河川水位の用語についての整理メモ
「防災用語をわかりやすく」という趣旨で行われた「用語改変」のなかで,私が未だに共感できないのが,河川水位に関する用語の変更です.私自身どうも頭に良く入っていないのでちょっとメモします.
この用語改変についての一次資料は,国交省の
「洪水等に関する防災情報体系のあり方について」の提言について
http://bit.ly/eqXDcl
この提言を受けて,2007年4月19日から水位等の呼称が変更されました.
洪水予報の発表形式の改善について
http://bit.ly/fcD1Pn
従来の河川水位の呼称は,低い方から通報水位→警戒水位→特別警戒水位(ただしこの呼称の歴史は短い)→危険水位→計画高水位,の順になっていました.後になるほど,洪水災害に関して危険な状態であることを意味します.
「通報水位」は「水防団待機水位」に変更されました.水防活動を行う水防団が待機することになりますが,一般の人は特別な行動を取る必要はなく,河川管理者から一般に向けて特に情報が発表されることはありません.
「警戒水位」は「はん濫注意水位」になりました.河川管理者(国または県)からは,「○○川はん濫注意情報」が発表されます.市町村は避難準備情報を発令するかどうか判断します.洪水の危険がある地域に住む人が,何らかの行動をし始める目安と私は考えます.
避難準備情報は,災害対策基本法で決められた制度ではありませんが,内閣府のガイドラインに明示され,市町村でも運用が進んでいる仕組みです.
避難勧告等の判断・伝達‐内閣府防災情報のページ
http://bit.ly/eUxWAf
避難準備情報は「要援護者【だけ】が避難行動を開始することを促す情報」ととらえられることがありますが,ガイドラインでは「特に避難行動に時間を要する者が避難を開始する段階」とされ,要援護者に限定されるものではありません.
河川のすぐ脇に住んでいて,道の状態も良くない,という状況ならば,体力的に健康であっても「特に避難行動に時間を要する者」だと私は考えます.「避難準備情報は要援護者向けの情報だ」と人ごとのように思わない方がいいと思います.
「特別警戒水位」は「避難判断水位」になりました.河川管理者からは「○○川はん濫警戒情報」が発表されます.市町村は避難勧告・指示の発令を判断します.各個人も避難などのより積極的な行動に移るべき時期だと私は思います.
「危険水位」は「はん濫危険水位」になりました.河川管理者からは「○○川はん濫危険情報」が発表されます.この時点で,洪水の危険性のある地域のにいる人は,安全な場所への避難を完了していることが望まれます.
河川の堤防が壊れる(破堤)などして,河川から洪水流があふれ出すと,「○○川はん濫発生情報」が発表されます.
用語をわかりやすくすること自体は否定されるものではありません.しかし,「この言葉はこういう意味」という説明が必要なことに変わりがないのであれば,用語改変より先にやるべきことは「用語の説明」ではないでしょうか.
牛山の予備的調査によれば,はん濫注意水位→避難判断水位→はん濫危険水位という,「危険性の順序性」は,利用者にほとんど理解されていません.
http://disaster-i.net/notes/2007JSDIS.pdf
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