今梅雨期の災害について
7月17日に,豪雨による被害の生じた岐阜県可児市,八百津町を現地踏査してきました.
左写真は,名鉄広見線のアンダーパスが冠水し,通行中の車が動けなくなるなどして2台,3名の方が行方不明となった現場です.可児川の100m程北側の下位砂礫台地面を掘り込んで作られています.この付近の可児川に人工的な堤防はありませんが,平水時の水面は下位台地面より5~10m程度下にあり,アンダーパスの最低部でも常時水面下という状況ではなさそうです.無論,川のすぐ脇であり,氾濫すれば影響を受けやすいところではあります.
左写真は八百津町野上で,斜面崩壊により住家1棟が倒壊し,住民3名が亡くなった現場です.長さ約100m,流域面積1ha程度の小さな谷から土砂が流出し,谷出口にあった住家を倒壊させたようです.現場は急傾斜地崩壊危険箇所でした.この現場の300m程西側の斜面でも小規模な土砂流出が見られましたが,他には付近で目立った土砂流出は見られませんでした.
現地の位置関係は下記リンクを参照ください.
今年の梅雨期は,特に末期に中部以西の各地で連日豪雨による災害が発生しました.7月20日14時現在の消防庁資料によると,6月11日からの被害の全国の合計が,死者・行方不明者19名,住家の全壊34棟,床上浸水2026棟などとなっています.住家被害はまだ変化すると思います(まだ増える可能性の方が高いですが,減る場合もあります).1ヶ月以上の事例を合算すると,比較的まとまった被害となりました.特定の場所で集中的な被害が生じたわけではなく,中小規模の災害が各所で発生した形態です.
左図は,気象庁資料を元に1971年以降の6月及び7月の豪雨による被害を年別にグラフにしたものです.グラフ右端の点は,上記消防庁資料による値をプロットしたものです.災害統計は,出典によって同じ年でも大きく異なることがあり,ましてや今年の値はまだ暫定的なものであり直接比較はできません.ただ,最近10年ほどと比較しても,今年の梅雨期の被害が特別に大きかったという状況ではないように思えます.グラフ縦軸が対数であることにも注意してください.
今のところ,今年の梅雨期の豪雨災害に関して,当方では特に重点的な調査研究を行う予定はありません.最近の事例を見て,豪雨と災害の関係についての基礎的な情報整理をあらためてしておく必要性があると感じており,当面,その観点からの作業に力を入れたいと考えています.
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