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2011年1月23日 (日)

豪雨災害による犠牲者に関する論文公開

当方では,豪雨災害による犠牲者の発生形態等に関する調査研究を進めていますが,一連の研究の一部として新たに下記の論文を公開しました.

牛山素行・高柳夕芳,2010:2004~2009年の豪雨災害による死者・行方不明者の特徴,自然災害科学,Vol.29,No.3,pp.355-364
http://disaster-i.net/notes/2010JSNDS29-3.pdf

2004~2008年までの豪雨災害による犠牲者307名を元にした集計結果と,2009年の山口県などの豪雨災害,兵庫県などの豪雨災害の犠牲者を対比しての検討結果です.

以下に,この論文の「おわりに」を掲示します.
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 今回の検討からは,以下のような傾向が読み取れた.
・年代構成で見ると,犠牲者は高齢者に偏在している.
・遭難場所は,屋外の方が屋内より多いが,土砂災害に関してのみは逆である.
・避難行動をとったにもかかわらず遭難した犠牲者が無視できない程度(約1割)存在し,主に洪水に起因して発生している.
 これらの傾向は,これまでに筆者が行った検討結果と整合しており,近年の豪雨災害に見られる傾向と見なすことができる.
 2009年に発生した2つの主要豪雨災害事例のうち,中国・九州北部豪雨による犠牲者発生形態は,土砂災害による犠牲者がやや多かったものの,年代構成,遭難場所,避難行動の有無などの点から見ると,近年の豪雨災害犠牲者の傾向から大きく逸脱せず,いわばtypicalな事例だったと言える.一方,台風9号は,若年層への被害集中,屋外遭難者の多発,避難中の犠牲者の大量発生など,近年の豪雨災害事例とは異なる犠牲者発生形態が見られた.特に,避難中の犠牲者が大量に生じたことは深刻であり,このタイプの犠牲者は,「洪水」の際に目立つ傾向があらためて確認されたことになる.災害への対応行動として,「全災害共用の指定避難場所への避難」が最善と言えるのか,検討が必要になるだろう.
 2004~2008年の犠牲者を元にした集計からも明らかなように,豪雨災害による犠牲者は,「高齢者が逃げ遅れて遭難」といった想像しやすく単純な発生形態が主流ではない.自ら危険に近づいたことによって遭難した「能動的犠牲者」が全体の3割以上を占めること,屋外を移動中の遭難者が多数派であることなどを考えると,単に各種の情報を発表し,「自宅に所在している住民」に伝達しさえすれば大幅な被害軽減が期待できるわけではない.たとえば,道路沿いへの浸水想定区域の表示,災害の種類に応じた一時避難場所の設定など,地域の災害特性に応じた対策の検討を進めていく必要がある.

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