毎日新聞で報道されていました
7月28日付け毎日新聞(東京朝刊)で,当方のコメントが紹介されていました.群馬大の片田先生のコメントとのミックスですが,片田先生の指摘には当方も同意です.
「地域での災害対応=避難」ではありませんし,「災害への備え=避難訓練」でもありません.地震災害を想定した避難訓練,というのがよくある「地域防災」のパターンですが,地震災害において避難行動で一体どのような人的被害が軽減できるというのでしょうか.冷静に考えてみたいところです.
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備える:近年の災害の教訓/1 避難所に向かうことの危険
09年8月、兵庫県佐用町で死者・行方不明者20人を出す豪雨災害があった。同町では台風9号などの影響で、1時間雨量89ミリ、3時間雨量186・5ミリを記録。この災害の特徴は、避難途中に犠牲となった人たちがいたことだ。同町本郷の町営幕山住宅の住民が、避難場所に指定されていた小学校に徒歩で向かう途中、8人が死亡し、1人が行方不明となった。増水した用水路にのみ込まれたとみられている。
佐用町によると、この地域は普段から防災意識が高かった。災害後、現地で聞き取り調査をした牛山素行・静岡大准教授(災害情報学)は「自発的に避難しようとするなど、住民の行動は従来の考え方であれば模範的といえる」と話す。
では、なぜ被害に遭ったのか。災害時の避難に詳しい群馬大大学院の片田敏孝教授(災害社会工学)は「豪雨災害の場合、全員が一律に避難所に向かうことが最適な行動とはいえないということだ」と話す。住居の場所や構造、土地の起伏によって、取るべき行動は変わるためだ。「佐用町でも、途中で引き返して助かったケースがあると聞いている。現状を把握して、避難しないことを含め、最適な行動は何かを考える必要がある」という。
浸水した地域でも、流速が遅ければ家屋倒壊の恐れは小さく、2階への避難で被害は避けられるケースがある。災害を受けて佐用町が設置した災害検証委員会がまとめた報告書でも、家の2階など高いところに避難する「垂直避難」に言及している。同町の久保正彦・復興企画室長は「行政が全員を避難誘導することは物理的に無理。住んでいる地域をよく知り、危険を判断できるような訓練をしなければいけない」と話す。
片田教授は「過去は年間1000人規模だった災害による犠牲者が、行政主体の取り組みで100人以下になった。しかし、これをゼロにするのは行政主体では無理。個人の判断力向上が不可欠だ」と指摘している。【飯田和樹】
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