岩手県内で小中学生の犠牲者が相対的に少なかったこと
釜石市内で小中学生のほぼ全員が避難して無事だった事が早くから報道されていました.
釜石市内の小中学生の避難率100%近く ほぼ全員が無事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110316-00000681-san-soci
その後も,大船渡小学校や越喜来小学校での迅速な避難の話題など,岩手県内では児童・生徒が避難行動によって難を逃れた話がいくつか報じられています.一方,宮城県では石巻大川小学校での集団的な遭難が報じられるなど,「なにか」が違う感じがします.
少し前の数字ですが,3月27日付読売新聞によると,岩手県内の児童生徒の死者は37名,行方不明が68名,宮城県は同140名,832名とのことです.4月6日時点の警察庁資料によると,死者・行方不明者は岩手県8145名,宮城県13912名とのことですから,この数値を用いると,児童生徒の占める割合は岩手が1.3%,宮城が7.0%と,明らかに岩手の方が低くなっています.
ここまで書いて,自分の感覚が異常になっている事を感じました.「低い」なんて言っても,岩手の小中学生だけでも100人以上遭難しているのです.全死者・行方不明者が100人の災害が,3/11以前の日本では「巨大災害」でした.
あえて異常な感覚で書き続けます.岩手の方が児童生徒の遭難率が低かった理由は,はっきりとはわかりません.津波に対する意識の違いというものもあった可能性がありますが,岩手では学校の位置が元もと比較的高所にあった点も見逃せないと思います.
2007年に,岩手県宮古市・釜石市・大船渡市・陸前高田市に存在した全小学校・中学校77校を対象に,学校の所在地が津波浸水想定区域内にあるかどうかを調べたことがあります.
太田好乃・牛山素行,2009:地域特性と学校防災教育の関係について,自然災害科学,Vol.28,No.3,pp.249-257.
http://disaster-i.net/notes/2009JSNDS28-3b.pdf
その結果,校舎(校庭を含まない)の半分以上が津波浸水想定区域に含まれている場合を「津波区域内」とすると,区域内に分類されたのは7校のみでした.この調査は,各校に対してその学校が津波災害に対して危険だと思うかを尋ねてもいるのですが,「津波区域内」のほぼ全校が「危険」「やや危険」と回答し,「津波区域外」でも「危険」「やや危険」という回答が4割を占めました.もともと津波に対して相対的に安全な場所に学校が所在し,かつ,それぞれの学校が津波の危険性を的確に認識していたことが伺えます.
宮城県については同様な調査はしていないのですが,特に仙台湾周辺などは,地形的に学校を高所に設置することがそもそも困難で,条件的に厳しかった事は容易に想像できます.
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