった台風のリストが,

http://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/ranking/air_pressure.html

にありますが,ここにある上位10位の台風の中心気圧が945hPaです.で,7日19時現在の台風2009年18号の中心気圧が945hPaなので,現時点で上位10位に匹敵していることになります.おそらく,ここから「最大級」という呼称が出てきたのだと思います.「最大級」かもしれませんが,けっして「最大」とは言えないでしょう.上陸時には中心示度が下がるかもしれませんから,そうなれば,10位に匹敵しないことになります.また,そもそも統計期間は1945年以降の65年余りです.

筆者は,ことさらに「たいした台風ではない」と言っているのではありません.警告的な表現としては,激しい台風が接近していることを知らせるために,いろいろな言い方があってもいいと思います.しかし,「最大級の台風」が,「今まで経験したこともないようなスゴイ台風」ととられ,仮にそれによる被害が比較的軽微ですんだ場合,「今まで経験したこともないようなスゴイ台風」だったのにこの程度の被害か,たいしたことないな,と誤解されることを懸念しているのです.

台風が激しい気象現象であることにかわりはありません.軽視,油断せず,慎重な行動をとることが大切でしょう.

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