浸水範囲は想定の範囲内の所も少なくない
中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会」の第1回資料 http://goo.gl/UuO9G 特に「資料3-2 今回の津波被害の概要」が参考になりました.
中央防災会議専門調査会の資料でも明らかなように,岩手県沿岸部では,今回の実績浸水区域,浸水深が想定とおおむね同程度という場所もあります.この資料にある中では,普代,田老,釜石など.一方,陸前高田,志津川,仙台平野一帯は想定規模を大きく超過しています.
岩手県田野畑村も「想定とおおむね同程度」の地区です.下図は岩手県田野畑村の津波浸水予測図と今回の浸水範囲.浸水範囲は想定区域の範囲内にあり,遡上高(予測図では赤枠内の数字)や浸水深もおおむね予測の範囲内にあります. http://twitpic.com/558w9c
田野畑村では津波の避難場所を「××宅裏山」など,公民館等建物のある場所以外の高所にきめ細かく指定していました.その位置は「点」として明確になっていないところも多く,状況によってさらに高いところへ行けるよう道がつけられているところが多くありました.たとえば,
http://goo.gl/MO1CI http://goo.gl/oOgL0 http://goo.gl/lSU7u
5月25日に田野畑村沿岸部の津波避難場所23箇所全地点を踏査(道路からの遠望も含む)したところ,津波が到達して逃げ切れなかったと思われる避難場所は1箇所も確認できませんでした.
岩手県田野畑村の人的被害は5/26現在で死者14名,行方不明者22名.中防資料では浸水域人口が1582名とのことなので,遭難率は2.3%.陸前高田市(13.0)などに比べれば比率は低いとはいえ,けっして少なくない数の遭難者が生じています.
外力(津波,洪水など)の想定と,それに対する防災施設の整備は別のものであり,想定された規模の外力でも大きな被害が生じてしまうことは,豪雨災害などではごく普通に見られることです.「想定内」の現象に対しても我々の社会は万全ではないことを痛感させられます.
« 「アンケート」を軽く考えている人が良くいるように思います | トップページ | 津波災害においては「要援護者支援」が困難であることを直視するしかありません »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 2021年 新年のご挨拶(2021.01.01)
- 水害時 避難イコール避難所Go! だけ,ではない(2020.04.07)
- 時評=災害教訓に学ぶ難しさ 多くの事例収集重要(2019.09.30)
- 時評=大雨の際の避難行動 流れる水に近づくな(2019.07.31)
- 「大雨警戒レベル」に関する補足的なメモ(2019.06.03)