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2010年4月30日 (金)

人に優しくない「高分解能な災害情報」

「市町村警報」に象徴される,「災害情報の高分解能化」は,手放しに評価できることではないと筆者は考えています.このあたりについて,最近刊行された日本災害情報学会ニュースレターNo.41に寄稿しましたので,以下に転載します.

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人に優しくない「高分解能な災害情報」

 災害情報に関するニーズとして,「より正確に,より詳しく」といった声をよく聞く.しかし,「より詳しい災害情報」は,本当に「被害軽減に結びつく災害情報」になるのだろうか.

 

情報が「より詳しく」なれば,情報の量は増える.情報の量が増えれば,情報を伝達,処理する諸システムの能力向上が求められる.情報処理システムの末端はユーザー,すなわち人間である.つまり,情報が「より詳しく」なることは,その情報を処理する人間に処理能力の向上が求められることになる.「より詳しい災害情報」を欲しがっている方々は,自分たち自身に負担や努力が強いられることについての覚悟がおありだろうか.

 気象警報の空間分解能が細分区から市町村単位へと,「より詳しく」なる.その情報はどうやってユーザーに伝えられるだろうか.情報量が多すぎて,ラジオ放送による伝達がもはや不可能なことは明らかで,テレビのテロップでの伝達も絶望的だろう.ネットなどで自ら情報を収集しようという人にとっては得られる情報が増えるが,そうでない人にとってはほとんど「改善」にならない可能性がある.

 

県などから市町村に届くFAXに含まれる情報は,現在よりむしろ簡略化される.従来なら警報発表地域名と,具体的に予想される現象などを記した「文章情報」がFAXの中に記載されたが,情報量が増えすぎて警報発表地域名の列挙が中心になると聞いている.情報端末の使い方に習熟しなければ,むしろ今までより得られる情報が少なくなる可能性すらある.

 市町村警報によるメリットが多々あることは間違いない.メリットを生かすためには,誰が,どう使うのかを,より真剣に議論していく必要があるだろう.

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