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2011年5月13日 (金)

東日本大震災死者・行方不明者数は4月中旬にピークとなり,その後減少

rescuenowにも似たようなグラフがありますが http://goo.gl/0hBwc ,東日本大震災に伴う犠牲者数として発表されている数値の推移のグラフを作成しました.

http://twitpic.com/4wt8o8

情報源は朝日新聞で,記事中で報じられた警察庁発表の値をもとに作成しています.なお,3/14~17は警察庁資料が朝日新聞で報じられていないため,記事中に「朝日新聞まとめ」として報じられた値を利用しています.「朝日新聞まとめ」の値は行方不明者数に警察庁資料との乖離があり,3/18に見られる行方不明者の減少はこの為に生じたものです.

まず,当初の2週間近くの間,毎日値が大きく変化(増加)し続けたことが目に付きます.これについては,山梨大学の秦さんが指摘していますが http://twitpic.com/4co3zg 阪神・淡路大震災と比べてもその変化が長期化したことが明白です.

死者,行方不明者数の合計は,3月下旬に27000人台に達し,その後大きく変化しなくなります.このグラフ中では,4月13日の28525人が最大で,その後日に日に減少していきます.死者数は一貫して増加しており,合計の減少は行方不明者数の減少に起因します.

自然災害による人的被害,家屋被害が,災害発生後に次第に増加し,どこかでピークを迎えてその後減少していくことは全く当たり前なことで,珍しいことではなく,むしろそのパターンを示さない事例を思い出せないほどです.「状況が明らかになるにつれ,被害の値が大きくなる」というのは思い込みであり,正しい認識ではありません.また,発災後1日間くらいは別として,「日に日に被害が拡大していく」という認識も適切ではありません.被害の規模は,「拡大する」のではなく,「明らかになっていく」ものです.

近年は,特に地震災害の際に,外力(地震,大雨などの自然の力)に直接起因せず,避難先で亡くなるなどのケースを,「関連死」としてその災害による犠牲者に含むことが多くなっています.2004年新潟県中越地震では,「地震による死者」としてあげられている68名のうち,地震に直接起因する犠牲者は24名で,2/3近い44名が関連死です.これについては下記参照.

牛山素行・太田好乃,2009:平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震による死者・行方不明者の特徴,自然災害科学,Vol.28, No.1, pp.59-66.
http://goo.gl/Yhb9d

外力に直接起因する犠牲者と,関連死の犠牲者は,対策の方法が全く異なりますから,区別して議論されなければなりません.今回発表されている死者には,いまのところ関連死はほとんど含まれていないと思われます.少なくとも,岩手,宮城,福島以外の各県での犠牲者68名の中では,関連死と思われる犠牲者は1名 http://goo.gl/TAGvQ です.

犠牲者を統計値として扱うことに抵抗を感じる向きもあるかと思いますが,エピソードだけでは次に生かす情報になりません.客観的な数値と,1人1人の状況を合わせて観ることが重要だと考えています.

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