「ゲリラ豪雨」と災害の関係について
3月8日の土木学会水工学講演会で発表した,下記論文を公開しました.
牛山素行,2011:「ゲリラ豪雨」と災害の関係について,水工学論文集,No.55,pp.505-510.
http://disaster-i.net/notes/20110308_0085.pdf
新聞記事と降水量データを用いて,「ゲリラ豪雨」という言葉がどの時点で一般化したか,また,マスメディア上で「ゲリラ豪雨」とはどのような現象を指して使われているか,「ゲリラ豪雨」では本当に災害が発生しているのか,と言った観点からとりまとめた論文です.結果の要約は下記.
- 「ゲリラ豪雨」の語は2008年8月上旬から突然大量に使用されるようになった.
- 「ゲリラ豪雨」は,最大1時間降水量数十mm以上,日降水量(24時間降水量)百数十mm程度の事例に使われている模様
- 最大1時間降水量80mm以上かつ日降水量149mm以下を「ゲリラ豪雨」的降雨イベントとすると,1979~2008年に104事例
- 「ゲリラ豪雨」的降雨イベントに直接起因の犠牲者は2名.
- 床上浸水は40事例.30年間上位10%に入る大規模被害はない.
- 被害の量が限定されるということは,発生場所が,豪雨災害のリスクの高いところに集中するとも理解される.犠牲者2名のうち1名は浸水した地下室,1名は浸水したアンダーパスで遭難
発表の際の討議では,2010年頃からは,メディア上では「豪雨」はすべて「ゲリラ豪雨」と呼ぶようになったという指摘もありました.そうなってくると,「近年ゲリラ豪雨が頻発し」という「一般論」はますますおかしな話になりそうです.
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