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2010年10月25日 (月)

災害情報学会の予稿を公開

10月22日から23日にかけて,関西大学高槻キャンパスを会場に日本災害情報学会が開催されました.牛山は,下記の発表を行いました.

牛山素行・栗田幸将・高柳夕芳,2010年2月28日チリ地震津波の際の静岡県・岩手県における避難行動調査,日本災害情報学会第12回研究発表大会予稿集,pp.153-158,2010
http://disaster-i.net/notes/2010JSDIS.pdf

災害情報学会は,いろいろな課題もありますが,比較的活気のある学会であるとも思います.今回も様々な議論に参加することができました.

2010年10月21日 (木)

奄美豪雨・読売新聞にコメント掲載

昨日からの奄美地方での豪雨に関し,読売新聞に当方のコメントが出ました.短くまとめられているので「視界がまった くない状況だっただろう」というのはちょっと変な表現ですが.

なお,「過去30年間で2度だけ」というのはあくまでも2時間降水量について,AMeDAS記録の範囲内のみの話しです.1時間降水量は,今回奄美で記録されている中では大きくても130mm程度で,これはAMeDASの30年間の記録の中で少なくとも8回記録されています.また,AMeDAS以外のデータも含めれば(そういったデータを長期統計できるものが公開されていないのでできないだけなのですが),2時間260mm以上という記録も,もっと存在しているはずです.また,24時間降水量650mm以上というのも,さほど珍しい記録ではありません.今回の豪雨の特徴をまとめると,

・「奄美大島付近の過去の記録と比べると」,1時間,2時間,24時間,48時間,72時間いずれの降水量も1979年以降最大だった.
・2時間降水量については,全国の記録と比較しても,1979年以降の中で上位に位置する規模の記録だったが,1時間や24時間などについてはそれほどまで大きな記録とは言えない.

といったことになります.

記事中にもある「傘はまったく役にたたず、滝 のように降る」などの表現は,気象庁の

雨の強さと降り方
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html

によるものです.

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奄美豪雨は記録的、全国でも30年間で2度だけ
読売新聞 10月21日(木)12時0分配信

 強力な台風が秋雨前線を刺激し、記録的な豪雨をもたらした。

 気象庁によると、20日午後6時以降、奄美大島付近に前線が停滞。南側の太平洋高気圧や南シナ海を北上中の台風13号から暖かく湿った空気が流れ込み、南西諸島で雨雲を発達させた。

 静岡大・防災総合センターの牛山素行准教授(災害情報学)によると、奄美市住用町の雨量計では20日午後、2時間雨量が260ミリを超えた。全国の地域 気象観測システム(アメダス)の記録でも過去30年間で2度しかないという。気象庁は、1時間雨量が50ミリを超えた時点で「傘はまったく役にたたず、滝 のように降る」と説明。80ミリ以上では、「息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感じる」としている。牛山准教授は、「住用町などでは、視界がまった くない状況だっただろう」と推測している。

 奄美大島は島のほとんどが山地で、小さな河川が多い。鹿児島大の下川悦郎教授(砂防工学)は「山から一気に下流に押し寄せ、小さな川で収容しきれなくなった大量の水が平地で急にあふれた。避難が間に合わずに孤立した住民も多かったのでは」とみている。

奄美豪雨・警報等発表状況

警報発表状況.奄美北部に大雨警報発表は20日03:39,南部には同05:09.

土砂災害警戒情報は,奄美市,龍郷町,天城町に20日05:20.徳之島町に11:15.大和村に13:20.瀬戸内町,伊仙町に13:45.量的に多量の雨が降ったのは奄美,龍郷,天城なので,これら地域では十分なリードタイムがあったと考えられる.

記録的短時間大雨情報は,20日11:53,13:25,15:25の3回発表.3回とも「奄美市付近で120ミリ以上」.同じ地域で同日に続けて3回記録雨が出るのはかなり珍しく,切迫性の高さが伺える.

奄美付近の一部アメダスが停止

気象庁webのトップに「奄美地方の一部のアメダスデータが10月20日19時以降更新されておりません。ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません」の表記.逆説的ですが,最近AMeDASはなかなか落ちなくなったということを象徴するコメントのような気がします.

21日08時現在落ちているAMeDASは,喜界島,笠利(奄美大島),天城(徳之島),与論島でいずれも空港併設の地域雨量観測所.20日付け毎日ほかによると,データ伝送中継している笠利(奄美空港)にトラブルが生じた模様.奄美島内の名瀬と古仁屋は支障がなく動いている.

落ちているAMeDASの中で最も大きな値を観測していた可能性があるのは笠利(奄美空港).しかし,近隣数kmに位置する県設置の川上,喜瀬は20日21時の累加雨量400mm台なので,特別に大きな値が観測漏れしている可能性は低い.

奄美豪雨・被害関係

21日08時過ぎのNHKの報道では,奄美での豪雨による人的被害は死者2,行方不明1.死者はグループホーム在住者とのことだが,原因外力は不明.不明者は土砂災害.

家屋関係の被害は,20日21時の鹿児島県発表資料では全壊1,床上34,床下62.ただしほぼ龍郷町分のみで,奄美市内は状況不明.これらの値よりは被害は大きくなる可能性が高いと思われる.

2010年10月20日 (水)

奄美大島での豪雨・降水量記録関係

Twitterで書いた記事を転載.

奄美大島での豪雨が気がかりです.AMeDAS名瀬は20日20時現在の24時間降水量646mm,1979年以降最大値457mmを大きく超過

NHKでは「降り始めからの雨量」をよく使っていますが,これは非常に比較しにくい指標です.名瀬では20日20時の48時間712mm,72時間718mm,いずれも1979年以降最大.

一方,奄美大島南部の古仁屋では,20日20時現在24時間291,48時間361.これは1979年以降の記録の中では上位3位に満たない小さな記録.島の中北部中心の豪雨の模様

21時近くなって奄美付近はほぼ降水終了.降水ナウキャストで見ると,島内に雨雲はほぼなく,周囲にも優勢な雨雲は見えません.

20日21時現在,AMeDAS名瀬では24時間647,48時間713,72時間718.

24時間650mm以上という記録は,厳密には出せませんがAMeDAS全地点1979年以降の記録の中では,少なくとも30回以上記録されているくらいの記録.無論大きな記録の一つとは言えます.

無論雨の激しさは絶対値ではなく「その場所にとって大きな値か」が重要.島嶼部は観測所密度が低いので過去記録との比較が難しいですが,奄美周辺のAMeDASで1979年以降最大24時間は古仁屋で491mm.この地方として大きな記録であることは確か.

川の防災情報で見ると,奄美市役所住用支所(県管理?)では,21時現在で24時間700,48時間819.最大1時間は13時に131.

住用支所では最大2時間降水量が大きく,11時~13時に261mm.直接比較はできないが,AMeDAS全地点で1979年以降の記録で2時間260以上は2事例のみ.数時間程度の降雨強度が非常に強かった可能性あり.

ただし住用は20日19時が欠測.18時3mm、20時0mmなので極端な違いは生じないとは思われるが.

川の防災情報で見られる観測所で,奄美大島島内の「累加雨量」(事実上48時間雨量)が20日21時時点で400mm以上なのは12地点.

12地点の内訳は,川上421,喜瀬482*,大勝812,長雲806*,大熊876,西田710,根瀬部745,東城580,大金久548,市445*,節子467*,住用822*.*は19時が欠測.

被害状況については,20日22時時点では何とも言えません.

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